ロココ
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ロココ(Rococo)とは、美術史で使われた用語で、バロックに続く時代の美術様式を指す。18世紀、ルイ15世のフランス宮廷から始まり、ヨーロッパの他国にも伝えられ、流行した。
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[編集] ロココという語
ロココはロカイユ(rocaille)に由来する言葉である。ロカイユは岩の意味で、バロック時代の庭園に造られた洞窟(グロッタ)に見られる岩組のことであった。それが転じて、1730年代に流行していた、曲線を多用する繊細なインテリア装飾をロカイユ装飾(ロカイユ模様)と呼ぶようになった。ロカイユ装飾は、イタリアの貝殻装飾に由来すると考えられているが、植物の葉のような複雑な曲線を用いた特有のものである(画像参照)。
新古典主義の時代(18世紀末~)になると、前時代の装飾様式が退廃的であるとして蔑称的に使われたが、その後、時代一般の美術・文化の傾向を指す用語として、広く使われるようになった。ロココ様式(スタイル)、ロココ建築、ロココ趣味などと使う。豪壮・華麗なバロックに対して、優美・繊細なロココともいわれるが、両者の境界は必ずしも明確ではなく、ロココはバロックの一種と考える人もいる。
ルイ15世の愛妾で、才色兼備で知られたポンパドゥール夫人(1721年 - 1764年)を中心とする宮廷のサロン文化はロココの華であろう。
[編集] 建築
- ロカイユ装飾を多用した室内装飾に特徴がある。パリのオテル・ド・スービーズなどの手のこんだ建築装飾がこの様式の代表的な作品である。
[編集] 絵画
- この時代には、アカデミーのサロンが定期的に開催されるようになり、美術品が広く鑑賞されるようになった。
- アントワーヌ・ヴァトー、フランソワ・ブーシェなどの画家が代表的である。
- ジョルジュ・ド・ラ・トゥールが描いたポンパドゥール夫人(Madame de Pompadour)の肖像画がロココ時代の肖像画として有名。
[編集] 工芸
- セーヴルの陶器が有名。これもポンパドゥール夫人の支援により発達したものである。
[編集] 音楽
フランスでF.クープラン、ラモーら、イタリア(スペイン)のD.スカルラッティ、オーストリアのモーツァルトらに見られる装飾音符を多用した軽快・優美・繊細な音楽様式を音楽におけるロココ様式と呼ぶ。バロック時代後期から古典派まで様々な形で現れ、別名ギャラント様式ともいう。
- 前3者はチェンバロ(クラヴサン)曲集が多数、モーツァルトはピアノソナタのほか、フルートとハープの協奏曲、初期のピアノ協奏曲、オペラ『コジ・ファン・トゥッテ』などが好例。
[編集] 関連項目
(参考)フランスに「フルール・ド・ロカイユ」という香水がある。