ピアノ協奏曲第2番 (ラフマニノフ)
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セルゲイ・ラフマニノフのピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18は、1901年に完成された。あらゆる時代を通じて最も偉大なピアノ協奏曲の一つと看做され、ロマン派音楽の金字塔の一つとされている。本作品の成功は、ラフマニノフがそれまでの数年間にわたる鬱(うつ)傾向とスランプを脱する契機となった。
多くのラフマニノフのピアノ曲と同じく、ピアノの難曲として知られ、きわめて高度な演奏技巧が要求される。いくつかの部分において、ピアニストは一度に10度の間隔に手を広げることが要求されていたため、この部分を崩すピアニストもプロですら多かった。
近年ではピアニストの体格も立派になり技術も向上したため、この部分を一度に完全に掴むピアニストも増えている。
目次 |
[編集] 作曲の経緯
ラフマニノフは、1897年の交響曲第1番初演の失敗により自信喪失に陥っていた。その状況を変えたのは、精神科医であり、アマチュアのヴィオラ奏者でもあるニコライ・ダーリ博士との出会いであった。ダーリは、ラフマニノフに「あなたは素晴らしいピアノ協奏曲を作る」という暗示療法を行い、ラフマニノフは自信を取り戻して行った。その成果として生まれたこの曲は、ダーリに献呈されている。
初演は1901年10月27日、モスクワにおいてラフマニノフ自身のピアノ演奏により行われ、非常に好意的に受け取られた。
[編集] 楽曲解説
伝統的な構成によって、次の順で構成されている。
- モデラート
- アダージョ・ソステヌート
- アレグロ・スケルツァンド
[編集] 第1楽章
自由なソナタ形式。
主題呈示部に先駆けて、ピアノ独奏がロシア正教の鐘を模した、ゆっくりとした和音連打を、クレシェンドし続けながら打ち鳴らす。このユニークな部分によって、聴き手は作品の世界にしかと引き込まれる。
次いで伝統的な、オーケストラのトゥッティによる主題呈示部となるが、ここでピアノは、やはり正教会の小さな鐘(一般的に鈴と誤解されやすい)を模した、リズミカルで急速な装飾音型を奏で続ける。弦楽合奏による濃密な第1主題が歌い終わるのを受けて、ピアノが結句を演奏してクライマックスとなる。オーケストラの簡潔な移行句を受け、ピアノ独奏から第2主題が始まる。目まぐるしい展開部の後、ピアノの伴奏音型を変えて第1主題が再現された後、移行句なしで第2主題が再現される。
第1楽章においてピアノ独奏は、特異なことに、第1主題の主旋律を牽引し続ける弦楽合奏と、ほとんど室内楽的といってもよいほど、協調的に対話を続けている。このためピアノの独壇場はほとんどなく、しかも演奏至難なパッセージの多くが、音楽的・情緒的な必要性から使われていることもあり、聴き手にピアノの超絶技巧の存在を感じさせにくい。これは協奏曲としては特筆すべき特徴で、ある意味でピアノは、オーケストラのオブリガート的な役割に徹していると言ってよい。
[編集] 第2楽章
序奏つきの複合三部形式、ホ長調。波瀾万丈の第1楽章が終わると、それとは好対照をなす緩徐楽章が始まりを告げる。弦楽合奏の序奏は、ハ短調の主和音から、クレシェンドしながら転調し、ホ長調のピアノ独奏を呼び入れる。以上の部分は、第1楽章のピアノ独奏による序奏にさり気なく対応しているかのように見える。やがてピアノの分散和音に乗って木管楽器によって甘美な旋律が歌われてゆく。クライマックスの後に再現部では、またもや弦楽合奏が主旋律を牽引する。
[編集] 第3楽章
ハ長調。最初に聞こえるホ長調の旋律は、循環形式によって第1楽章から引き出されている。疾風怒濤の楽章だが、むしろ軽めで、スケルツォ的な気まぐれな性格が認められる。軍楽風のリズミカルでにぎやかな終結部は、ラフマニノフ作品の典型的手法で、「ラフマニノフ終止」と呼ばれる。
[編集] 音源
今日最も人気のある協奏曲の一つとして、世界各地で演奏されている。録音数も数多く、古くはラフマニノフ自作自演から、ジュリアス・カッチェン、バイロン・ジャニス、スヴャトスラフ・リヒテル、アレクシス・ワイセンベルク、スティーヴン・ハフ、ヴラディーミル・アシュケナージ、クリスティアン・ツィマーマンなどの名録音が代表的音源である。
[編集] 伴奏音楽としての利用例
イギリス映画「逢引き」(1945年)や、マリリン・モンロー主演のアメリカ映画「七年目の浮気」に利用されて有名になった。この演奏を担当したのはバックハウスに絶賛されたアイリーン・ジョイスである。前者では、大人の純愛のムード醸成手段として、後者では、浮気男の妄想をかき立てる小道具として利用されている。近年では、ディズニー映画「プリティ・プリンセス2/ロイヤル・ウェディング」にも利用された。
フィギュアスケートでは伊藤みどりが本作品のフィナーレと「ピアノ協奏曲 第1番」を編集して、アルベールビル五輪のフリースケーティング用の音楽に用いた。最近では男子シングルの高橋大輔と女子シングルの村主章枝が、本作品第1、第2楽章のダイジェストを競技に使用している。
二ノ宮知子の漫画「のだめカンタービレ」では主人公の千秋真一がピアノ課題曲として演奏している。
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