バブルラジカセ
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バブルラジカセとはラジオカセットレコーダーのうち、1980年代後半頃から1990年代前半頃に製造されたいわゆるCDラジカセ全盛期の高級ラジカセの俗称である。なおこの名称は、バブル景気に拠っている。
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[編集] 概要
これらのラジオカセットレコーダー(以下「ラジカセ」)は、初期の頃の単なる多機能化商品に留まらず、高付加価値や高級感の演出、または過剰性能ともいえる表示機能など、中学生・高校生から青年者層でもオーディオに関心を持つ者(そのハイエンド層がいわゆるオーディオマニア)にアピールするために市場投入された高級機種である。その多くは、メーカー間の競争により音質の向上に加えて、大型化を図っていた。
同時期にはどのメーカーも大型かつダブルカセットが目玉機能とされていて、ドルビーNRは当然のこと、中にはメタルテープ録音対応・AMステレオ・グラフィックイコライザ(スペクトラムアナライザを兼ねたものが多い)搭載機種もあり、音質や機能にこだわりを見せていた。また多機能化の一端としてビデオCD対応機種も見られる。現在も熱狂的なファンが多く、中高生といった若者にも浸透してきている。そのことはその世代のブログが多い事から伺える。
これらは1970年代頃までの、社会人を中心とした高級ステレオセットとは違い、余り経済的に余裕の無い青少年層らが「アルバイトの賃金やお小遣いを貯めて買える」というものであり、多機能化商品や高級品とはいえオールインワン(求める機能が1製品に集約される)であり、また価格的にも当時の数万円台で、最高級機種でも概ね20万円以内であった。そのすぐ後にはミニコンポのような比較的低価格層の音響機器も見られる。
2000年代に入っては次第にミニコンポに置き換わる形で、またはデジタルオーディオプレーヤーの普及によりパーソナルコンピュータがオーディオ市場に食い込んできた関係で、メーカーも最盛期ほど市場に新しい商品を投入していないし、また当時の製品を簡略化した製品しか製造していない。このため中古市場などでも、最盛期の商品に対する人気もみられる。
[編集] 時代背景
当時は、バブル景気による良好な経済状態で、何処の家庭でも比較的潤っていたため、とにかく「むやみやたらと贅沢な機能」や「取りあえず高級感」のある様々な製品が各々の市場をにぎわせていた。その中では娯楽家電も例外ではなく、家電メーカーでは高級機種をこぞって市場投入している。
またこの時期は、コンパクトディスク(CD)が発売され、従来アナログテープ(コンパクトカセット)やアナログレコードメディアからの置き換えが進んだ。読取装置の性能が再生品質に顕著な影響を及ぼすアナログメディアとは異なり、デジタルメディア化したことで読取・再生装置の品質がそれほど音質に影響しないようになり、一気に音響機器の再生品質向上が進んだ時代でもある。この時期を境にレコードは衰退し、より扱いやすいCDメディアによる音楽媒体の販売・流通体制へと切り替わった。
ただし音響機器の音質は、このCD普及以降も出力側のスピーカーの品質には相変わらず影響されるため、その点では「読み取り再生部分の性能に見合った出力機能の向上も求められた」ともいえよう。これらにより、好景気にも絡んで急速に家庭内の音響機器の置き換えが進められていた。
[編集] 日本国外
欧米ではレジャーなどで「皆で楽しめる」音響機器を屋外に持ち出す傾向がある。ラジカセは乾電池でも駆動でき、また自動車のシガーソケットからも電源が取れるため、格好の屋外持ち出し音響装置に成っている模様だ。その点で高級機種にも需要があると考えられる。
ただしハイエンドラジカセという区分けはみられるものの、果たしてバブルラジカセ同様の製品群認識があるかは不明である。
[編集] 該当される機種
[編集] パナソニック
- CDシリーズ
- FDシリーズ
- DTシリーズ (但し35,36,37は含まない)
- DSシリーズ
- STシリーズ
※コブラトップやS-XBSといった先進機能を搭載するなど、バブルラジカセで最も人気のあるメーカーである。ウーファやマルチアンプなどを高級機種などに搭載し、音質にもかなりのこだわりを見せた。
また、デジタルコンパクトカセット(DCC)に対応する機種も存在した。
- フルロジックデッキ:廉価ラジカセで多く見られる押し込み式のカセットデッキとは違い、ボタンを軽く押すだけで再生ができるデッキ。リモコンでもカセットデッキの操作ができるという利点もあり高級ラジカセに使われる。
[編集] ソニー
- DoDeCaHORN CD (ドデカホーンCD)
- SONAHAWK (ソナホーク)
- PRESH (プレッシュ)
- Dr.CHANGER(ドクターチェンジャー)
※スイーベルスタンドや電動操作パネルなどを採用して高級感を演出。3CDチェンジャーなど先進的な機能も多い。
[編集] 日本ビクター
- CDean (シーディーン)
- CDian (シーディアン)
- CDioss (シーディオス)
- DRUM CAN (ドラムカン)
※音質へのこだわりが非常に強く音響メーカーのものであるため、音質の評価が非常に高い。同社のミニコンポでも採用された補助スピーカー「パノラマ電動スピーカー」を装備したものも。
[編集] シャープ
- SEGNO (セグノ)
- QTから始まる型番
- CDから始まる型番 (コンポタイプが多い)
- DIGITURBO (デジターボ)
※SEGNOの一部機種にはタッチパネルなど、今のラジカセでは考えられないような機能を搭載しており、現在でも人気がある。「ツインカムダブルカセット」を搭載するなど個性的な機種も多い。
[編集] 三洋電機
- (Σ)ZooSCENE (ズシーン)
- Primeire (プリミエール)
※スピーカー分離型のラジカセから丸いフォルムのラジカセまで個性的な機種を多く出していた。重低音再生を重視するモデルが多い。
[編集] アイワ
- STRASSER (シュトラッサー)
※現在ではソニー傘下で海外生産拠点の製品による安物のイメージが連想されるが、当時は独自音響機器メーカーとして高品質な製品を製造・販売しており、高級ラジカセも出していた。
[編集] その他
東芝がAurex(オーレックス)、日立がLo-D(ローディー)のブランドで出していたがOEMが多い。
[編集] 人気の理由
前述の通りバブルラジカセは大型機種がメインであり、音質・機能性を重視するなど、現在のコストダウン競争の中、現行機種より質感もかなりよいため、現在でも人気がある。特に分解したりするなど改造して楽しむ人が多い。
現在はオークションやリサイクルショップなどで数千円~1万円ほどと安価で売られることが多いが、数の少ない貴重なラジカセは数万円するものもある。
[編集] 関連リンク
- バブルラジカセ博物館(ファンサイト)