ゲームクリエイター
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ゲームクリエイター (game creator) はゲームの企画・制作・販売を行う人の総称。通常、コンピューターゲームについて使われる言葉である。
今日では、ゲームに求められる内容や技術が高度化・専門化しているため、かつてのように1人でゲームを制作することは困難となっており、チームを組んで制作することが多い。 そのため、さまざまな職種のスタッフによる役割分担が行われ、効率的かつ戦略的に作られるようになった。 さらに、ゲームのジャンルも多様化しているため、必要な担当者はゲームによって大きく変化する。
ゲームクリエイターという用語はそれほど古くから定着していたわけではなく、1990年代後半に花形職業としてもてはやされた頃から一般化した。この当時は、一部の著名クリエイター(飯野賢治、鈴木裕、広井王子ら)がテレビや雑誌に露出し、「ゲームクリエイター」が若者の希望職種の上位にあげられるなどの現象がみられた。
類似の用語としてゲームデザイナー(game designer)、ゲームデベロッパー (game developer) があり、欧米ではこちらのほうが一般的である。また、後者の場合、パブリッシャーに対して実際の開発を受け持つ会社の意味にも使われる(後述参照)。
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[編集] 職種
一般的にゲームクリエイターには以下のような職種がある。
[編集] プランナー
ゲームを企画する人。通称「企画屋」。ゲームの基本的な内容はこの人によって決まる。 通常、複数人で行うことが多いが、1人の場合もある。
ゲーム業界外の人からは、自分の好きなようにゲームを設計できる夢のような仕事と思われやすいが、現実にはボツ企画の練り直しや内外のスタッフとの折衝など、ハードな仕事である。
一般的にプランナー単体で生計を立てている人は少なく、複数の仕事を持つことも多い。 兼業する仕事は企画の規模によるが、シナリオライター、プロッター、プロデューサー、ディレクターなどが代表的だが、時にプログラマーやグラフィッカーなど異色の分野を行う人もいる。
[編集] プロデューサー
ゲームの制作において方針やスケジュールなど、全体を管理する人。 大きな会社ではない場合、宣伝などもこの人が行うことがある。
[編集] ディレクター
プロデューサーの決めたことに基づいて実際に指揮を行う人。 いわば、現場指揮をする人で、この人次第でゲームの品質が大きく変わる。
[編集] プロッター
シナリオ全体の流れや構成などを概要的に書き出す人。 これだけを行っている人は非常に少なく、基本的にはシナリオライターと一本化される。
[編集] シナリオライター
キャラクターのセリフやストーリーなどを書く人。 シナリオもののゲームの場合、面白くなるかどうかはほぼこの人にかかっていると言っても過言ではない。 小説家や専業ライターなどに外注することもある。
[編集] グラフィッカー
ゲームのグラフィックを制作する人(和製英語。英語ではartistという)。 ゲームが大規模化した現在では、3DCGグラフィッカー、2DCGグラフィッカー(ドッター、絵描き)に大きくジャンル分けできる。 また、さらにそれを細分化することが現在では行われている。
[編集] プログラマー
ゲームの要、プログラムを組む人。 プログラマーも様々なジャンル分けが存在し、システムを組む人、グラフィックやサウンドの演出のプログラムを組む人、ゲームそのものには含まれない周辺ツール類を作る人、などがある。
ゲーム開発の最終工程に位置することから、スケジュールが逼迫している場合には過酷な勤務状況になりやすい。
[編集] スクリプター
ゲームのスクリプトを組む人(和製英語)。
ロールプレイングゲームやアドベンチャーゲームの開発では、プログラマーが構築したシステムの上に、簡易なスクリプト言語を実装し、具体的なゲームの内容(シナリオ、戦闘など)はスクリプトによって実装することが多い。 これにより、専門的なプログラムの知識を持たない者でも容易かつ安全にゲーム内容を実装でき、 プランナーが自分の意図を直接ゲームに反映しやすくなる、スタッフを増員しやすくなるといった利点がある。
スクリプターは、プランナーやプログラマーが兼業したり、アルバイトを雇ったりする。
[編集] サウンドコンポーザー
ゲームの音楽(BGM、効果音等)いわゆるゲームミュージックを制作する人。
かつてはパソコンやゲーム機のサウンド性能が低く制約が強かったため、純粋な作曲能力に加えて、ハードウェアを熟知しそれにあった音作りに落とし込むことが必須であった。またそのため、しばしばサウンドプログラマーと兼業であった。今日ではサウンド性能が向上したため、作曲そのものに専念できるようになってきている。
他の職種と比べ、1つのプロジェクトに割く時間が比較的短いため、複数のプロジェクトをかけもちしたり、次々と担当プロジェクトが変わったりする傾向が強い。
近年の商業ゲームにおいては、サウンドコンポーザーが主題歌以外の全てを制作、主題歌のみ有名アーティストに委託するという場合も少なくない。
[編集] その他のスタッフ
通常、ゲームクリエイターには分類されないが、ゲームにかかわるスタッフとして、以下のような職種がある。
- デザイナー
- ゲーム内のデザインやタイトルデザインなどを制作する人。特にパッケージデザインや広告デザインなどはゲームのイメージを確立する上で非常に重要である。それ故に最近はこれに力を入れることが多くなっている傾向がある。また、キャラクターデザインやメカニックデザインが重要なゲームの場合は、外部の著名なデザイナー・イラストレーターや制作会社に外注することが多い。
- デバッガー
- 一般のコンピュータ業界ではデバッグとはプログラマーがバグを直すことをいうが、ゲーム業界では開発中のゲームをテストプレイしてバグを発見・報告することをも含んでいう。このデバッグ作業を行うテストプレイヤーのことをデバッガーという。デバッガーとなる者は、社員、アルバイト、専門スタッフとさまざまである。デバッグ専門組織として、任天堂のスーパーマリオクラブが有名。
- ゲームマスター (GM)
- オンラインゲームの運営サポートスタッフ。
- ウェブデザイナー(ウェブクリエイター)
- 今日のゲームではほぼ必須となった、ゲームのウェブページを作る人(これも細分化される)。
- パブリッシャー
- ゲームのマーケティング・広報・販売を行う会社。A社のブランドで販売されているゲームでも実際の開発を行ったのはB社(いわゆる下請け)であるということはよくあり、この場合A社をパブリッシャー、B社をデベロッパーと呼ぶ。パブリッシャーは通常、高い知名度や広い販売網をもつ有力ゲーム企業である。
- ローカライズ関連スタッフ
- ゲームをローカライズ(他の言語や国向けに手直しすること)する際に、翻訳者や、そのコーディネーターなどが必要となる。ローカライズ専業の会社に外注することもある。
[編集] ゲームクリエイターの発掘・確保
任天堂は「100人の凡才より1人の天才」(山内溥)として宮本茂を重用した。その宮本をマイクロソフトが破格のギャラを提示してヘッドハントしようとしたことがあったように、特に優れたゲームクリエイターは『金の卵を産むガチョウ』としてパブリッシャー・デベロッパーにとってもハードウェアベンダにとっても何が何でも手に入れたい存在である。
ハードウェアベンダとして任天堂より後発であったソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は、優れたゲームクリエイターや彼らを擁するデベロッパーを確保するために、特にプレイステーションの立ち上げ時には様々な手段を講じた。安価な開発ツールの提供で新興デベロッパーを多数確保したり、ハイアマチュア向けの開発ツールを提供してクリエイター発掘につなげる「ネットやろうぜ!」という企画を行ったりするなどの試みが行われた。
[編集] ゲームクリエイターに必要な才能・技能
ゲームクリエイターは子供や若者にとって「憧れの職業」のひとつとなり、人気のあるゲームメーカーの求人に多数の応募がなされるようになっている。
ではゲームクリエイターに必要な才能とは何か?
まず「コミュニケーション能力」と「協調性」である。ごく初期にはほとんど一人で一本のゲームを作ってしまうこともあったが、通常は数十人のスタッフによってゲームは制作される。それらのスタッフの間で自分の意見を的確に相手に伝え、相手の意見を的確に受け止める能力は欠かせない。
もちろん、ゲームクリエイターという職業においては創造性とそれを的確に表現する能力が最優先される能力であることは疑いない。いくら協調性があっても、イエスマンや何も考えない者ばかりを集めた開発チーム(烏合の衆)では決して良いゲームは生まれない。 独創的なアイデアというのは結局は個人に帰結し、話し合いや会議で生まれるものではない(他人の発想が呼び水になることはあるだろうが)。ゲーム業界に限らずあらゆるクリエイティブな業界で、100人の凡人より1人の天才が尊ばれる理由である。
また、他のゲームを分析した上で的確にその長所・短所を理解し、またそれを自らの仕事に活かす能力(理解力と応用力)も重要だろう。先行のヒット作にはヒットするためのエッセンスがあるからだ。
はき違えてはならないのは、オタク的視点だけでは決して良いゲームは作れないということだ。 ゲームはあくまで商品であり、会社はその商品から利益を上げなければならないことを考えると出来るだけ広い層から嗜好されることこそが重要であるためである。同人作品ではないので、一部の人に嗜好されれば良い、というものではない。そのため、ゲーム作りには一般の消費者が何を求めているかを理解する、ビジネスライクな視点も必要になるだろう。