オリオン座
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オリオン座 (Orion) | |
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略符 | Ori |
属格 | Orionis |
英語での意味 | the Great Hunter |
赤経 | 5 h |
赤緯 | 5° |
観測可能地域の緯度 | 85° - -75° |
正中 | 1月25日21時 |
広さの順位 - 総面積 |
26位 594 平方度 |
明るい星の数 視等級 < 3 |
6 |
最も明るい星 - 視等級 |
リゲル (β Orionis) 0.12 |
流星群 |
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隣接する星座 |
オリオン座(Orion)は天の赤道上にあり、おうし座の東にある冬の星座。中央に三つ星が並んでいるのが目印。トレミーの48星座のうちの1つ。大きく、明るい星が多く、特に有名な星座のうちの1つである。しばしば文学作品などにも登場する。
冬の星座であるが、夏の夜明け頃にも見ることができる。
目次 |
[編集] 主な特徴
オリオン座には、明るい星や、有名な星雲・星団が多くある。主な星は次のとおり。
ヘカー(Heka、λ Orionis)はオリオンの頭である。ベテルギウス(Betelgeuse、α Orionis)はその右肩にあり、赤色超巨星である。固有名は、アラビア語のIbt al Jauzahが翻訳の過程で綴りが変わったもので、アラビア語の意味ではシャウザーの脇の下という意味である。シャウザーはアラビア語で白い帯をした羊だという。大きさは木星の軌道を飲み込む程度ある。ベテルギウスは周期2110日で0.0等~1.3等まで変光するSRC型の脈動変光星で極大時にはベテルギウスはギリシャ文字の順番通りオリオン座で最も明るい星となるが、それ以外の時はベテルギウスよりリゲル(Rigel、β Orionis)のほうが若干明るい。ベテルギウスは冬の大三角形を形成する星の1つである。
日本では、赤いα星のベテルギウスを平家星、白いβ星のリゲルを源氏星と呼ぶこともある。
γ星のベラトリックス(Bellatrix)、「女戦士」の名を持つ星は、オリオンの左肩にある。
ミンタカ(Mintaka、δ Orionis)、アルニラム(Alnilam、ε Orionis)、アルニタク(Alnitak、ζ Orionis)は、3つ並んだ2等星で、オリオンの帯として知られる。日本では三つ星(みつぼし)と呼ばれる。三つ星だけでも、オリオン座をすぐ見つけることができる。ミンタカは、ほぼ天の赤道上にある星としても知られる。
サイフ(Saiph、κ Orionis)はオリオンの右の膝にある。リゲルはオリオンの左の膝の上にあり、非常に明るい大きな白い星である。
オリオン座の西端に位置するタビト(Tabit、π3 Orionis)と北端に輝くχ1 Orionisは太陽によく似た黄色の主系列星で、遠い星の多いオリオン座ではもとより恒星全体の中でも太陽系に近い星である。
オリオン座の明るい星たちは年齢や物理的特長が非常に似ている。これはオリオン座付近に巨大分子雲が存在し、オリオン座を構成する星々の多くがこの同じ分子雲から生まれたためであると考えられている。散開星団よりは広がっているが同じ年齢と運動を持つこのような星の集団をアソシエーションと呼ぶ。オリオンアソシエーションはその代表的なものである。しかし、ベテルギウス、タビト、χ1 Oriは例外である。
オリオンは他の星を見つける目印にもなる。シリウス(α Canis Majoris)はベルトのラインを南西へ拡張することによって見つかる。アルデバラン、プロキオン、ふたご座もオリオン座を基準にして見つけることができる。
[編集] 主な天体
オリオン大星雲M42(散光星雲)は、オリオンのベルトの3星の南に位置する有名な星雲である。この星雲は、θ1星、θ2星などとともに、オリオンが腰につけた剣に見立てられ、日本ではθ星、M42、ι星を小三つ星(こみつぼし)と言う。この星雲は大変に有名で、肉眼でも見ることができる。双眼鏡ではこのM42の中に若い星や輝くガスおよび雲を見ることができる。
写真等で有名な馬頭星雲は三つ星の東側にある暗黒星雲である。この付近は写真で撮影するとかなり明るく星雲が写る領域で、左上には暗黒星雲が明るい星雲を隠し、木が燃えるように見えるため、「オリオンの燃える木」と呼ばれ、馬頭星雲はこの斜め右側に位置する。
また、オリオン座全体を取り巻くようにしてバーナードループと呼ばれる大きな円弧状の超新星残骸も存在する。
因みに、天体として非常に特徴があるために知られているとはいえないが、ウルトラマンの故郷として設定されたM78星雲もオリオン座に所属する。
[編集] 歴史
オリオン座はさまざまな古代文明で特別に認識されていた。古代のシュメール人はこの星たちを羊に見立てた。ベテルギウスの意味は「腋の下」である。シュメール人は「羊の腋の下」のつもりでこの名をつけたと考えられている。(ただしこれには異説もある。)この星は古代エジプトでは光の神オシリスの印と考えられた。
古代中国では、オリオン座は28の占星術の宿(二十八宿)のうちの1つで Shen(參)と名付けられていた。これは明らかに「3」を意味すると考えられ、オリオンの三つ星が名の由来であろう。英語では三つ星を Tristar と呼ぶ。
オリオンの「ベルトおよび剣」は、古代・近代文学の中で頻繁に引用された。2回の世界大戦の間に結成されたアメリカ陸軍第27歩兵師団に用いられた肩の記章はオリオン座をモチーフにしており、これは初期の師団長ジョン・F・オライアン将軍(John F. O'Ryan)にちなむものであろう(OrionとO'Ryanをかけたもの)。
[編集] 神話
[編集] ギリシャ神話
巨人オリオン(オリオン座)は海の神ポセイドンの子だった。大変に力のある猟師だったが乱暴で困ったので、大地母神ガイアがさそり(さそり座)を使い、毒針で刺し殺した。その後2名とも天にあげられ星座となった。オリオン座は冬の間、空高いところで威張っているが、さそり座が東の空から上るとこそこそと西の空に沈む。さそりは名高い狩人オリオンを一撃で刺し殺したくらいであるから、天にあがっても監視つきである。さそり座が天上で暴れた場合は、隣にいるケンタウルスのケイロン(いて座)が射殺すことになっている。ただしオリオンの死については別の神話(月の女神アルテミスとのロマンスも伝えられており、アルテミスの「オリオンの悲劇」の項参照)もある。
この神話は、星座の配置が先にでき、神話があとからできたということを意味する可能性もある。
[編集] 中国の神話
また中国にも、オリオン座(参)とさそり座(商)が天球上でほぼ反対側に位置して同時には上らないことから、不仲や疎遠な人間関係を指して「参商の如し」と言う言葉がある。
[編集] 日本の神話
日本では三つ星として知られるミンタカ、アルニラム、アルニタクはそれぞれ、表筒男命、中筒男命、底筒男命という住吉三神とされることがある。
[編集] その他
オリオンの名は、アッカド語のUruアンナ(天の光)が由来であるという指摘がある。
このオリオンの名は、ホラティウスやホメロスの『オデュッセイア』や『イーリアス』、ウェルギリウスの『アエネイス』で言及される。ミルトンの『失楽園』や、テニスンの『ロックスレー・ホール』にも現れる。
しかし、別の説によれば、オリオンはウーロン(古代ギリシアの言語で尿の意)からきているともいわれる