おから
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おからは日本、中国、韓国など、東アジア特有の食品の一種。豆腐を製造する過程で、大豆から豆乳を絞った後に残ったもの。繊維質を多く含み、火を通して食べることが多い。
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[編集] 概要
「おから」は絞りかすの意の「から」(茶殻の「がら」などと同源)に丁寧語の「御」をつけたもので、女房言葉のひとつ。「から」が空に通じるとして、縁起をかついで卯の花(うのはな。主に関東)、雪花菜(きらず。主に関西)などと言いかえることもある。「卯の花」はおからが白いところから、「きらず」は包丁を使わず(切らず)に食べられるところから、ついた名前。
中国語では「豆渣」(トウジャ- dòuzhā)または「豆腐渣」(トウフジャ- dòufuzhā)、韓国語では「비지」(ピジ)と呼び、精進料理や家庭料理の材料にする。
本来が廃物であるところから、値段はごく安価で庶民的な食品である。場合によっては豆腐屋が無料で分け与えたり、捨てたりすることが江戸時代から古くあり、現在では食品としての需要が供給を大きく下回り、また日持ちがしないため、家畜の飼料として一部を活用したり、脱水して保存性を高めて供給される他は、ほとんどが廃棄されている。
[編集] 調理法
- 油揚げ、椎茸、にんじんなどといっしょに出汁で甘めに煮付けるのがもっとも一般的な調理法。おから自体の甘みと相俟って独特の風味がある。煮魚などの残った出汁を再利用しても風味良く仕上がる。
- 豆腐ハンバーグのように、揚げ物や肉詰めなどの料理に、肉の代りとして用いることもある。水分をよく切るのがコツ。カロリーをおさえる効果がある。
- 高知県中部には、鯛の腹におからを詰め、蒸し物にする独特の郷土料理がある。鯛の滋味がおからにうつり、風趣はなはだよろしい。
- 近年は食物繊維が豊富な食材として、ケーキやクッキーなどにも利用されている。
- こんにゃくの粉末と混ぜ合わせて成形した「おからこんにゃく」が肉の代用となる健康食材として、注目を集めている(リンク1 リンク2)。
[編集] 再利用など
通常、おからは産業廃棄物として処理される。全国民が少量ずつ毎日食べれば廃棄物にならないとも言われるが、現状では上記の理由などから多くが廃棄物となってしまう。
これに対し、おからの再利用については様々な研究がなされている。大手タイル・トイレメーカーのINAXは、おから乾燥機「オカラット」を使用した再生技術を開発した。おからを瞬時に乾燥させることで、日持ちのする飼料として販売することができるようにした。既に15台以上の「オカラット」を納入している [1]。
他にも、成分を取り出して基礎化粧品の開発に成功した例[2]、乾燥おからを使った猫砂などの実用例もある。
[編集] 逸話
- 荻生徂徠が若いころ、貧のあまりに近くの豆腐屋からおからを分けてもらい、飢えをしのいだといわれる。講談の有名なタネのひとつである。
- 落語の「竜田川」には、おちぶれて乞食となった遊女神代が豆腐屋になった竜田川におからを乞うて拒絶される場面が出てくる。
- 同じく落語「鹿政談」では、豆腐屋が軒先に出しておいたおからを飢えた鹿が食べてしまうところから話がはじまる。「竜田川」とあわせておからがほとんど廃物同然のものであったことがわかる。
- うな重の起源は鰻の蒲焼が冷めないよう、熱したおからを敷いた重箱に鰻を乗せて出前したことにはじまるという説がある。
- 能舞台や所作板はすべりをよくし、つやを出すためにおからで乾拭きをする。
- 中国語では、粗悪なセメントを使った強度不足の工事を「おから工事」を意味する「豆腐渣工程」(トウフジャーコンチョン dòufuzhā gōngchéng)と表現する。
[編集] 外部リンク
- 最高裁判所判例集判決全文表示 - 廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反被告事件(いわゆる『おから裁判』)