2学期制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2学期制(にがっきせい)は、学校の1年間の課程を2つの学期に分けて行う制度。2期制、セメスター制ともいう。
セメスター(英語: semester)とは、欧米の大学で、その一年間の教育課程を前期、後期、もしくは夏学期(4月から7月まで)、冬学期(9月から翌年3月まで)の二期に分ける場合のそれぞれの学期のことを言う。ドイツ語では、「ゼメスター」という発音になるので、表記はそちらも使用される。
語源は、ラテン語のsemetrisで、意味はse+metrisが、「6か月」という意味である。seが、ドイツ語のsechs、英語のsixになっていく。日本では新しい年度の初めは4月であるが、欧米では9月である。大学は、ヨーロッパでは、夏学期からでも冬学期からでも新規の学生登録ができる。
大学などの高等教育では、ほとんどの学校が2学期制であるが、中等教育以下では、3学期制が多い。初等中等教育に関しては、2001年度に滋賀県栗東市の小学校が導入、仙台市は2002年度から市立小中学校の全校で導入するという先駆的な取り組みを行った。
なお、最近では後述するような2学期制のデメリットも目立ち、3学期制に戻す学校も出てきている。
目次 |
[編集] 2学期制実施の意図
初等教育、中等教育における2学期制の実施には、次のような意図がある。
- 2002年度から段階的に実施された学習指導要領では、5,6時間授業が増えて、児童会・生徒会活動や放課後活動にゆとりがなくなったが、各学期が100日ほどの長い授業日数となる2学期制によって、年間を通したゆとりを生み出すことができる。
- 以前の学習指導要領及び学校6日制時代に実施していた学校行事が、ほぼ同様に計画・実施されていて窮屈なことから、その見直しや検討を図る。
- 通知票(あゆみ)の評価を1学期と2学期の2回にすることにより、学習(評価)期間が100日ほどになって絶対評価の意義が生かされる。
- 40日ほどに減った3学期では、絶対評価の意義が薄い。教科によっては、少ない授業時数であるにもかかわらず無理に評価しなければならない弊害が生じている。
- 1つの学期がなくなることで、始業式と終業式が減ったり、当日の時数カットがなくなることや、評価週間が1回減ることで、年間授業時数を増やすことができる。
- 評価業務のなくなった7月と12月がこれまで以上にゆったりでき、行事の時期や持ち方及び内容を見直せる。また、夏季休業及び冬季休業前に児童・生徒への個別指導週間を設定して、学習や生活の在り方をふりかえり、有意義な休みの過ごし方に向けた指導・支援ができる。
- 夏季休業及び冬季休業期間中に、4月から7月と10月から12月の間における学習結果について評価業務ができ、1学期末(9月)及び2学期末(3月)の評価業務にゆとりをもたらすことができる。
- 新しい総合的な学力(学ぶ意欲、思考力、判断力、表現力、知識・技能)の育成には、学習期間の長い2学期制がふさわしい。
[編集] 2学期制のしくみ
- 2002年度 (年間授業日数205日) 土曜日が完全に休みになり授業日が約40日減った。
3学期制 |
1学期 (75日) |
夏 休 み |
2学期 (86日) |
冬 休 み |
3学期 (44日) |
|
|
25日 |
25日 |
||||||
- 2003年度 (年間授業日数208日) 6日間の秋休みを設定した。10月8日は開校記念日,9-10日は夏休みから2日を移行した。11(土),12(日),13日は体育の日
1学期
|
2学期
|
|||||||
2学期制 |
4/7 (112日) 7/26 |
夏 休 み |
10/7 8/17 |
秋 休 み |
10/14 (96日) 12/27 |
冬 休 み |
3/24
|
|
23日 |
6日 |
25日 |
||||||
[編集] メリットとデメリット
児童・生徒側と教員側にそれぞれ次のような利点と欠点がある。
[編集] 学習者から見たメリット
- 長期休業(夏休み・冬休み)前に通知票をもらわないので,「成績が悪い」などと小言を言われないで休みに入ることができる。
- 定期考査の回数が減る。
- 3学期制の場合1学期中間・期末、2学期中間・期末、3学期末(学年末)と5回あるが、2学期制の場合は前期中間・期末、後期中間・期末(学年末)と4回になる。(但しあまりに1回あたりの考査範囲が広くなるのを防ぐために一部学校では考査回数を増やすことも)
- 秋休みがある。(但し、ない場合もある。)
[編集] 教員から見たメリット
- 各学期がそれぞれ100日程の長い授業日になることで,年間を見通した学校行事や児童会活動・生徒会活動を計画することが可能になる。
- 長期休業前の時期も落ち着いた学習活動に取り組ませることができる。
- 長期休業に向けた児童・生徒への指導を通して,それまでの学習や生活の在り方を振り返らせ有意義な休みの過ごし方に向けた指導・支援体制をとることができる。
- 通知票の評価を3回から2回にすることにより,学習期間が100日程になり絶対評価の意義が生かされる。
- 始業式・終業式・評価業務が各1回ずつ減り,年間授業総時数が増え従来より時数に余裕を生ませることが出来る。
- 学校教育全体を見直すきっかけとなる。
[編集] 学習者から見たデメリット
- 1回の定期考査での試験範囲が広くなる。
- 夏休み明けに前期末の定期考査があり、夏休みに余り羽を伸ばせない。
- 部活動の公式戦が試験前と重なって、生徒に不要な負担を与えることになることもある。
- 学期の途中に休暇が入り、勉強に集中しがたい。
[編集] 教員から見たデメリット
- 2学期制を生かした新教育課程の趣旨を実現することに時間がかかる。
- 以前の学習指導要領及び学校6日制時代から引き続き実施されている学校行事の見直しや検討をしなければならない。そこには発想の転換が必要であり児童・生徒、保護者、地域、職員等からの理解を得るのが難しい。
- 夏・冬休み前に学期の区切りをつけ通知票を発行するという,従来からのリズムが変化することに対する保護者の不安感が大きく,その解消を図ること,その方策には時間と手間がかかる。
[編集] 2学期制実施地域・学校
- 北海道
- 仙台市
- 市立高等学校や市内の県立高等学校は昭和50年代から実施されていた。
- 市立の小学校123校、中学校63校の全校が、平成14年度から2学期制実施。
- 宮城教育大学附属小学校、宮城教育大学附属中学校では仙台市の実施よりも前から導入している。
- 東京都
- 東京都立新宿山吹高等学校で創立当初より実施されているほか、一部地域で2004年度より実施されている。(一部地域で2期制という表現もある)
- 多摩地域では、立川市の全ての市立中学校で実施している。(上砂川小学校でも実施されている)
- 神奈川県
- 神奈川県立横須賀高等学校(平成6年)、神奈川県立相模大野高等学校(平成10年)などで導入している。
- 新潟県
- 新潟県立新潟高等学校(平成7年)、新潟県立高田高等学校(平成11年)、新潟県立新発田高等学校(平成12年)で2学期制を導入している。
- 新潟市の学校では、2006年度には小学校59校、中学校41校の計100校で実施されている。
- 金沢市
- 2002年度から4校で試行し、2004年度から、小・中学校で2学期制を実施。
- 岐阜県
- 静岡県
- 豊橋市
- 大阪府
- 大阪市の小学校・中学校428校で2学期制の導入を検討している。数校を指定して研究している。
- 大阪府立北野高等学校、大阪府立天王寺高等学校、大阪府立茨木高等学校などに於いて実施されている。
- 岡山県
- 岡山県立岡山芳泉高等学校
- 岡山で本校のみ平成14年より2学期制を実施。
- 広島県
- 東広島市 2005年(平成17年度)4月から市内全ての公立小中学校で2学期制を実施。
- 4月~10月中旬までを前期、10月中旬~翌年3月までを後期と呼び、夏休みが2日減る代わり前期と後期の間に秋休みが6日間入る(ただし一部の中学校では文化祭(市立八本松中学校のみ文化活動発表会と称している)、学芸会等が秋休み前に行われる為短縮又は延長)。
- 広島県立賀茂高等学校、広島県立西条農業高等学校でも実施。
- 一部の学校は運動会(体育祭、体育大会)の実施を秋季(9月)から春季(5月)に変更している。
- 但し説明があったのは導入前の3ヶ月前の2005年2月ごろだったので児童、生徒や保護者から不満の声が上がった時期が一時期あった。これだけ説明が遅くなったのは2005年2月11日の東広島市周辺地域が東広島市に吸収合併するため、2学期制を行う学校の調整に時間がかかったためだと思われる。
- テストが4回になった学校もあれば一部中学校では実力テストなどが1ヶ月に一回+期末・中間テストとなった為、生徒からは「'別に2学期制になっても変わらない'」「'3学期に戻して'」という声も聞かれる。
- 広島市 2006年(平成18年)度から市立天満小学校、市立竹屋小学校ほか13校をモデル校として試験的に導入。2007年度には市内全ての公立小中学校で導入が計画されているが。2006年12月に保護者で作る市民グループが2007年4月までの導入には市側の説明が足りないと2学期制に対する詳しい説明を求めた。
- 東広島市 2005年(平成17年度)4月から市内全ての公立小中学校で2学期制を実施。
- 沖縄県
[編集] 2学期制の課題
- 2学期制を生かした新教育課程の趣旨を実現する教育活動の創造をすること。
- 以前の学習指導要領及び学校6日制時代から引き続き実施されている学校行事の見直しや検討をすること。(発想の転換)
- 児童会・生徒会活動の見直しや検討をすること。
- 地域や保護者への2学期制の理解をより深めること。
- 夏・冬休み前に学期の区切りをつけあゆみ(通知票)を発行するという、従来からのリズムが変化することに対する保護者の不安感の解消を図ること。
[編集] 他の学期制
3学期制、2学期制以外にも、土浦日本大学中学校は1学期制、自修館中等教育学校は4学期制、淑徳巣鴨中学校は5学期制を採用している。