管弦楽のための協奏曲 (バルトーク)
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管弦楽のための協奏曲は、バルトーク・ベーラが作曲した5つの楽章からなる管弦楽曲である。バルトークの晩年の代表作であり、最高傑作のひとつにも数えられる。
- 演奏時間:約35分
- 作曲時期:1943年8月15日から10月8日(総譜による)
- 改訂:1945年2月
- 初演:1944年12月1日、ボストン市にて、クーゼヴィツキー指揮、ボストン交響楽団。バルトーク臨席の元で行われた初演は大成功で、この曲は一気にポピュラーになった。
[編集] 曲の構成
- 第一楽章 Introduzione(序章)
- 序奏つきソナタ形式。ゆっくりとした神秘的な(バルトーク的な)序奏と、フーガ風な激しい第1主題とオーボエがつむぎ出すどこか物悲しい第2主題が中心となるアレグロ。展開部の最後では推移主題を用いた全金管の激しいフーガが聴かれる。
- 第二楽章 Giuoco delle coppie(対の遊び)
- 三部形式。最初と最後の小太鼓のリズムが特徴的。その間では、対になった木管楽器群が旋律を吹く。それぞれのパッセージで、対になっている二管のなす音程は異なる。たとえば、ファゴットは短六度、オーボエは三度、クラリネットは七度、フルートは五度、トランペットは二度といった具合である。中間部では金管のコラールが聞こえる。
- 第三楽章 Elegia(悲歌)
- バルトークの典型的な「夜の歌」。彼独特のアーチ形式(A-B-C-B-A)をとる。中間部(C)のビオラから始まる旋律には、バルカン民謡の特徴が垣間見られるとも言われる。
- 第四楽章 Intermezzo interrotto(中断された間奏曲)
- 三部形式。タイトルの「中断」は曲の中盤で乱入してくるドミートリイ・ショスタコーヴィチの交響曲第7番の第1楽章の展開部の主題(ナチスによるレニングラード侵攻を描いたもの。元々この旋律自体レハールからの引用の可能性が高い)が引用されている部分のこと。トロンボーンのグリッサンドによる「ブーイング」と、木管楽器の「嘲笑」が特徴的である。 一方、第二主題に当たるヴィオラに始まる旋律は、非常に美しい。この旋律も19世紀の作曲家(現在は無名)からの引用である。
- 第五楽章 Finale(終曲)
- ロンド・ソナタ形式に近い。高速で何度も繰り返される音形が第一主題にあたる。大きく動くホルンの印象的なユニゾンで始まり、ヴァイオリンが急速な、ジグザグに音階を行き来する無窮動風の旋律を奏する。中間部では金管楽器のソロによるフーガ風の旋律を中心に構成。極上の対位法が編まれる。
- エンディングは初演時のものと別に本人による改訂版もある。
[編集] 作曲
この曲はボストン交響楽団の指揮者セルゲイ・クーセヴィツキーからの委嘱により、1943年(総譜の末尾に記された日付によると、1943年の8月15日から10月8日にかけて作曲されたらしい)に作曲された。
アメリカへ移住したバルトークは、完全に創作の意欲を失っており、この委嘱が無かったら、弦楽四重奏曲第6番がバルトークの最後の作品になっていたであろうと考えられている。当時健康状態の悪化で病院に入院し、ライフワークである民俗音楽の研究すら出来ず、経済的な困窮も相まって強いうつ状態にあったバルトークを励まそうと、バルトークがハンガリーから移住する手助けをしたフリッツ・ライナーら仲間がクーセヴィツキーに提案した、と言われる。ブージー&ホークス社の現在の版の前書きによると、クーセヴィツキーはバルトークの病室を訪れる際に当時としては破格の1000ドルの小切手を持参したという逸話がある。この委嘱によって、バルトークはすっかり元気を取り戻し、その後1945年に死去するまでこの曲以外にも無伴奏ヴァイオリンソナタやピアノ協奏曲第3番などの作品を残した。
亡くなる半年ほど前の1945年2月、バルトークは出版に先立って初演を聴いた際の反省に基づき、この曲に改訂を加えた。大きな変更点として2楽章の速度表示及びメトロノーム指示の変更と、終楽章の最後の部分が長くなった新しいバージョン(彼は書簡の中で「エンディングが唐突過ぎる感がある」と述べている)が加えられたことがある。
現在、後者については改訂前と改訂後の両方の版が演奏されているが、上記のように本人が初演の反省を元に書き加えたという経緯があることと、演奏効果的にも派手であることから、改訂後のバージョンを採用する演奏が圧倒的に多い(なお、改訂前の版は小澤征爾などがレコーディングしている)。改訂後のスコアはアペンディックスとして一部の小節の重複を含めて後のページに収録されており、改訂前後の両方を確認できるようになっている。
なおこの曲の発想には、彼の楽譜を出版しているブージー&ホークス社のラルフ・ホークスが1942年にバルトークに送った「バッハのブランデンブルク協奏曲集のような作品を書いてみたらどうでしょう」という書簡や、盟友コダーイの同名の作品(1939年作)の影響を指摘する声もある。
[編集] 楽器編成
木管 | 金管 | 打 | 弦 | その他 | ||||||||||||
Fl. | Ob. | Cl. | Fg. | 他 | Hr. | Trp. | Trb. | Tub. | 他 | Vn.1 | Vn.2 | Va. | Vc. | Cb. | ||
3 (Pic.1) |
3 (Ehr.1) |
3 (B.Cl.1) |
3 (Cfg.1) |
4 |
3 |
3 |
1 |
Tim., Cym., Tri., B.D., S.D., Tam-t., 吊り下げ式のシンバル |
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Hp.2 |