福井晴敏
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福井晴敏(ふくい はるとし、1968年11月15日 - )、は日本の小説家。東京都墨田区生まれ。私立高輪高等学校卒業、千葉商科大学商経学部経済学科中退。
1990年代末以降の日本のエンターテイメント小説を語る上で重要な位置を占める小説家であり、小説内での壮大なアクションシーンと重大テーマを扱った時事性、人間ドラマの展開などで話題となり、人気を博している。
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[編集] 経歴
[編集] 生い立ち
子供の頃は全く小説などの字を読まず、ふきだしに書いてある文字を読む「漫画っ子」だった。当時読んでいたものは、「週刊少年ジャンプ」の一連の連載漫画で、教科書などに載っており「名作」とされる太宰治の『走れメロス』は、アニメで見たが何が面白いのかが全く分からず、以後「名作」といわれるものを遠ざける癖がついてしまったという。
その福井が小説を書き始めるきっかけとなったのは、彼が「映画好き」だったからであった。福井は自分で学校の授業中、ノートの端などに自分オリジナルの映画用シナリオを書いていて、これが小説を書き始めるきっかけとなった(その内容は当初から爆発が多かったと語っている)。
大学中退後、株式会社連邦警備にて警備員生活をしながら小説の執筆を進める。ただ、この小説自体、当初はあまりにも暇な警備員生活で何か面白いことはないかと考え書き始めたもので、当初から小説家になるつもりはなかったと言っている。ちなみに最初に書いた小説は原稿用紙5,000枚を超える大作で、本人は「たかが7人程度が面白いと言ったからと言って、それで小説家になれるわけではないのに、おだてられて結局小説を送ってみようと思った」と語っている。
[編集] デビュー後
第一作『川の深さは』が第43回江戸川乱歩賞選考委員会で大きな話題となり、当時選考委員だった大沢在昌が特に絶賛した(ちなみにこの年の受賞作は野沢尚の『破線のマリス』)。翌1998年、『Twelve Y. O.』で第44回江戸川乱歩賞を受賞した。この作品は、単作品として評価されるべき同賞への応募であるにもかかわらず、あえて前年度の『川の深さは』の続編として書かれている。これは、前年の『川の深さは』に対する大沢在昌の論評が、翌年も待っているという趣旨であったためとも考えられる。
その後『亡国のイージス』で第53回日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞と、2000年の大藪春彦賞を受賞、直木賞候補ともなった。2003年、『終戦のローレライ』で第23回吉川英治文学新人賞、日本冒険小説協会大賞を受賞した。2005年には『ローレライ』として『終戦のローレライ』が、続いて『戦国自衛隊1549』、『亡国のイージス』が相次いで映画化された。また、初の短編集『6ステイン』が直木賞候補になる。
お気に入りの映画は、『日本沈没』『新幹線大爆破』『太陽を盗んだ男』で、映画『ローレライ』の監督である樋口真嗣と映画の趣味が一致している。
[編集] 作品
『亡国のイージス』は、単行本で2段組、654ページである。文庫版は、上・下巻500ページを超える。『終戦のローレライ』も文庫版では全4冊になる分量を誇る。しかし本人は、分厚いと読者が手に取るのに抵抗があるので短く書ければと思っているようだ。
作中頻繁に登場する「DAIS(ダイス)」こと防衛庁情報局(ディフェンス・エージェンシー・インフォメーション・サービス)なる秘密組織は、実際には存在しない(防衛庁情報本部は存在する)。この組織は処女作『川の深さは』に初登場し、『Twelve Y. O.』『亡国のイージス』『6ステイン』『op.ローズダスト』にも継承されている。同様に福井作品お馴染みのものとしてGUSOHという架空の兵器がある。
また、『亡国のイージス』や『戦国自衛隊1549』など、ほとんどの作品は自衛隊に関する専門用語満載の小説である。このことについて福井自身は2005年に以下のようなことを語っている。
- 日本でどうやったらスペクタクル・アクションが作れるかというのが以前から自分の命題だった。
- 端的に言えば映画『ダイ・ハード』のような映画は、日本でも頑張れば出来るのではないかと考えたが、『ダイ・ハード』のような事件が起こった場合、警察はともかく自衛隊というのは出動できないというのが分かり、それだったらその前提の話で書こうと思った。
- 『亡国のイージス』を書いた時(2000年)には、フィクションとしての「自衛隊」というテーマは重たくなかったが、この5年間の変化でリアリティを帯びてきてしまった。今年(2005年)、自分の小説が3本立て続けに映画化されたことは時代と無縁ではないと思う。
[編集] 福井とガンダム
雑誌などで福井について取り上げられるとき、「大のガンダムファン」「自他共に認めるガンダムマニア」などと書かれることがあるが、正確にはアニメ監督富野由悠季のファン(福井自身が自ら「富野ウォッチャー」であると公言している)で、富野のインタビュー本の解説を書くなどしている。NHKの番組『トップランナー』に出演した際も、富野への尊敬の意を表していた。逆に、富野は福井の結婚式の仲人を務めた。ちなみに、福井が富野監督作品で一番好きなのは『伝説巨神イデオン』であるという。
富野作品のノベライズは、『∀ガンダム』(改題『月に繭 地には果実』)。これは自分でも気合を入れて書いた本で、自分のお気に入りのひとつだという。
『評伝 シャア・アズナブル』のコメントの中で、「龍馬にではなくシャアに学べ」や、シャアという人物を「自意識過剰でマザコン」「自分しか愛せなかった男」などと述べ、反面教師としなければならないと語っている。
単なるファンに留まらず、自身の作品執筆の際にも、富野の演出方法を参考にしている(例を挙げると、映画版ガンダムの3部作でまとめた編集を、『月に繭地には果実』で応用している)。富野についてのムック本「富野由悠季 全仕事」によれば、デビュー前に自身の作品の人間ドラマの目標として、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』を意識していたという。
また、「ガンダムエース」2006年12月号にて、『機動戦士ガンダムUC』というタイトルで、同誌2007年2月号より作品の連載開始されることが正式に発表された。これらは「俺がやらずに誰がやる」という心境であるらしい。福井本人が公言するようにテレビアニメ化を前提としており、久々の宇宙世紀を舞台にした、ガンダムシリーズのテレビシリーズ作品となる予定である。福井自身はインタビューにおいて、宇宙世紀作品では避けて通れないと言えるであろうニュータイプ論に対する自分自身の考える回答と、『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙』のラストメッセージに対する答えを出すことが、作品のメインテーマであると語っている。
[編集] 作品一覧
[編集] 小説
- Twelve Y. O.(講談社、1998年/講談社文庫、2001年)
- 亡国のイージス(講談社、1999年/講談社文庫、2002年)
- ターンエーガンダム(角川春樹事務所[ハルキノベルス]、2000年)
- 川の深さは(講談社、2000年/講談社文庫、2003年)
- 月に繭地には果実(上記『ターンエーガンダム』改題、幻冬舎[幻冬舎文庫]、2001年)
- 終戦のローレライ(講談社、2002年/講談社文庫, 2005年)
- 6ステイン(講談社、2004年)
- 戦国自衛隊1549(角川書店、2005年)
- Op.ローズダスト(文藝春秋、 2006年)
- 未発表作品
- 敗者達の黙示録(未完成)
- 壊点-ポイント・ブレイク-
これら2作品は「DAIS(ダイス)」の原型のような組織や、他作品中で語られている「920」という工作員が主役として登場している。「敗者達~」は、福井曰く「福井晴敏のネタ帳」「書ききっていたら創作活動をやめていたかもしれない」らしい(『HOW TO BULID 福井晴敏』 幻冬舎 より)。ちなみに『敗者達の黙示録』は『HOW TO BULID 福井晴敏』にダイジェスト版が掲載されている。
[編集] 漫画(原作)
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- 終戦のローレライ(作画:虎哉考征、脚色:長崎尚志、「月刊アフタヌーン」連載中、講談社刊)
- 亡国のイージス(作画:横山仁、「週刊モーニング」連載中、講談社刊)
- 柳花-ユファの大地-(作画:木根ヲサム、「Comicリュウ」連載中、徳間書店刊)
- C-blossom(作画:霜月かよ子、講談社、2005年)
- 連載終了