宇宙世紀
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宇宙世紀(うちゅうせいき、Universal Century:U.C.)とは、アニメ作品群「ガンダムシリーズ」のうち、『機動戦士ガンダム』およびその派生作品の舞台となった架空の紀年法。
スペースコロニーへの移民が開始された年を元年とする。慣用的に4桁の整数で表示され、例えばU.C.0079(宇宙世紀0079年)は「ユニバーサルセンチュリー・ダブルオーセブンティナイン」、U.C.0123(宇宙世紀0123年)は「ユニバーサルセンチュリー・オーワントエンティスリー」と英語で発音されることが多い。
また、それらの作品の世界観そのものを指して「宇宙世紀」という場合がある。
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[編集] 宇宙世紀の世界観
宇宙世紀世界のうち、アニメ作品で描かれたのは『機動戦士ガンダム』の舞台となった宇宙世紀0079年頃から、『機動戦士Vガンダム』の舞台となった宇宙世紀0153年頃までである。
この時代においては、地球圏、すなわち地球と月の周囲に多数のスペースコロニーが建設され、そこに多数の人々が生活している。しかしこれらコロニーの自治権を巡り、地球連邦政府とコロニー住民との間で衝突が頻発し、ついには宇宙世紀0079年の一年戦争をはじめとする多数の大規模な戦乱を生じるに至る。そのような状況の中、(架空の素粒子である)「ミノフスキー粒子」によって、特に軍用兵器において劇的な技術革新が起こり、その代表格が人型汎用機動兵器「モビルスーツ」である。
[編集] 宇宙世紀の正史
ガンダムシリーズはアニメ以外にも漫画・小説など多数の派生作品が作られており、それらの間で歴史に食い違いが生じていることがある。アニメ制作元のサンライズでは、「映像化された部分が真実である」という見解を示している。そのため、映像作品で描かれた歴史は「宇宙世紀の正史」と呼ばれることがある。ただし、映像作品であってもTV版、劇場版、OVA等を比較すると内容に食い違いが出る箇所があり、どれをより正統な「正史」として認めるかはファンによって見解が異なる。
また、派生作品を正史に準じるものとして見なす場合もある。例えば『機動戦士クロスボーン・ガンダム』は漫画作品であるが、アニメの原作者および監督を務めた富野由悠季が直接制作に関わっており、『機動戦士ガンダムF91』の後のアニメ化されていない時代(宇宙世紀0133年~0136年)を描いていること、またコンピュータゲーム等において他の作品と同格に扱われていることもあって、正史に準じるものと見なされている。逆に『機動戦士ガンダムZZ』は元々は正史とされてきたが、映画版『機動戦士Zガンダム』の影響により、「正史には含めない」、「正史に準じるものへと変化した」もしくは「宇宙世紀は2つのパラレルワールドを持つ」といった様々な見解が生じた。
また、富野自身が書いた小説『ガイア・ギア』は1980年代後半に発表されたものだが(時代としては宇宙世紀0203年頃が舞台)、現在では絶版となっており(著者側等の諸事情によって復刊は困難とのこと)、後にサンライズが監修した書籍等における設定にも反映されていない。さらに『機動戦士Vガンダム』や宇宙世紀0223年頃を描いた映画『G-SAVIOUR』との齟齬もある。それにも関わらず、ファンの間ではこの作品を正史に準じるものとして扱う場合がある。
また、宇宙世紀という時間軸が使われる場合には、必ず富野が製作者として深く関わっていることも特筆される。『機動戦士ガンダムZZ』を除くと、宇宙世紀が関わる場合は富野が実権のある立場で実際の製作に深く関わっているのに対し、宇宙世紀以外のガンダムでは、富野は「原作者」もしくは「総監督」の立場であり、実際の製作には関わっていない。そのため、富野以外が作成したガンダムを認めない人は必然的に宇宙世紀の流れだけを正統とし、他のガンダムを認めない傾向にある(∀ガンダムは特殊な時間軸を持ち、宇宙世紀の一部とも考えられる。詳しくは∀ガンダムで)。
[編集] 宇宙世紀の時節
宇宙世紀は戦争の時期によって大まかに分けることができる。なお、参考のため、正史とされる映像作品と富野由悠季原作の漫画・小説を併記した。
- 一年戦争期(宇宙世紀0079年頃)
- デラーズ紛争期(宇宙世紀0083年頃)
- グリプス戦役期(宇宙世紀0087年頃)
- 第一次ネオ・ジオン抗争期(宇宙世紀0088年頃)
- 第二次ネオ・ジオン抗争期(宇宙世紀0093年頃)
- マフティー動乱期(宇宙世紀0105年頃)
- 第一次・第二次オールズモビル戦役~コスモ・バビロニア建国戦争期(宇宙世紀0120~0123年頃)
- 木星戦役期(宇宙世紀0133年頃)
- 宇宙戦国時代~ザンスカール戦争期(宇宙世紀0140~0153年頃)
- マハの反乱期(宇宙世紀0203年頃)
- 『ガイアギア』
- 地球連邦崩壊~ガイアの光事件期(宇宙世紀0217~0223年頃)
[編集] 宇宙世紀とそれ以外の世界観
『機動戦士ガンダム』の続編作品はすべてこの宇宙世紀を舞台としていたが、1994年からは『機動武闘伝Gガンダム』をはじめとした「ガンダム」を冠しながらも続編ではない、原作者富野由悠季以外の手によるストーリーが発表され、宇宙世紀以外の時間軸で活躍するガンダムも出現することとなった。すなわち『Gガンダム』の「未来世紀」、『新機動戦記ガンダムW』の「コロニー歴(アフターコロニー)」、『機動新世紀ガンダムX』の「アフターウォー」といった紀年法による世界である。
のちに、初代『機動戦士ガンダム』とは監督も違い続編でもないこれら非宇宙世紀ガンダムを「アナザー・ガンダム(もしくは平成ガンダム)」と呼び、ガンダムとして認めるべきかどうかファンの間で議論が生じた。これに押され、1999年に富野由悠季の手で『∀ガンダム』が発表された。『∀』の世界自体は「正暦」という紀年法だったが、作中明らかにされた過去の歴史「黒歴史」において、宇宙世紀の世界だけでなく、『G』、『W』、『X』の世界も含まれていることになった。これは、全てのガンダムを全肯定するという意味を込めたものであった。
その後、『∀ガンダム』以後にも新たな時間軸「コズミック・イラ」で展開される『機動戦士ガンダムSEED』および『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』が放映された。この世界も黒歴史に含まれるのかファンの間で議論されている。この解の一つとして、ガンダムエースで連載された安田朗の漫画「月の風」にて、同作品群の世界が黒歴史の一部として描かれた。これは全てのガンダム作品の終着点は∀ガンダムであり、今後の作品も黒歴史に含まれる可能性を示したとも言える。