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神奈川近代文学館(かながわきんだいぶんがくかん)は1984年に開館。神奈川県が設立し、管理・運営は財団法人神奈川文学振興会が行っている。大衆文学、児童、詩歌などジャンルごとの大規模展示をはじめ、夏目漱石、芥川龍之介、泉鏡花から有島三兄弟、武者小路実篤、川端康成、太宰治、三島由紀夫、吉川英治、山本周五郎にいたる個人作家の展示など50回以上の企画展を開催し、さらに近年は講演会や講座、朗読会の開催を通じ、文学の普及活動に力を注いでいる。
また資料館としては立地条件に恵まれ、資料保存のエキスパートを擁することが関係者に認識されたことから、その数は2005年末で図書約40万冊、雑誌約41万冊、肉筆資料(特別資料)約15万点以上、資料総数は104万点に達している。収蔵内容としては個人作家、収集家の業績を顕彰するコレクションとしての尾崎一雄文庫、中島敦文庫、大岡昇平文庫、井上靖文庫など40をこえる個人文庫を有するほか、神奈川ゆかりの多数の作家の肉筆資料、書籍類、文芸雑誌を中心とする膨大な雑誌があり、内外の研究者の要求にこたえている。資料の電算処理も国内の水準を越えているが、これをもとにした所蔵情報の公開、資料の保存処理の確立なども視野に置き、児童文学、大衆文学資料の収集も視野に入れた近代日本文学を専門とする国内最大規模の資料館として発展を続けている。
初代名誉館長は尾崎一雄。初代館長は小田切進、現館長は紀田順一郎。
[編集] 沿革
1979年 |
(昭和54) |
11月 |
神奈川近代文学館第1回「建設準備懇談会」開催 |
1980年 |
(昭和55) |
4月 |
神奈川県県民部文化室において神奈川近代文学館建設準備に着手 |
1982年 |
(昭和57) |
1月 |
財団法人神奈川文学振興会設立発起人会開 |
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4月 |
財団法人神奈川文学振興会設立許可 |
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第1回理事会開催 |
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6月 |
第1回評議員会開催 |
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8月 |
神奈川近代文学館建築工事に着手 |
1984年 |
(昭和59) |
3月 |
神奈川県立神奈川近代文学館条例制定公布 |
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建築工事竣工、文学振興会事務局文学館へ移転 |
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4月 |
神奈川近代文学館事務局発足 |
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6月 |
貸会議室の使用開始 |
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10月 |
展示室、閲覧室の開設により全面開館 |
1992年 |
(平成4) |
11月 |
増改築工事に着手 |
1994年 |
(平成6) |
3月 |
増改築工事竣工 |
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神奈川県立神奈川近代文学館条例一部改正4月施行 |
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神奈川近代文学館事務局解消 |
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4月 |
神奈川近代文学館の運営、神奈川文学振興会に全面委託 |
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10月 |
展示の一般公開により全面再開館 |
2005年 |
(平成17) |
3月 |
指定管理者制度導入に伴う神奈川近代文学館条例改正4月施行 |
2006年 |
(平成18) |
4月 |
財団法人神奈川文学振興会が指定管理者として神奈川近代文学館の運営開始 |
[編集] 施設概要
- 敷地面積 7,788.74㎡
- 建設期間 1982年 7月~1984年3月(当初) 1992年10月~1994年3月(増築分)
- 建設費等 2,488,367千円(当初) 2,031,573千円(増築分)
- 建物面積等
- 構 造 鉄筋コンクリート造り
- 建築面積 1,971.6㎡
- 延床面積 7,285.3㎡
本 館 |
地下3階 地下2階 |
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3,135.7㎡ |
展示館 |
地上2階 地上2階 |
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2,271.7㎡ |
展示館 (増築分) |
地下2階 地上1階 |
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1,877.9㎡ |
[編集] 施設一覧
- 展示館
2F |
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ホール・会議室 |
420㎡ |
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ホール(220席)239.7㎡+中会議室(60席)89.8㎡+和室(20人)14畳+小会議室(18席)36.2㎡ |
1F |
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展示室・喫茶室 |
732.2㎡ |
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展示室(1)182.0㎡+(2)300.6㎡+(3)194.6㎡+喫茶室(34席)55.0㎡ |
B1F |
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特別資料室 |
250.9㎡ |
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B1F(増築) |
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記念室・収蔵庫・撮影室等 |
899.5㎡ |
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記念室・収蔵庫(含B2F)等765.7㎡+準備室・撮影室等133.8㎡ |
B2F(増築) |
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収蔵庫等 |
- 本館
2F |
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事務室 |
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1F |
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ロビー・閲覧室・事務室等 |
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ロビー152.3㎡+閲覧室(28席)72.2㎡ |
B1F-B3F |
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収蔵庫 |
1,238.4㎡ |
[編集] 展示室
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- 神奈川ゆかりの25人の文学者をそのゆかり作品を中心にビジュアルな展示
- 漱石山房書斎コーナー、文学散歩地図模型等
- 第2-3展示室(企画展示室兼用)― 常設展2「文学の森へ 神奈川の作家たち」
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- 神奈川にゆかりが深く、多くの人々に親しまれた作家たちの生涯と代表作を3部構成で交換展示
- (ただし特別展(企画展)開催時は企画展示室として使用)
- 第1部 「夏目漱石から萩原朔太郎まで」
- 第2部 「芥川龍之介から中島敦まで」
- 第3部 「太宰治、三島由紀夫から現代まで」
[編集] 特別展・企画展
1984年 |
神奈川近代文学館開館記念展 近代文学100年と神奈川展 |
没後15年 獅子文六展 |
1985年 |
生誕100年 武者小路実篤と白樺美術展 |
生誕100年 木下杢太郎展 |
没後20年 高見順展 |
日本の子どもの文学展 文学による流れ・絵による流れ・音による流れ |
没後50年 牧野信一展 |
1986年 |
尾崎一雄展 |
鈴木三重吉没後50年記念展 <赤い鳥>の森展-日本の子どもの文化の源流- |
大衆文学展 よみがえるヒーローたち |
1987年 |
川端康成展 没後15年 人・芸術、その魅力 |
堀口大學展 詩の宝石箱 |
夏目漱石展 |
神奈川文学散歩 三浦半島の風土と抒情 |
1988年 |
太宰治展 |
神奈川文学散歩展 湘南の光と影 藤沢市、茅ヶ崎市、寒川町、平塚市、大磯町、二宮町 |
堀辰雄展-生涯と芸術- |
1989年 |
中里恒子展-物語のこころ- |
神奈川文学散歩展 横浜-文学の港 |
吉川英治展 |
1990年 |
有島武郎・生馬・里見弴展-白樺派三兄弟の芸術- |
ドキュメント 昭和の文学展 |
神奈川文学散歩展 海辺のきらめき-小田原・真鶴・湯河原 |
1991年 |
山本周五郎展 |
神奈川文学散歩展 都市の叫び、水のささやき-川崎と文学 |
日本の詩歌展-詩・短歌・俳句の100年 |
1992年 |
芥川龍之介展 生誕100年 |
没後50年 中島敦展-一閃の光芒- |
1993年 |
「湘南の文学と美術」展 |
1994年 |
馥郁タル火夫ヨ 生誕100年西脇順三郎 その詩と絵画 |
開館10周年・増築落成記念 収蔵コレクション展 |
1995年 |
泉鏡花展-水の迷宮- |
神奈川文学散歩展 鎌倉 文学の理想郷 |
1996年 |
神奈川文学散歩展 箱根・県央-緑と風と文学と |
新展示 戦後の文学-新世代の登場まで |
大岡昇平展 |
1997年 |
立原正秋展 |
文学の挿絵と装幀展 |
収蔵コレクション展1 神西清文庫 |
1998年 |
広津柳浪・和郎・桃子展-広津家三代の文学 |
谷崎潤一郎展 |
収蔵コレクション展2 近藤東文庫 |
1999年 |
開高健展 |
永井荷風展 |
収蔵コレクション展3 尾崎一雄文庫 |
2000年 |
「司馬遼太郎が愛した世界」展 |
原爆文学展 ヒロシマ・ナガサキ -原民喜から林京子まで- |
収蔵コレクション展4 木下杢太郎文庫 |
2001年 |
子どもの本の世界展 20世紀から21世紀への贈り物 |
野間宏と戦後派の作家たち展 |
収蔵コレクション展5 藤森成吉文庫 |
2002年 |
夏目漱石遺品受贈記念 夏目漱石展-21世紀へのことば- |
収蔵コレクション展6 中島敦文庫 |
生誕100年記念展 歌びと 吉野秀雄 |
2003年 |
不滅の剣豪3人展-鞍馬天狗、眠狂四郎、宮本武蔵 |
井上靖展 詩と物語の大河-北国 氷壁 敦煌 しろばんば 孔子- |
収蔵コレクション展7 高木健夫文庫 |
2004年 |
21世紀文学の預言者 芥川龍之介展 |
鎌倉女学校と作家たち展 |
開館20周年記念 収蔵コレクション展「作家の筆跡。作家の逸品。」 |
2005年 |
生誕80年・没後35年記念展 三島由紀夫 ドラマティックヒストリー |
没後60年 島木健作展 |
日本の童謡 白秋、八十-そしてまど・みちおと金子みすゞ展 |
生誕100年 伊藤信吉展 |
2006年 |
新収蔵資料展 2005年度 |
生誕110年 吉屋信子展-女たちをめぐる物語 |
中野孝次展-今ここに生きる |
俳句 その魅力展-子規、漱石、虚子、井泉水、山頭火 |
露伴、茂吉、寅彦と小林勇展 |
[編集] 所在地
〒231-0862 横浜市中区山手町110
[編集] 交通アクセス
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- 20系統(山手駅~山下ふ頭)港の見える丘公園下車
[編集] 周辺施設
[編集] 外部リンク