新本格派ミステリー作家
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[編集] 概要
新本格派ミステリー作家(しんほんかくは-さっか)とは、もともとイギリスのある時期の推理小説家群の総称であるが、日本においては、所謂「新本格ムーブメント」以後にデビューした作家群を指し、推理小説の本来の姿である本格の面白さ(つまり、ラストで明かされる壮大なトリック、魅力的な探偵のキャラクター造形など)を追求する姿勢を鮮明にした作品を執筆し始めた一群の作家を指す。とされるが、新本格という言葉自体定義が曖昧なものであるため、この定義についても(ムーブメント以前にデビューしている笠井潔、島田荘司等を加えるなど)諸説ある。
[編集] 歴史
1950年代後半以降、松本清張などによるリアリズム重視の社会派推理小説や、本格推理小説にロマンやサスペンスの要素を加えた笹沢左保、土屋隆夫、天藤真、草野唯雄らといった「新本格」派の隆盛により、欧米の戦間期や日本の終戦直後の時期の作品のような古典的な本格推理小説への世間の関心は薄れかけたものの、1970年代から80年代の角川映画「犬神家の一族のメディアミックス戦略を発端として起こった「横溝ブーム」や、探偵小説専門誌『幻影城』の創刊などでその人気は息を吹き返す。
しかしそれ以後、古典的な本格推理小説の新人作家はなかなか出てこず、泡坂妻夫、島田荘司、連城三紀彦等といった面々がわずかに気を吐く程度であった。がしかし1987年、島田荘司の推薦により綾辻行人が『十角館の殺人』でデビューすると、その後特に1980年代後半から1990年代前半にかけて本格推理の新人作家がぞくぞくとデビュー、本格系作品の出版部数が爆発的に高まり、世間の注目も集まった。この一連の動きを新本格ムーブメント(もしくは第三の波)などと呼ぶ。
この後1994年頃に、一時期出版部数が落ち込み、新本格ムーブメントは収束に向かったともされるが、京極夏彦、西澤保彦、森博嗣ら、多くの新人作家が登場しており、新本格派は安定成長期に入ったという見方もある。
2000年に、「本格派のさらなる発展とその年間最優秀作の選定のため」有栖川有栖を中心として、本格ミステリ作家クラブが発足、毎年アンソロジーの編纂と本格ミステリ大賞の選定を行っている。
[編集] その他
- 本格派ミステリー作家の先達である江戸川乱歩や横溝正史、エラリー・クイーン(クイーンの『Yの悲劇』のパロディものなどを執筆する本格派作家は現在でもあとを絶たない)などに影響されて、このジャンルを執筆し始めた作家も多い。
- 「新本格」という言葉は、綾辻行人の第2作『水車館の殺人』(1988年講談社ノベルズ刊)の帯で初めて使われたコピーであり、従ってこの言葉はもともと講談社が使用していたものであって、厳密に言えば東京創元社系の作家群には使用すべきではないとする説がある。だが、1966年から翌年にかけて読売新聞社が『新本格推理小説全集』と銘打った推理小説叢書を刊行していることを考えると、コピーとしての「新本格」という言葉を講談社が最初に使用したと考えるには疑問がある。
[編集] 代表的な新本格派ミステリー作家
- 愛川晶
- 芦辺拓
- 我孫子武丸
- 綾辻行人(「館」シリーズ)
- 有栖川有栖(国名シリーズ)
- 井上夢人
- 歌野晶午
- 折原一
- 太田忠司
- 加納朋子
- 北村薫(円紫さんシリーズ、覆面作家・新妻千秋シリーズ)
- 北森鴻(蓮丈那智フィールドファイルシリーズ、旗師「冬弧堂」シリーズ)
- 京極夏彦(京極堂シリーズ)
- 倉知淳
- 黒崎緑
- 斉藤肇
- 蘇部健一(「六枚のとんかつ」などの通称’バカミス’)
- 高田崇史(「QED」シリーズ)
- 柄刀一
- 二階堂黎人(二階堂蘭子シリーズ、水乃サトルシリーズ)
- 西澤保彦(匠千暁シリーズ、神麻嗣子シリーズ)
- 貫井徳郎
- 法月綸太郎(法月綸太郎シリーズ)
- 麻耶雄嵩
- 森博嗣(S&Mシリーズ、Vシリーズ、Gシリーズ)
- 山口雅也
- 若竹七海