三谷幸喜
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三谷 幸喜(みたに こうき、1961年7月8日 - )は日本の俳優、劇作家、脚本家。 血液型はA型。身長174.8cm。妻は女優の小林聡美。
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[編集] 来歴
東京都世田谷区出身。当時全盛期だった大相撲の横綱大鵬幸喜にあやかって「幸喜」と命名された。
1983年、私立世田谷学園高等学校卒業後の日本大学芸術学部在学中に劇団「東京サンシャインボーイズ」結成。活動初期では一橋壮太朗の芸名で自ら役者もつとめていた。劇団の活動と平行して放送作家としても活動をしており、『アイアイゲーム』『欽ドン!』『お笑いマンガ道場』などの番組構成などに携わる。テレビアニメ『サザエさん』の脚本を手がけたこともあるが、3本目に執筆した「タラちゃん成長期」がプロデューサーの逆鱗に触れて降板させられる(なお、作品は4本作られたらしい)。
フジテレビの深夜番組『やっぱり猫が好き』の脚本を一部担当し(このドラマが小林聡美と結婚するきっかけとなった)、その後番組『子供、ほしいね』のほとんどの回を担当(なお、この作品には主人公久保田うららの兄役で三谷幸喜本人が出演している)したことから一般に名が知られるようになり、1993年『振り返れば奴がいる』で連続テレビドラマの脚本家としてデビューする。この時、脚本が現場で勝手に直されるという事実に直面し、その体験を活かした舞台『ラジオの時間』を上演する。この作品は後に三谷の映画監督デビュー作としてリメイクされ、数々の賞を総なめにする(ちなみに映画版は『ラヂオの時間』と表記)。
この作品の成功により、翌年には『刑事コロンボ』のような倒叙ミステリーとして『古畑任三郎』の脚本を手がけることになる。この作品で気弱な刑事・今泉慎太郎を演じたのは「東京サンシャインボーイズ」の盟友西村雅彦で、彼もこの作品で一躍有名になった(尤も、前作『振り返れば奴がいる』にも出演し「織田裕二を刺した役者」と言われた)。
また、同時期に「東京サンシャインボーイズ」の代表作『12人の優しい日本人』が中原俊監督によって映画化され、劇団からは相島一之、梶原善の2人が、舞台と同じ配役で出演している。
1994年頃、劇団の活動に行き詰まりを感じたため、新宿シアタートップスでの『東京サンシャインボーイズの罠』を最後に30年間の充電期間に入る。
劇団の人気が最高潮になり「チケットが取れない劇団」と言われ始めた1993年にはパルコによるプロデュース公演に参加、伊原剛志・松下由樹による二人芝居『ダァダァダァ』の演出・脚本を担当。翌年には、三谷の発案により唐沢寿明を起用したサスペンススリラー『出口なし!』の演出・脚本を担当する。それ以降も『君となら』『巌流島』『笑の大学』『温水夫妻』『オケピ!』(2001年第45回岸田國士戯曲賞受賞)『バッドニュース☆グッドタイミング』『彦馬がゆく』などのヒット作を次々生み出していく。また、松本幸四郎一家による演劇集団「シアターナインス」との共同プロデュースで『バイ・マイセルフ』『マトリョーシカ』でも脚本を担当した。現在、パルコプロデュースシリーズの中で最も新作の待たれる作家となった。ちなみに、松本幸四郎は、三谷が大河ドラマ『黄金の日日』で大河の脚本を夢見、その後『ラマンチャの男』で舞台脚本家を夢見た経緯があり、『王様のレストラン』(主題歌:『Precious Junk』平井堅)の際に、駄目元で主演を依頼して以来のつきあいとなっている。また、幸四郎自身も、三谷の脚本を高く買っているようだ。もっとも、『王様のレストラン』の出演は、娘である松本紀保が、三谷作品のファンで、彼女が強く薦めた結果らしい。
1997年には初の映画監督作品として『ラヂオの時間』を発表。多くの映画賞において絶賛を浴びる。2001年には自身の体験に基づいた「建築コメディ」とも言うべき監督第2弾『みんなのいえ』を発表。両作品共イギリスやドイツなどでも上映会が催され、多くの喝采を浴びた。
一方『古畑任三郎』以降も『王様のレストラン』『総理と呼ばないで』『今夜、宇宙の片隅で』『合い言葉は勇気』『竜馬におまかせ!』など次々作品を発表、2002年暮れには念願のシチュエーション・コメディ『HR』において、脚本だけではなく総合演出も手がけた。そして2004年に長年の夢であったNHK大河ドラマ『新選組!』の脚本を担当。三谷の意向も入れられたというそのキャスティングは賛否両論を呼んだものの、大きな話題となった。そして、2006年に、続編(大河ドラマ史上初)となる『新選組!! 土方歳三 最期の一日』が1月3日に正月スペシャルとして放送された。また同年1月3日・4日・5日には『古畑任三郎 ファイナル』も放送され、正月特番ドラマを連続して脚本した。この2つのドラマは、NHKが放送した『新選組!! 土方歳三 最期の一日』の裏のフジテレビに『古畑任三郎ファイナル』の初日(第1夜「今、甦る死」)が放送され、三谷ファン泣かせな編成になってしまった。これに関し、『古畑~』が21.5%に対し『新選組!!~』は視聴率が9.8%と振るわず、フジテレビ側は「調整が間に合わなかった」と謝罪している。
2004年10月映画版『笑の大学』(監督:星護、主演:役所広司・稲垣吾郎)公開、2004年暮れに舞台『なにわバタフライ』(戸田恵子出演の一人芝居)、2006年に公開した映画『THE 有頂天ホテル』(監督も兼任、出演:役所広司、松たか子他)、2006年に東京ヴォードヴィルショーに書き下ろした『竜馬の妻とその夫と愛人』の再演など、相変わらずの人気作家ぶりが伺える。また2005年4月より清水ミチコとの対談形式のラジオ番組『MAKING SENSE』(J-WAVE)が放送されている。さらに2005年の11月~2006年の1月にかけて、パルコ劇場プロデュース公演として「12人の優しい日本人」が再々々演された。出演は江口洋介他。この作品が、東京サンシャインボーイズ以外の出演者で上演されるのは、舞台としては初めてのことであった。
尚、『笑の大学』はロシアで上演されるなど国際的な広がりをみせており、IMDBでは少数ながらも高評価を得ている。
著作である『オンリー・ミー 私だけを』が50万部のベストセラーとなっているものの、あまり公表されていないので「ひそかなベストセラー」といわれる。
テレビ東京系の子供番組『おはスタ』で2006年1月10日〜12日の間「やまちゃん」こと山寺宏一の代役として「コーキー」の呼び名で司会出演をした。
2006年の大河ドラマ『功名が辻』(大石静脚本)では、大石に請われて役者として出演、信長に翻弄される将軍足利義昭を演じた。
2006年11月には、劇団東京ヴォードヴィルショー第61回公演「エキストラ」の脚本・演出を担当。 2007年には、伊東四朗、三宅裕司、佐藤B作による舞台「社長放浪記」の脚本(演出は三宅裕司)、芸術座の後継劇場となる「シアタークリエ」のこけら落し公演「恐れを知らぬ川上音次郎」の脚本・演出を担当することになっている。 また、第4弾監督作品のクランクインも予定されている。
[編集] 人物
子供の頃からかなりのテレビ狂であり、三度の飯よりテレビが大好きだったという。実家には今も当時使っていたテレビが残っているらしい。非常に数多くのテレビ番組に詳しく、海外ドラマ、特に『刑事コロンボ』には精通している。他にも『ドラえもん』『パーマン』『おそ松くん』などのアニメ番組や『ポンキッキーズ』『おはスタ』などの児童向け番組にも詳しい。彼が手がけたテレビドラマにも、これらの番組に使われたセリフや内容が度々登場する。また「夜のヒットスタジオ」(フジテレビ)を初期の頃から見続けた「夜ヒットフリーク」であり(この点については「スカイパーフェクTV!」の月間広報誌でもインタビューの中で三谷自らが発言している)、「ラヂオの時間」における井上順の配役の人物考証は夜ヒットでの井上のキャラクターに基づくものであるともいわれている。
少女趣味な一面があり、りぼん系の少女コミック「姫ちゃんのリボン」を読んでいる。他に「赤ずきんチャチャ」はアニメだけ見ていたらしい(これが、後に間接的ではあるが香取慎吾との出会いになっており、古畑任三郎のスマップの回では、古畑がアニメについて語っている)。
歴史マニアでもあり、小学校の同級生の一人が歴史の教科書の江藤新平の写真に似ていると思うと、彼に写真と同じような着物を着せて写真をとったという。以来、友達をモデルに幕末の志士のコスプレ写真をとり続けたというエピソードがある。
彼の作品は基本的に喜劇である。本人も「面白い話しか書けない」と言っているように悲劇やシリアスは苦手なところがある。
自身のドラマや映画では自らプレゼンターとして視聴者やマスコミの前に登場するが、その際は必ずタキシードを身にまとう(希望するBGMは布施明「君は薔薇より美しい」)。もともと三谷は一ツ橋総太郎として俳優の一面も持っている。映画のプロモートなどで頻繁にメディアに露出することから、ジェームス三木や橋田壽賀子と並んで顔が世間に知られている脚本家と言える。
仕事ぶりの方では、毎回締め切り間近に台本・脚本が仕上がるほどの遅筆で有名で、監督泣かせと言われている。舞台『巌流島』では、三谷の遅筆により台本が完成せず、予定していた公演初日が大幅にずれ込むことになり、佐々木小次郎役の陣内孝則が降板している。この時に三谷は、「今後、同様なことを起こしたら筆を折る」と宣言している。
テレビドラマの演出家には不信を持った時期があるようでかつてはドラマディレクターに対する辛辣な発言振りが目立ったが(たとえば、ドラマの現場で脚本が勝手に書き換えられるといった事など。その経験を元に作られたのが、『ラヂオの時間』である。)、それでも共同テレビの河野圭太、星護などには一定の信頼は置いているようである。
本人は神経質な性格の持ち主であり、自身の作品に否定的な意見を目にし、創作力の減退を防ぐという理由から、インターネットはほとんどみない。
気難しい性格を現す一面に、なかなか他人を家に入れないという面がある。ココリコの田中直樹にコレクションを見せると約束し、自宅を訪れた田中を玄関の外で応対し、自宅の中に招き入れることはなかった。妻小林聡美の父親(つまり義父)が、小林の外出中に訪ねてきたときも自宅に入れなかったというから筋金入りである。
[編集] 作品の特徴
作風
- ウィットやユーモアに富んだ演出による、ハートウォーミング、人間賛歌が多く、露骨な社会風刺やグロテスクな描写、きわどい台詞などは一切使わない。そうした独特の暖かみとなっており、多くのファンを魅了している。また劇中において登場するギャグはほとんどが三谷の考案によるものである。
- ちなみに、織田裕二主演のテレビドラマ『振り返れば奴がいる』は、当初コメディ色の強い作品だったが、制作スタッフが現場で勝手に脚本を書き換え、当時流行っていたシリアスな作風になってしまった経緯がある。最終的には三谷の意図とは外れ、全く別の作品になってしまうという憂き目に遭っている(この事をヒントに「ラヂオの時間」のストーリーが思いついたとされている)。
当て書き
- 三谷は自分が執筆した劇作品を、初演と違う出演者によって再演することを絶対に許可しない作家としても知られている。その理由のひとつは、全ての戯曲・台本をそれぞれの役を演じる役者への「当て書き(先に役者を決めてから、その役者をイメージしながら台本を書くこと)」として執筆していることによる(ただし、同じ役を異なる複数の役者が演じることを前提に企画されたTVドラマ『3番テーブルの客』は例外)。
- たとえば『笑の大学』は、もともと三宅裕司と坂東八十助 (5代目)に宛てて書かれたラジオドラマ脚本であるが、後に西村雅彦と近藤芳正出演で舞台化された際や、役所広司と稲垣吾郎出演で映画化された際には、そのたびごとに脚本自体を一から書き直している(ただし、ロシアで公演されているロシア語版に関してはその範囲外である)。
俳優
- 他の脚本家や監督もやることではあるが、気に入った俳優を自身の作品に積極的に起用することが、三谷には顕著に見られる。それは舞台俳優にも同じで、三谷の作品がきっかけでTVドラマに出演し、脚光を浴びるようになる俳優も少なくない。
- そして、その起用法ゆえか、三谷が監督をした映画には、普通の映画に出演すれば必ずエンディングのキャスト欄で最終に表記(いわゆるトメ)されると思われるほどの役者が多く出演しており、監督一作目の「ラヂオの時間」のエンディングでは、キャストの表示される順番が「あいうえお順(五十音順)」、三作目の「THE 有頂天ホテル」では「登場順」になっている。(注:キャスティングの「五十音順」は三谷作品に限るものではなく、昔からオールスターキャストの映画などで多く用いられた手法である。これは、当時から役者が自分の名前の表記順にこだわっていたことを示すものでもある。)
[編集] 赤い洗面器の男
三谷作品を語る上では欠かせない「赤い洗面器を頭の上に乗せた男」の小咄。これまでに複数作品の登場人物によってこの話が語られるが、誰もが最後のオチを口にしようとした途端、必ず何かしら邪魔が入って話が途切れてしまい、結末はいまだ明かされず謎のままである。詳細については、「赤い洗面器の男」を参照。
[編集] 盗作問題
2006年8月31日~9月3日にかけて、声優の櫻井孝宏が主宰する劇団joy2006が、『東京サンシャインボーイズの罠』の題名及び脚本の一部を改変して無断で上演したことが判明した。櫻井は三谷本人に直接謝罪して自身の公式サイトに謝罪文を掲載した他、9月30日から1ヶ月間、ラジオ番組への出演を自粛した(11月から復帰)。また、櫻井の所属事務所である81プロデュースも公式サイト上に謝罪文を掲載した。
なお、櫻井と三谷との間での話し合いは済んでおり、三谷側もこれ以上のアクションを起こす意向はない。
[編集] 作品一覧
[編集] テレビドラマ
- やっぱり猫が好き(第1シリーズ1988年~1990年、第2シーズン1990年~1991年、フジテレビ)
- 東京ストーリーズ「大災難の街 東京」(1989年、フジテレビ)
- 子供、ほしいね(1990年、フジテレビ)
- 天国から北へ3キロ(1991年、フジテレビ)
- 世にも奇妙な物語「息子帰る」(1991年、フジテレビ)
- 振り返れば奴がいる(1993年、フジテレビ)
- 古畑任三郎(1994~2006年、フジテレビ)
- 王様のレストラン(1995年、フジテレビ)
- 竜馬におまかせ!(1996年、日本テレビ)
- 3番テーブルの客(1996年~1997年、フジテレビ)
- 総理と呼ばないで(1997年、フジテレビ)
- 今夜、宇宙の片隅で(1998年、フジテレビ)
- 合い言葉は勇気(2000年、フジテレビ)
- HR(2002年~2003年、フジテレビ)
- 川、いつか海へ第2話・4話(2003年、NHK)
- 新選組!(2004年、NHK)
- 新選組!! 土方歳三 最期の一日(2006年、NHK)
[編集] 映画
- 12人の優しい日本人(1991年、原作・脚本)監督:中原俊
- マルタイの女(1997年、協力)監督:伊丹十三
- ラヂオの時間(1997年、原作・脚本・監督)
- 世にも奇妙な物語 映画の特別編(2000年、脚本)ストーリーテラー部分
- みんなのいえ(2001年、脚本・監督)
- 竜馬の妻とその夫と愛人(2002年、原作・脚本)監督:市川準
- 笑の大学(2004、原作・脚本)監督:星護
- THE 有頂天ホテル(2006年、脚本・監督)
[編集] 舞台
- ショウ・マスト・ゴー・オン
- 彦馬がゆく
- ラヂオの時間
- 12人の優しい日本人
- ダア! ダア! ダア!
- 出口なし!
- 君となら
- 巌流島
- 笑の大学
- バイ・マイセルフ
- 温水夫妻
- マトリョーシカ
- オケピ!
- ヴァンプショウ
- バッドニュース☆グッドタイミング
- なにわバタフライ
- 決闘! 高田馬場(パルコ歌舞伎)
- 恐れを知らぬ川上音二郎一座(2007年11月シアタークリエこけら落し公演)
[編集] 著作
- 大根性(画・藪野てんや)
- 気まずい二人
- オンリー・ミー 私だけを
- 三谷幸喜のありふれた生活
- 三谷幸喜のありふれた生活2 怒濤の厄年
- 三谷幸喜のありふれた生活3 大河な日日
- 三谷幸喜のありふれた生活4 冷や汗の向こう側
- 三谷幸喜のありふれた生活5 有頂天時代
(以上5点は、朝日新聞に連載中のエッセイをまとめたもの)
[編集] 出演作品・CM
- フジテレビ『鍵師3』(渡辺謙・小林聡美出演、車の鍵を失くした男役)
- フジテレビ『たほいや』
- NHK大河ドラマ『功名が辻』(足利義昭役)
- 映画『犬神家の一族』(監督:市川崑、那須屋ホテルの主人役)
- CM - JAL日本航空(相武紗季と共演、ちなみに三谷本人はあまり飛行機が好きではないらしい)
- CM - 富士通パソコンFM-V(木村拓哉と共演、終了)
- CM - ネスレ日本「ネスカフェ・ゴールドブレンド」(唐沢寿明と共演、終了)
[編集] 主なレギュラー番組・連載エッセイ
[編集] ラジオ
- MAKING SENSE(J-WAVE・月 - 金23:45 - 24:00)- 清水ミチコと共演。