マイクロエース
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マイクロエース(MICRO ACE 旧称:有井製作所)は、鉄道模型及びプラモデルのメーカー。本社所在地は埼玉県蕨市だが、説明書等の本社所在地ではなぜかワラビ市と書かれている。
かつてはプラモデルを主製品としていたが、現在は鉄道模型の新製品開発に経営の主軸を移して、プラモデル部門は旧製品の再生産を継続している。 2006年に、マイクロエースとしての開業10周年を迎える。
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[編集] 沿革
[編集] プラモデル
プラモデルの分野では、超時空シリーズ(マクロス・オーガス・サザンクロス)等、キャラクター模型メーカーとしてモデラーに広く認知されている。代表的な商品として、珍作キットとして一部で有名な『超時空騎団サザンクロス』のラーナ少尉などがある。
有井(アリイ)時代は世間の流行に合わせてキットを開発する傾向が強く、駄菓子屋的感覚で製品の質よりもタイムリーさを狙った物が多い。1980年代の機動戦士ガンダムブーム時にはオリジナルストーリーブック(ミニサイズの漫画)が付属した「ザ★アニメージ」シリーズ、当時CM等で話題になったエリマキトカゲやラッコといった動物、1990年の湾岸戦争直後のパトリオット/スカッドミサイルのシリーズなどをリリースしていた。
特に、1987年にフジテレビのバラエティー番組「笑っていいとも」ならびに「オレたちひょうきん族」の番組中で流行った吉永小百合の歌・「奈良の春日野」の「鹿のフン」(尻からプラスチック玉のフンを出すマンガチックな鹿の模型)は話題になる。プラモデルがガンプラ全盛期の余波で潤っていた模型メーカーに開発力があり、若年層が積極的にプラモデルを購入していた時期のエピソードである。現在の大人の趣味としてモデラー層が成熟し高年齢化した現在では、まず商品化は無理なアイテムではある。1980年代に模型を作ってきたユーザーには、果敢にユニークな商品化を遂行した有井製作所として「記憶に残る」メーカーとなった。
なお、公式HPには一切触れていないが、現在もプラモデルも継続販売している。現在の製品は、以前に倒産・廃業したメーカーから(LS、オオタキ等)購入した金型を再利用し、自社製品として発売している。代表的なシリーズとして、旧LSの1/32オーナーズクラブやワールドフェイマス1/144ジェットファイターシリーズがある。パッケージは鉄道模型とは違い「アリイ」名義のままで長らく販売されてきたが、近年から順次「マイクロエース」に変えられている。
自動車関連のプラモデルは年式の古いものは名車シリーズとして、パッケージのイラストも旧社時代のパッケージを継承しての販売。モデルのジャンルは様々で、各スケールのカーモデルをはじめ鉄道模型(HOゲージ)、船、扇風機などがある。
元となる金型が製造後20年以上経過した物が多く、年数経過によるバリや欠け、歪みなど発生している点を差し引いても「金型メンテナンス状況を改善して欲しい」と指摘されるほど製造工程上の問題が他社製品より多く見られる。インターネットのコミュニティー・一部掲示板等で「モデラーが一度は挫折を味わうメーカー」、(初心者に扱いきれないという意で)「上級者向け」等と揶揄され、模型雑誌からも「アリイスタンダード」等の婉曲的な表現で皮肉られることがある。しかし、一部ではその問題点の解決をモデラーの工作技術の腕の見せ所として、作り上げる難しさを指摘されているモデルを大幅にディティールアップして完成させるプロセスを楽しんだり、または無改造で素朴なプラモデルとしての荒削りなテイスト・雰囲気を、童心に帰ってリモコン戦車を動かせて楽しむユーザーも存在する。
現在の主力再生産プラモデル
- 1/48,1/50,リモコン戦車シリーズ
- 1/48-1/144,飛行機モデルシリーズ
- 1/24,カーモデルシリーズ(1/32オーナーズクラブ)
[編集] 鉄道模型
鉄道模型の分野では1980年に倒産した「しなのマイクロ」を傘下に収め、「マイクロクス」と改称、その後すぐに「マイクロエース」に再度改称し、Nゲージ製品の発売を行うが、1980年代半ば以降長らく新製品の発売が無く、再生産もほとんど無い休眠状態が続いていた。後に有井製作所の鉄道模型のブランド名となり、2004年6月10日に会社名自体を株式会社マイクロエースに改称した。
1990年代半ばより再び鉄道模型製品の発売を再開。自社では企画だけを行い、設計製造は中国のメーカーに委託するようになった。他の大手Nゲージメーカーが発売しない車輛を矢継ぎ早に発表、発売していく。同一形式のバージョン違いが多い(例:国鉄185系電車の試験塗装シリーズ)、車輛セットの構成車輛数が多い(4両×2の8両セット)のも特徴である。近年はキハ185系九州横断特急など、2両完結で税込1万円程度のセットや、115系3500番台湘南色などのように基本・増結の各セットを分けて発売する例が見られる。
[編集] 商品展開
製品化対象は登場したばかりの新型車両から、既に引退した非常にマニアックな車両、中には計画だけに終わった車両や空想車両(銀河鉄道999等)までをラインナップし、大手メーカーと比べると商品数、レパートリーは非常に幅広い。又、年代・車号などと特定する仕様で他メーカーと競合するような製品であっても差別化を図っている。
近年は、他社に先駆けて新型車両を製品化するよりも、マニア向けの展開にやや軸足を移している。また、基本的に生産は1回きり(事実上の限定品)で、題材を同じくする製品であっても次回生産時は列車名やナンバープレートの変更など微妙に仕様が変更されることが多い。再生産はごく一部で例外的にしか行われていないため、一部の人気商品は新品・中古ともに高額なプレミア価格、又はYahoo!などのインターネットオークションでやりとりされているケースが多いが、大手量販店ではメーカーごとに在庫の有無が店舗毎にインターネットで分かったり、通販や予約もできる。また大して売れていない量販店では在庫として抱えてしまっているところも存在する。また、最近は、昭和レトロ指向が流行っている事から熟年層・老年層・3~40代の男性層に人気がある。また、最近は、女性にも人気が高まっている。
2005年に第2号の総合カタログを発売したが、前述の理由により掲載されている商品の大半が新品市場、特に大規模店からは姿を消している。
マニアックな製品を展開しているため、「あの車両が欲しかったけど、どこも製品化していない」といった意見を持つユーザーからは歓迎されており、製品展開に期待するユーザーは多い。車両の特徴として、妻面貫通扉を塗り分けたり、他社に先駆けて製品化したE231系東海道線仕様などでは連結面の転落防止幌や車内のつり革、果ては分解しなければ見ることのできないサニタリなどを再現しているなど、異様なまでに(不要論もあり、ある意味無駄に)手が込んでいる点があげられるが、最近は新型車の早期製品化を見送っている傾向にある。
初期製品では、外観の印象把握の稚拙、リサーチ不足による初歩的かつ基本的な形状・仕様のエラー、蒸気機関車における動力ユニット形状に起因する腰高なプロポーション、および内部導光ユニットの形状に由来する違和感の強い前照灯の形状表現、と問題点が目白押しで、「マイクロエースの製品を予約で買うのは博打と同じ」といわれる程で、ユーザーや小売店の信頼を今一つ得られていない印象があった。それでも、特に蒸気機関車はC63、C52/8200、9800、4110、E10など既存製品に流用可能なものが存在しない、特殊な部品を使用するマイナーな車両の製品化が多く、「自作するよりはこれを改造した方がまだ楽だ」とする一部マニア層から熱烈な支持を受けた。
その後は開発陣のノウハウ蓄積が功を奏して製品のクオリティは順調に向上し、南海50000系「ラピート」のように比較的良好な品質の製品が増えているが、それでも京阪3000系のように形状はほぼ完璧だが微妙な色調で知られるその塗装の調色に問題があったり、近鉄20100系「あおぞら」のように特徴的なKD-43台車が異様に平板なモールドとされたり、と近年の製品でもどこかしら問題を抱えている例が少なからず存在する。
マイクロエース製品の弱点としては、モーターや台車等の補修パーツ(消耗品)を分売しておらず、全て修理扱いにしていることがあげられる。Nゲージが基本的に「走らせる模型」であることを考慮すれば、このアフターサービス体制の貧弱さは、ユーザーにとって同社製品の購入をためらわせる一因となっている。
また、駆動系の耐久性や台車の走行抵抗ではKATOおよびTOMIXの製品と比して格落ちの印象があり、特にEF64形1000番台や10系客車などの初期製品では、運転会などで長大編成を組んで走行させ続けると、客車の走行抵抗の大きさと駆動系のギアの耐摩耗性の低さから、動力車のギアが急激に摩耗して使い物にならなくなる、といった大手2社の製品ではまず考えられないような現象が発生することがあり、2005年以降の製品でも、床下のモーターカバーと線路の間のクリアランスが少ないため、レイアウトの勾配の変化点で線路とモーターが接触するといった、トラブルの原因となることがある。また中国生産モーターそのものが故障してしまうケースも見られる。
2005年にはHOゲージに進出(かつてのしなのマイクロがHOを手がけていたこともあり、正確には再進出といえる。企画名称の"Project 80"はしなのマイクロ時代に1/80スケール9・13mmゲージ製品の展開時に使われていたもの[1]の復活である)し、キハ183系を製品化した。2006年にキハ40系(北海道型)を製品化予定。
- ↑ 当時は化粧箱のラベル表記などに「ぷろじぇくと はちまる」とひらがな表記も用いられていた。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- マイクロエース(公式サイト)
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