金型
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金型(かながた、die)とは、工業製品やそのパーツをプレス加工や射出成型などにより製造する場合の型のことであり、通常は金属製であるが、金属製でないものも金型と呼ばれる。最近では金型内で塑性加工を行う主要部品では、金属に変わってセラミックスなどが使用されるケースも多いが、ボリュームとしてみるとやはり圧倒的に工具鋼の使用量が多い。
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[編集] 概要
金型は、製造業において製品などのスタイルの良否や、製品の品質を決定する重要な資産であるため、その製作に当たっては、通常多くの時間とコストがかけられている。自社で製作する場合と、専門の会社に製作を依頼することもある。特に精密部品などの金型については、マイクロメートル単位の正確さが求められる。
金型の部品を構成するスタンダードな材質は鋳鉄と、モリブデン-タングステン等で構成されているダイス鋼(高合金工具鋼)である。冷間鍛造のパンチなどには高速度工具鋼や超硬合金も多用される。鉄の殆どは焼き入れ加工を施すため、加工製品のモデルチェンジなどの際の改造に多くのコストを要するケースが多との意見もあるが、切削加工不能な超硬合金よりもコストが低く、形状の複雑さが増すにしたがってその差は開いてゆく。そのためプリハードン鋼と呼ばれ、焼き入れ不要で、ある程度硬度を持ちながら切削加工が可能な材料を使用する事があるが、これは、安易であるが鋼の特質を上手に利用しているやり方とは言えず、結果的にコスト高を招いている例が散見される。
金型は使用に伴って摩滅、変形、減耗する。これらの問題は永遠のテーマとなっている。そのため成形によって金型の表面損傷が考えられる場合はあらかじめ硬質クロムめっき、PVD皮膜処理、CVD(Tic)皮膜処理、TD処理など様々な表面処理が施される。最近では前述の様にセラミックを使用する事により耐摩耗を改善する努力がされている。しかしセラミックでは硬度が高すぎて、実際に塑性加工する材料によっては破損の危険が高い。
かつて、精密金型製造は日本のお家芸であったが、近年はコスト削減を目的に海外への製造委託が増加し空洞化の現象が見られる。特に中国は日本製NC加工機械の導入や日本の金型職人による技術指導などにより、今や日本の金型業界を脅かす存在となりつつある。
[編集] 金型の種類
金型の種類は、大きく分けて2種類存在する。成形荷重が高い金属加工を目的としたDieと、鋳造もしくは樹脂成形を目的とした比較的成形荷重が低いMoldである。また、型を閉じて中に原材料を封入する密閉型と、材料を上型下型で挟み込む開放型に分けられる。
[編集] プレス金型
開放型。主に自動車部品、家電部品の加工で使われる。大きく単型(1金型1工程)、順送型(1金型複数工程)に分かれ、ほぼ均一な厚みのものを加工するのに適している。金型内で金属材料(多くはフープ材と呼ばれる金属の板をコイル状にまとめた物)を抜き、曲げの処理を行い、ほぼそのまま組み付け可能な部品を製造する。後工程としては必要に応じ、バリ取りや表面処理(メッキ、塗装など)。
主に鉄や銅、アルミニウムを加工するが、樹脂シートの加工用金型もこれに含まれる場合もあり。
プレス金型はさらに以下のような小分類に分けられる。
- 絞り型
- 曲げ型
- 抜き型
- 寄曲型
[編集] 鍛造型
開放型。エンジンのコネクティングロッド(コンロッド)など肉厚が厚く、かつ強度が必要な製品の加工に適している。金型内の金属材料に高い圧力を加えることによる塑性変形により形状を作る。加工時の材料や金型温度により、冷間鍛造、熱間鍛造などの加工種類が存在する。鍛造後は工作機械で仕上げ加工を行う場合が特に熱間鍛造では頻度が多くなる。
[編集] 鋳造型
密閉型。自動車などのエンジンブロック、ダイカスト(die casting)部品などを作る。金型の湯口と呼ばれる開口部から溶融させた鉄やアルミニウムを流し込み成型を行う。ほとんどの場合、凝固に伴う精度誤差や鋳肌の荒れなどで鋳造後に工作機械で後加工を行う。
[編集] 射出成形型
密閉型。プラモデルや携帯電話の外装など、多くのプラスチック製品の作成で用いられている。金型を射出成形機にセットし、射出成形機により、型締め、プラスチック材料の溶融、閉じた金型の空洞部に対しての加圧注入、冷却を行うことにより形状を作る。
[編集] ブロー成形型
密閉型。空気などのガスを原材料に噴きつけて金型に押し付け、製品を作るための金型。プラスチック製品やペットボトル、ガラス瓶などの加工で用いられる。
[編集] 圧縮成形型
密閉型。自動車のタイヤなど、型に材料を入れた後、型で押し込んで製品を作るための金型。
[編集] 真空成形型
半密閉型。卵パック、プラスチック容器など、温めたシート状の材料を型にセットし、型に空けた無数の穴から中の空気を抜き、 大気圧で型に押し付け製品を作るための金型。
[編集] 押出金型
半開放型。窓枠、サッシのレールなどの長尺物の成形を行う。アルミやプラスチックなどの母材を目的形状の断面を持つダイに対し押し付け、均一断面の長尺製品を作成する。この分野は、1995年以降ほとんど技術の高度化は見られていない。
[編集] 金型の管理
金型は、製造業者が自社工場で使用する場合のほかに、外注工場に貸し出しを行うこともある。この金型を、発注者からみて、預け金型と呼び、金型台帳などで管理する。量産に使用する金型は通常、普通の加工設備と同様に固定資産として管理