ボレロ (ラヴェル)
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ボレロ(Boléro)は、モーリス・ラヴェルの作曲したバレエ音楽である。初演は1928年11月22日にパリオペラ座で行なわれた。特徴的な構成を有しており、現代でもバレエの世界に留まらず広く愛される音楽の一つである。
目次 |
[編集] あらすじ
セビリアのとある酒場。一人の踊り子が、舞台で足慣らしをしている。やがて興が乗ってきて、振りが大きくなってくる。最初はそっぽを向いていた客たちも、次第に踊りに目を向け、最後には一緒に踊り出す。
[編集] 楽器編成
[編集] 楽曲
この曲は、バレエ演者のイダ・ルビンシュタインの依頼により、スペイン人役のためのバレエ曲として制作された。当初、ラヴェルはイサーク・アルベニスのピアノ曲『イベリア』をオーケストラ用に書き直そうと考えていたが、その権利は既に弟子のファーディナンド・エンリケ・アルボスが所有していた。ラヴェルの意図を知った彼は「望むなら権利を譲りましょう」と打診したが、ラヴェルはそれを断って一から書き起こしたのがこの曲である。一般的な演奏では、この曲の長さは15分程度である。
この曲は、次のような特徴を持つ。
- 最初から最後まで(最後の2小節を除く)同じリズムが繰り返される。
- 最初から最後まで1つのクレッシェンドのみ
- メロディもA、B2つのパターンのみ
これだけを見ると極めて単調なように思われるが、実際の演奏は非常に豊かな色彩をみせる。曲は、スネアドラムによる後述のリズムが刻まれる中、フルートによって始まる。フルートはAの演奏を終えるとスネアドラムと同じリズムを刻み始め、代わってクラリネットがAのメロディーを奏でる。このように、次々と異なった楽器構成によりメロディーが奏でられ、メロディーもリズムも次第に勢いを増していく。そして最後には、フルート、ピッコロ、オーボエ、オーボエ・ダモーレ、コーラングレ、クラリネット、ファゴット、コントラファゴット、ホルン、トランペット、ピッコロトランペット、トロンボーン、チューバ、チェレスタ、ハープ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、スネアドラム、ドラムという大編成で、フルート単独の時と同じメロディーが奏でられる。圧倒的な重厚さ(並行3度や5度を組み合わせたりもしている)でA、Bのメロディーを演奏すると、曲は初めてA、Bのメロディーを離れた旋律に移り、音量も最高潮を迎えた直後、最後の2小節で下降調のコーダで収束し、終焉を迎える。
単純な構成とそこから醸し出される豊かさとから、この曲は人気があり、様々な場面で使われている。1984年に行なわれたサラエボオリンピックフィギュアスケートのアイスダンスでは、イギリスのトービルとディーンのペアがこの曲に合わせて演技を行ない、オリンピック史上初めて9人の審判全員から6点満点を得て金メダルを獲得した。
自筆スコアの研究では「ボレロ」は(作曲者自身にゆかりのある)スペインの民族舞踊であるにも関わらず、トライアングルとカスタネットが作曲過程で抹消された上、作曲者自身が立ち会った録音は総譜の指示あるいは舞踊としての「ボレロ」よりテンポが遅いものばかりで、指揮者のトスカニーニの実演に接したラヴェルはそのテンポの速さに激怒し、トスカニーニと口論にまでなったという。少なくとも「ボレロ」でのラヴェルの姿勢は、一切の具象から忌避するものであった。
[編集] 基本リズム
基本リズムは以下のようになっている。 [音:サンプルmidiファイル]! ?
このリズムを、小太鼓(スネアドラム)が、最初から最後まで同じテンポで演奏する。
[編集] メロディと音色の構成
[編集] メロディの構成
メロディはパターンA [音:サンプルmidiファイル]! ?とパターンB [音:サンプルmidiファイル]! ?がある。 この2つのパターンが、以下のように繰り返される。
- AABB の組が4回繰り返し。
- Aを1回演奏。
- B'を1回演奏。
- ここでB'とは、Bのメロディの後半部分がコーダになっているものである。
[編集] 楽器の組み合わせ
メロディを奏でる楽器は以下のように変化する。なお、数字はA/Bの両パターンを 通しで振っている。
- 第一フルート
- 第一クラリネット
- 第一バスーン
- ソプラニーノクラリネット
- オーボエ・ダモーレ
- 第一フルートと第一トランペット
- テナーサキソフォン
- ソプラニーノサキソフォン→ソプラノサキソフォン
- ピッコロ(2管)とホルンとチェレスタ
- オーボエとコーラングレとクラリネットとフルート
- 第一トロンボーン
- フルートとピッコロとオーボエとコーラングレとクラリネットとサキソフォン
- フルートとピッコロとオーボエとクラリネットと第一バイオリン
- フルートとピッコロとオーボエとコーラングレとクラリネットとテナーサキソフォンと第一バイオリンと第二バイオリン
- フルートとピッコロとオーボエとコーラングレとトランペットと第一バイオリンと第二バイオリン
- フルートとピッコロとオーボエとコーラングレとクラリネットとトロンボーンとソプラノサキソフォンとテナーサキソフォン
と第一バイオリンと第二バイオリンとヴィオラとチェロ
- フルートとピッコロとトランペットとサキソフォンと第一バイオリン
- フルートとピッコロとトランペットとトロンボーンとサキソフォンと第一バイオリン
[編集] オルガンから借用した手法
曲中、旋律が完全に並行音程で重ねられている箇所が何度も登場するが、オーケストラの中で非常に新鮮に響くこの効果は、パイプ・オルガンで日常的に使用される倍音の組み合わせを採り入れた手法と言われている。パイプ・オルガンにおいては、実際に奏する鍵盤にとって倍音関係にある音の発音されるパイプ群が並行音程を保って装備されており、それらを自在に組み合わせることによって種々の倍音構成を特徴づけるという技術は、パイプ・オルガンにおいて複雑な音色を生み出す常套手法である。上記9.箇所においては、ホルンの実音が基音とみなされ、それに対して第2倍音をチェレスタが、第3倍音をピッコロが、第4倍音をチェレスタが、第5倍音をピッコロが、それぞれの楽器の実音によって重ねられることで輝かしい音色が生み出されている。実際のパイプ・オルガンにおいての例としては、ストップを8' + 4' + 2 2/3' + 2' + 1 3/5'の組み合わせによってホルンパートを奏すると、実際と全く同じ音の組み合わせができあがる。また、それらをもっと高次倍音とみなして別の組み合わせで同じ効果をもたらすこともできる。詳しくはストップを参照。
[編集] 編曲
- 作曲者自身による2台ピアノ用編曲、連弾用編曲
- 冨田勲によるシンセサイザー用編曲
- スイッチトオンボレロ
- ジェフ・ベックによるギター用編曲
- ラリー・コリエルによるギター用編曲
- 押尾コータローによるギター用編曲
- 池辺晋一郎による和楽器用編曲
[編集] その他
- 2代目ホンダ・プレリュード(1982年~1987年)のCMで使用。
- mihimaru GTが『帰ろう歌』でサンプリング。
- アニメ『クレヨンしんちゃん』(テレビ朝日系)の酢乙女あいの幼稚園通園シーンで使用(初期)。
- 『デジモンアドベンチャー』シリーズの劇中で使用。
- 『TVチャンピオン』(テレビ東京系)の優勝者決定時BGMとして使用。
- 映画『交渉人 真下正義』(2005年)劇中で使用。
- 『銀河英雄伝説』パイロット版(劇場用アニメ)『我が征くは星の大海』(1988年)で使用(クライマックスの戦闘シーン)。
- クロード・ルルーシュ監督の映画『愛と哀しみのボレロ』(1981年)で使用。
- ブライアン・デ・パルマ監督の映画『ファム・ファタール』(2002年)で、デ・パルマ監督の要望で、坂本龍一が本作を意識して『ボレリッシュ』(ボレロ風)という曲を作曲し、それがテーマ曲として使用された。
- Gacktのライブにおいて開演前の会場内BGMとして使用されている。
- STARHORSE2 SECOND FUSIONにおいて、凱旋門賞のベット時BGMとして使用されている。
- 『行列のできる法律相談所』%が出る所のBGMとして使用。
- 村主章枝が2006-2007シーズンのショートプログラムで使用。