フェニルアラニン
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フェニルアラニン | |
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一般情報 | |
系統名 | (S)-2-アミノ-3-フェニルプロピオン酸 |
略号 | Phe, F |
分子式 | C9H11NO2 |
分子量 | 165.19 g/mol |
SMILES | C1=CC=C(C=C1)CC(C(=O)O)N |
CAS登録番号 | [63-91-2] |
性質 | |
融点 | 283 ℃ |
溶解性 | ギ酸に易溶、水にやや難溶 エタノールに不溶 希塩酸に可溶 |
水への溶解度 (g/100 g) |
2.74 (20 ℃) 3.77 (40 ℃) 5.20 (60 ℃) |
pKa | 2.20 9.09 |
等電点 | 5.48 |
ファンデルワールス体積 | 135 |
密度 | 1.29 g/cm3 |
味 | L体: 苦(閾値 1.5 mg/mL) D体: 甘 |
出典 | {{{出典}}} |
フェニルアラニン (phenylalanine) はアミノ酸の一種で、側鎖にベンジル基を持つ。略号は Phe または F。アラニンの側鎖の水素原子が1つフェニル基で置き換えられた構造を持つことが名称の由来である。室温では白色の粉末性固体である。
蛋白質構成アミノ酸で、必須アミノ酸の1つ。非極性側鎖アミノ酸で、芳香族アミノ酸。糖原性を持つ。
他のアミノ酸と同じく、D体とL体の2つのエナンチオマーを持つ。L-フェニルアラニン (LPA) は天然に存在する化合物であり、DNAによってコードされ、蛋白質を構成する。D-フェニルアラニン (DPA) は化学合成によって人工的に作り出される化合物である。
L-フェニルアラニンは生体内で L-チロシンに変換され、さらに L-ドーパとなる。これがさらにドーパミンやノルエピネフリン、エピネフリンへと誘導される。D-フェニルアラニンはフェネチルアミンに変換されるのみである。
フェニルケトン尿症では、このフェニルアラニンをチロシンに変化させる酵素、フェニルアラニン-4-モノオキシゲナーゼ (EC 1.14.16.1) の遺伝子の完全欠損により、血中にフェニルアラニンが異常に蓄積される。そのためフェニルアラニンの摂取を控えねばならない。シュガーレスガムなど多くの食品に含まれ、「フェニルアラニンを含む」旨の注意書きが表示されている。実際にはフェニルアラニンそのものが添加されているわけではなく、体内で分解されてフェニルアラニンを生成させる化合物を含む場合にこの表示が付される。例えば甘味料のアスパルテームは加水分解によってフェニルアラニン、アスパラギン酸、メタノールとなる。
コドンの中ではフェニルアラニンのものが最初に発見された。マーシャル・ニーレンバーグ (Marshall Warren Nirenberg) が発見者である。連続したウラシルからなる mRNA をバクテリア E. coli に挿入すると、そのバクテリアはフェニルアラニンのみを繰り返し単位とする新規な蛋白質を生産することを見出した。
フェニルアラニンは血液脳関門を通過する際にトリプトファンと同じチャネルを使用しており、大量に存在するとセロトニンの生成を阻害する。
合成によって作り出されるラセミ体の DL-フェニルアラニン (DLPA) はサプリメントとして利用される。DLPA は慢性疼痛やうつ病、あるいは月経前症候群による情緒不安定に有効な場合があるとされる。また、ADHD(注意欠陥多動性障害)の発症者の活力や注意力・集中力を増進させるという調査結果がある。
[編集] 生合成
動物はフェニルアラニンを体内で作り出すことができないため、食物から摂取する必要がある。植物や大部分の微生物においてはシキミ酸経路によってプレフェン酸から生合成される。
プレフェン酸が脱炭酸されると同時にヒドロキシ基を失い、フェニルピルビン酸となる。これがグルタミン酸を窒素源とするアミノ基移動を受け、フェニルアラニンと α-ケトグルタル酸を与える。
蛋白質を構成するアミノ酸 |
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アラニン | アルギニン | アスパラギン | アスパラギン酸 | システイン | グルタミン | グルタミン酸 | グリシン | ヒスチジン | イソロイシン | ロイシン | リシン | メチオニン | フェニルアラニン | プロリン | セリン | スレオニン | トリプトファン | チロシン | バリン |
アミノ酸発酵 | 必須アミノ酸 | ペプチド | タンパク質 | コドン |