インド料理
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一般にインド料理(いんどりょうり)と呼ばれるものは、次のように大別できる。
- インドで作られ食べられている料理の総称。一般に多彩なスパイスを使うことが特徴とされる。その種類は地域・民族・宗教などによって多種多彩だが、大別して北インド料理と南インド料理に分けられ、それぞれ菜食料理(ヴェジ)と非菜食料理(ノンヴェジ)に分けられる。
- カレー粉を加えただけの料理。インドで食べられているとの誤解の元に「インド料理」とされる類のもの。しかし、これはむしろカレー料理とでも呼ぶべきものであり、この記事では扱わない。
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[編集] 分類
[編集] 北インド料理
チャパーティー(चपाती)、ナーン(नान)、ローティー(रोटी)といったパン類を主食とし、牛乳やダヒー(दही :ヨーグルト)、パニール(पनीर :チーズ)、ギー(घी :澄ましバター)などの乳製品を多く使うといった特徴がある。香辛料には、クミン、コリアンダー、シナモン、カルダモンなどがよく用いられる。米料理には香り高いバースマティー種の米が珍重される。ムスリム(イスラム教徒)の影響が強い。日本をはじめ世界のインド料理レストランと呼ばれる飲食店で食べることができるのは主に北インド料理で、特にパンジャーブ料理とムガル帝国の宮廷料理の影響が大きい。 日本では一般的なナンであるが,インドでは高級な食材であり大衆食ではなく、むしろ常食されるのは小麦の全粒粉を用いた無発酵のチャパティやロティである。日本のインド料理店でナンがよく使われるのはタンドリーを使うことにより調理時間が短縮できるためである。
[編集] 南インド料理
米飯を主食とし、乳製品よりもココナッツミルク(नारियल का रस)を多用する。また香辛料の種類も北に比べて独特のものを使うことが多く、例えば北インドでクミン(ज़ीला)を使うような場合に南インドではしばしば黒からしの種(सरसों का तेल)やカレーリーフを用いる。油はギーよりもからしや胡麻の油が多く使われる。ヴェジタリアンが多いため肉を使わず野菜を中心とした料理が発達しているが、一方で魚を使った料理も多彩である。北が長粒種のインディカ米を使うのに対し、南のものは丸く、外見は日本の米に近い。日本の米のような粘りは少なく比較的パサパサの状態で供される。さらに油も北ほど多く使わずあっさりしていることもあり、より日本人の口に合うとも言われる。正餐は水で清めたバナナの葉に盛られ、サンバールとご飯、ラッサムとご飯、ヨーグルトとご飯の順に供され、これに数種の副菜、アチャール、チャツネをつけあわせる。
[編集] ベンガル料理
インドのベンガル地方およびバングラデシュで食べられている料理。ベンガルカレーなどがある。フェンネルシード、ニゲラシード、フェヌグリーク、黒からしの種、クミンを合わせたパンチ・ポロン(panch phoron)という香辛料のミックスを風味づけによく用いる他、白い芥子の実(ポスト posto)をしばしば煮込み料理やチャトニなどに用いるのが特徴。淡水魚はカーストを問わず非常に人気があり、スープ(ジョル jhol)にしたり、ダール(小粒の豆類)と一緒に煮込んだりする。他の名物に、苦味のある野菜の煮物「シュクト」(shukto)または「シュクタ」(shukta)とフレッシュチーズ(チェンナ、chhenna)を用いた菓子(チャムチャム chômchôm、ラショゴッラ rôshogolla、シャンデーシュ shôndesh他)などがある。
[編集] 菜食料理(ヴェジ)
戒律上、ヒンドゥー教徒のうち上位カーストの者やジャイナ教徒などは肉食しないため、インドではそうしたヴェジタリアンのための料理が古くから発達している。ヴェジの料理はいっさいの動物の肉や動物を殺して得られる食材(脂、ゼラチンなども含む)を使用せず、卵も使わない。ただし動物由来であっても、乳製品などは動物を傷つけることがないので、むしろ多用される。さらに各種の豆類、穀類、ナッツなどが多く使われ、一般的にイメージされている質素でローカロリーな「菜食」という言葉からのイメージよりも非常に多彩で豪華である。街のレストランではヴェジとノンヴェジの席は明確に分けられており、両者が同席することはない。
ジャイナ教徒の一部敬虔な信者は、植物であっても葉、茎、豆だけを食べ、ニンジン(ग़ाजल)やダイコン(मूली)、ニンニク(लहसुन)、タマネギ(प्याज़)、芋などの根の部分を食べない。これは「土中の虫などの生き物を殺さないため」ということが一つ(同様に、蜂を殺す危険の大きい蜂蜜なども摂らない)。さらに「その部分が“体”にあたる」という考え、つまり枝葉ではなく本体部分を殺すことにつながるとの考えから、出来得る限り植物さえも殺生することを避けることによる。
[編集] 非菜食料理(ノンヴェジ)
ヴェジの制約を受けないノンヴェジの料理にも多くのものがある。ただし戒律上、すべてのヒンドゥー教徒は神聖なものとして牛を食べず、すべてのムスリム(イスラム教徒)は不浄なものとして豚を食べないので、一般にそれらの肉は使われない。普通にビーフカレーやポークカレーを食べる日本の感覚とは大きく異なる。以上のような事情で、ノンヴェジの料理は鶏肉、羊肉、山羊肉、魚介類などが主な食材となる。中でもチキンは高級品。マトンはムスリム料理として普及している。加えて北インドと南インドでは調理法も異なるため、タンドゥーリ・チキン(तंदूरी चिकन)一つをとっても水気の少ないシチューに似たウェットタイプと焼き鳥に近いドライタイプがあるなどして多彩である。
[編集] 「カレー」と呼ばれるもの
「インド人は毎食カレーを食べている」などと言われるが、これは偏見。日本人がカレーとして思い描くものとインドで食べられるそれとは大きく異なる。インドで作られる多くの料理のうち汁物や炒め物の類を総称してcurryと呼び始めたのは西洋人の勘違いによる。その語源には諸説あるが、おそらくタミル語のkaRi(食事)あたりであろう。インドでは食材や調理法によってそれぞれの料理に個別の名前が付いており、それらをまとめてカレーと呼ぶことはない。ただし英国人がそれらをcurryと呼ぶことにより、一部の料理の英語名が「○○カリー」のように呼ばれ定着した事実もあるので、「インドには『カレー』などというものはない」とも言えないのが実情である。主に海外に所在するインド料理店などでは、インド出身者が経営するものですら、便宜のためか汁物・炒め物類の総称として「(香辛料名)カレー」と表記しているものがほとんどである。
[編集] 「浄」と「不浄」
一般的なインド人の感覚として、右手は「浄」、左手は「不浄」のものとされる。そこで食事中に直接料理に触れるのは右手のみであり、調理された食材の触感を楽しむためスプーン・フォーク・ナイフ等の使用は基本的に嫌う。左手はトイレで用を足し処理するためにも使われるため、せいぜい皿や水のグラスの外側に触れる程度に限られる。伝統的な作法ではスプーンや箸などを使わず、右手で直接パン類をちぎって汁物に浸すか、御飯を汁と混ぜて口に運ぶことになる。その際、親指・人差し指、中指までの指先の第二関節までを使うのがより上品とされ、傍目で見ていてもエレガントである。ただし都会の人間は西洋化を好み、スプーンやナイフを使うのにも抵抗がない傾向にある。また、ゆで卵の殻をむくときなど、どうしても両手を使わざるを得ない場合は両手を使うようである。
浄・不浄の感覚は他にも徹底されており、揚げたり炒めたりする料理が多いのもインド料理の特徴である。これは、油で調理することでより浄化されるという観念から。また食器に磁器・陶器よりも金属製のものが好んで使われるのも、土からできた前者よりも後者のほうが、より清浄であるとの考えからである。
[編集] 食材と料理
- パニール - 乳蛋白を酸(レモン汁、ライムの汁、乳精など)で凝固させ、豆腐状に押し固めた、発酵させないフレッシュチーズ。パニールを使った多くの菜食料理がある。
- ダヒー(カード) - インドで作られるヨーグルトの一種。そのまま食べる他、ラーイターやラッスィー、煮込み料理などに用いる。
[編集] パン
- チャパーティー - 「アーター」(आटा)と呼ばれる小麦の全粒粉で作る無発酵の薄焼きパン。茶色く、平たい。北インドでは最もポピュラーな主食である。
- プーリー(पूरी) - チャパーティーを油で揚げたもの。揚げたては碁石状に大きく膨らんでいる。
- ナーン- 醗酵させた小麦粉の生地を木の葉状に焼いたパン。タンドゥールと呼ばれる窯で焼くのが正式のタンドゥーリー・ナンだが、オーブンで焼くこともある。
- ローティー - 広義にはインドのパン類の総称。ただし同じ名称で、地域により様々な種類のパンを指す。中でも多くの場合、ナンと同じ生地を円盤状に焼いたものを言う。
- パラーター(पराठा) - パロータ/パラタともいう。油を練り込んでパイ生地のようにして焼いたもの。
[編集] 御飯
- チャーワル(चावल)- いわゆる白米の御飯。もともと粘り気が少ない品種を、日本のように炊くのではなく茹でこぼすので、非常にあっさりしている。
- プラーオ(पुलाव) - 味付けをした御飯。ピラフと同語源。白米と同様、汁や炒め物と混ぜて食べる。
- ビリヤーニー (बिर्यानी)- 具の多い炊き込み御飯。汁と混ぜずにこれ単体で食べることもある。日本でいう赤飯のように祝い事の際に食べる料理で、食べる前にナッツ、ドライフルーツ、着色料、バラの花弁、ヴァルク(varq)と呼ばれる食べられる銀箔などで美しく飾り立てることもある。北インドではバースマティー種の米が好んで用いられる。
[編集] 野菜料理
- アチャール(अचार) - 青いマンゴー、ジャックフルーツ、レモンなどをスパイス、油などで日干しし漬け込んだピクルス。
- サンバール(संबार/சாம்பார்) - キマメ(मसूल)と各種の野菜をスパイスと一緒に煮込んだもの。南インドでよく食べられる。日本でいえば味噌汁のような存在。
- ラッサム(रसम) - トマトベースの辛さと酸味の効いたスープ。
[編集] 肉料理
- タンドゥーリ・ムルグ(tandūri murgh तंदूरी चिकन)鶏肉に予め作ったタレ(スパイス、ヨーグルト、塩など)を付けて、タンドゥールという壷釜で焼いた香ばしい鶏料理。(骨付き・骨なし両方有り)外食では、添え付けに、ミント風味ヨーグルトと玉葱スライスが出される事が多い。
- シーク・カバーブ(सीख़ कबाब)
[編集] 飲物
- ラッスィー(लस्सी) - ダヒ(ヨーグルト)がベースの飲物。
- チャーイ(चाय) - 紅茶。狭義にはインド式に茶葉を煮出して作るスイート・ミルクティー。しかし高級な店やホテルではイギリス式に供されることも多い。マサーラー・チャーイは基本のチャーイに各種スパイスを加えたもの。
- インディアンコーヒー - 南方で好まれるインド風のカフェ・オレ。チャーイと同様にスパイスを加えても飲まれる。
[編集] スナック(北インド)
- サモーサー(समोसा) - 野菜の炒め煮を小麦粉の皮で三角形に包み、揚げたもの。
- パコーラー(पकोड़ा) - 天ぷら、もしくはフライ。衣には小麦粉にひよこ豆の粉、スパイスが混ぜられる。具材に使われるのは野菜が主で、かきあげ状のこともある。
[編集] スナック(南インド)
- ドーサ(डोसा/தோசை) - ケツルアズキと米の粉を水で溶いたものを半日程度醗酵させ、鉄板でクレープ状に薄く焼いたもの。穏やかな酸味がある。野菜のスパイス炒めを中に巻いたものはマサラ・ドーサと呼ばれる。
- イドゥリー(इडली/இட்லி) - ドーサと同じ粉で作った蒸しパン。
[編集] インド料理研究家
- 香取薫
- クマール・ニティ
- ハリ・オム
- ミラ・メータ
- レヌ・アロラ
- 渡辺玲
- マドゥール・ジャフリー Madhur Jaffrey