アフリカ系アメリカ人
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アフリカ系アメリカ人(英:African-American、アフリカン・アメリカン、アメリカ黒人)とは、19世紀半ばの南北戦争以前にアフリカ(サハラ以南のブラックアフリカ)からアメリカに強制連行された黒人奴隷の子孫の呼称で、アフリカ北部のアラブ系のアフリカ人をルーツに持つものは含まないのが一般的。アフロ・アメリカンとも言う。奴隷として連れて来られた際は出身集団や民族集団が異なっていたが、奴隷制度によって民族・文化的なつながりが乏しくなり、また、長い年月によって混血も進んでしまったため、民族集団ではなく、アメリカ合衆国に在住する黒人の人種コミュニティとして度々用いられる(米国内の黒人人種比率: 12.9%、2005年)。
なおアフロヘアーは、彼らの民族的アイデンティティーを主張する表現のひとつとして生まれた髪型である。
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[編集] 概要
以前は「ニグロ」(negro、ニガー - nigger)などとも呼ばれたが、これは1960年代の公民権運動以来差別用語とされている。 その一方、アフリカ系アメリカ人男性同士の人類同胞主義の表現として「ニガ(nigga)」が使われる事も多々あり、その傾向は特にラップ音楽において顕著である。しかし日本人などの黄色人種や白人系アメリカ人を含め、アフリカ系アメリカ人以外の者達がこの表現を使う事は差別的言動とみなされる。
移民大国のアメリカには、現在に至ってもアフリカ、中南米やカリブ海諸国から黒人の移民がやってくる。しかし、彼等はアメリカによってアフリカから連れて来られた黒人奴隷の子孫でない(中南米やカリブ海諸国から来た場合はスペインやフランス、イギリスなどにより連れて来られた黒人奴隷の子孫である)ことから、アメリカ国籍を持っていない場合は、「アフリカ系アメリカ人」という呼び名は当てはまらないのではないかという指摘もある。例えばコリン・パウエルはアフリカからジャマイカを経由しアメリカに来た移民の子供であり、カリビアン・アメリカンが正当な名称であるが、実際にはアメリカ国籍を持ちアフリカにルーツを持つ場合は、アフリカ系アメリカ人と呼ばれているのが現実である。
[編集] アフリカ系アメリカ人の歴史
アメリカ合衆国の歴史も参照
イギリス植民地時代からアメリカ独立初期にかけて、アフリカから奴隷として連れてこられた人たち「参考ページ:黒人奴隷クンタの20年間 =「世界商品」の生産と黒人奴隷制度=」の子孫で、南北戦争で奴隷制が廃止されて以後も、政治的、人権的な権利の制限はつづいた。
南北戦争で奴隷制度の撤廃を目指す北部が勝利した後、かなり以前から奴隷制度を禁止していた北部ではアフリカ系アメリカ人に対する差別意識は比較的薄く、ニューヨークやシカゴではアフリカ系アメリカ人の市長が誕生した前例がある。しかし、長いことアフリカ系アメリカ人奴隷の労働力に依存した南部では、アフリカ系アメリカ人に対する差別意識が強く残り(ジム・クロウ法)、アフリカ系アメリカ人に対しアメリカ全土で法の下の平等が保障されるのは、1960年代の公民権運動を待たなければならなかった。なお奴隷制度廃止後、奴隷から解放されて自由になったアメリカ黒人の自由の国として建国されたリベリアと言う国がアフリカは西アフリカにある。
また、第二次世界大戦においては、人手不足からアフリカ系アメリカ人も軍人として戦争に参加することになった。当時「民主主義の武器庫」を自認していたアメリカであったが、「民主主義」という言葉とは裏腹に、大戦中に将官になったアフリカ系アメリカ人が1人もいないばかりか、実際の戦闘に参加したものはわずか5%のみで、残りの殆どが後方支援業務に就かされるなど、参戦によっても差別は解消できなかった。
1950年代以降、マーティン・ルーサー・キングなどを指導者に、アフリカ系アメリカをはじめとする被差別民族に対する法的平等を求める公民権運動が盛り上がりを見せる。その結果、1964年7月2日に法の下の平等を規定した公民権法(Civil Rights Act)が制定された。
しかし法的な差別が撤廃され、それがゆえに「自由で平等な国家」であることを標榜する現在においても、白人がその多数を占めるアメリカ社会での少数派(現在約20%)である黒人に対する差別意識は根強く残り、白人に比べれば遥かに低学歴な貧困層が多い。
現在、ハーレムといった黒人社会において質の高い公教育を提供する行政実験が行われおり、特別な家系ではない黒人の子女がハーバード大を代表とする多くの名門校に進学する実績を挙げつつある。
[編集] 著名な人物
[編集] 政治家・政治活動家
- マーティン・ルーサー・キング
- ローザ・パークス
- マルコムX
- ジェシー・ジャクソン
- コリン・パウエル
- コンドリーザ・ライス
- ヒューイ・P・ニュートン
- ボビー・シール
- フレデリック・ダグラス
- W・E・B・デュボイス ・・・ほか多数
[編集] 作家
- ジェイムス・ボールドウィン
- ラングストン・ヒューズ
- リチャード・ライト
- ニッキ・ジョヴァンニ
- トニ・モリスン
- ドドスン
- アレックス・ヘイリー ・・・ほか多数
[編集] 俳優
- シドニー・ポワチエ
- モーガン・フリーマン
- ウーピー・ゴールドバーグ
- デンゼル・ワシントン
- サミュエル・L・ジャクソン
- バーニー・マック
- ドン・チードル
- ジェイミー・フォックス
- クィーン・ラティファ
- エディ・マーフィー ・・・ほか多数
[編集] 歌手・演奏家
- マイケル・ジャクソン
- ジャネット・ジャクソン
- チャック・ベリー
- レイ・チャールズ
- サミー・デイヴィスJr.
- マイルス・デイヴィス
- ジミ・ヘンドリックス
- スヌープ・ドッグ
- ウィル・スミス
- ルイ・アームストロング
- クインシー・ジョーンズ
- ジェームス・ブラウン
- カニエ・ウェスト
- ドクター・ドレー
- アイス・キューブ
- スコット・ジョプリン
- アート・ブレイキー
- スティーヴィー・ワンダー
- カーティス・メイフィールド
- マーヴィン・ゲイ ・・・ほか多数
[編集] スポーツ
[編集] 映画
- 「マルコムX」 -スパイク・リー監督によるマルコムXの自伝映画
- 「ドゥ・ザ・ライト・シング」Do the Right Thing
- 「モ・ベタ・ブルース」Mo' Better Blues
- 「ミシシッピー・バーニング」Mississippi Burning
- 「ソウル・フード」 -ヴァネッサ・ウィリアムス主演
- 「ブルース・イン・ニューヨーク」 Lackawnna Blues
- 「ジュース」 Juice
- 「メナス・トゥ・ソサイアティ」 Menace Ⅱ Society
[編集] レファレンス
- 『アンクル・トムの小屋』(ストウ夫人)
- 『風と共に去りぬ』(マーガレット・ミッチェル)
- 『アメリカ合州国』(本多勝一)
- 「ルーツ」(アレックス・ヘイリー原作の小説。および、それを原作とするアメリカABC放送制作ドラマ)