人種
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人種(じんしゅ)は身体的な特徴からホモ・サピエンス(人類)を分類したもの。人種間での混血は可能なため、生物学的な種は、すべて同一である。すなわち自然科学上はさほど有効な概念ではないということである。
歴史的には19世紀にドイツのヨハン・フリードリッヒ・ブルーメンバッハによって分類がなされ、その後1950年代から、コーカソイド、モンゴロイド、ネグロイド、オーストラロイドといった分類がなされてきた。
しかしながら最近では、これらの分類が人種差別思想に少なからず影響を及ぼしたこと、同じ人種が必ずしも同じ文化を所有していないことなどの問題があり、遺伝学が進歩したことも加わって、現在では人種と言う分類法は否定される傾向にある。
また、人種間の優劣(とくに身体能力、知的能力)について公に議論することは、人種差別につながりかねないことからタブーとされている。
[編集] 世界の肌の色
カナダからアメリカ北部、西欧、東欧、西アジア、ロシアにかけては、白色から赤褐色が目立つ。東アジアから日本にかけては白色から赤褐色から黄色が目立つ。イスラム圏、インド北部、アメリカ南部、メキシコには、黒色から黄色、オーストラリアには白色と黒色、アフリカは黒色、南アメリカ大陸は黄色から黒色、そのほか東南アジアには黄色から黒色が目立つ。
これまで、肌の色など形質的な違いが人種を決定付けるものとみなされてきたが、最近の遺伝子研究で、肌の色と人種とは必ずしも関連性はないことが明らかになりつつある。例えば、メラネシアやインド南部などのアジア・太平洋地域にもかなり肌の色が濃く、形質的にネグロイドに似ている人たちが住んでいるが、遺伝的にはアフリカのネグロイドよりもはるかに日本人に近く、モンゴロイドに分類されるべきことなどが明らかになっている。
[編集] 人種に対する間違った認識
日本では「人種」と「民族」という言葉の意味が混同されていることが多く、間違った認識が多く存在する。以下が、典型的な例である。
- ユダヤ人
- ユダヤ人は人種の名称の一つであると誤解されていることがある。しかし、実際にはユダヤ人は数多くの人種の混血であり、ユダヤ文化を共有する民族の総称にすぎない。
- 日本人
- 日本人の由来に関しては様々な説がある。基本的に、日本固有の人種などというものは存在せず、日本人は、シベリア、朝鮮半島、中国大陸、東南アジアなどから移住してきた様々なモンゴロイドの混血であるという説が有力とされている。
- アフリカ系
- アフリカ大陸の住人は、周囲の自然環境の影響から肌が褐色であることが多いため、総じてネグロイドであるという誤解を持たれていることがある。しかし、実際には北アフリカ(チュニジア、モロッコ、アルジェリアなど)の住人は人種的にコーカソイドの特徴を強く受け継いでおり、また長年に渡りネグロイドとコーカソイドとの混血が進んでいるため、サハラ砂漠周辺からエチオピア、ナイジェリア、ケニアなどかなり南の地域に至るまで両者の特徴を併せ持つタイプがみられる。逆に近隣のアラビア半島をはじめとする西アジアにも古くから人の往来があったため、ネグロイド的な特徴を持つ住人が少なからず居住している。