NeXT
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NeXT Computer Inc.(NeXTコンピュータ社)は、現アップルコンピュータのCEOであるスティーブ・ジョブズが、1985年にアップルコンピュータを辞めて創立した会社。NeXTは、NeXT Computer社によって開発・発売されたワークステーションの名称。1996年にアップルコンピュータに買収された。
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[編集] 系譜
- NeXTcube (モトローラ MC68030 25MHz ) 10インチ四方のキューブ型
- NeXTcube (モトローラ MC68040 25MHz ) CPUがアップグレードされたモデル。
- NeXTstation (モトローラ MC68040 25MHz ) ピザボックス型。
- NeXTstation Color (モトローラ MC68040 25MHz ) カラー表示モデル。
- NeXTcube Turbo (モトローラ MC68040 33MHz )(第三世代:クロックアップされたモデル。)
- NeXTstation Color Turbo (モトローラ MC68040 33MHz )
- NeXTdimension キューブ型モデルにdimensionボードというカラーグラフィックプロセッシングボードを付加したモデル。
[編集] 歴史
1985年、スティーブ・ジョブズによりNeXT Inc.として創立。ジョブズはアップルコンピュータの株式売却で得た700万ドルを出資し、1987年には2000万ドルを出資したロス・ペローが取締役メンバーに入る。また、1989年にはキヤノンが日本での独占販売権と引き換えに1億ドルを出資している。
起業に際してはジョブズにより、アップルコンピュータ社でMacintosh開発に携わった人材(バッド・トリブルら)が引き抜かれている。当初は、Adobe社と後にDisplay PostScriptとなる技術の開発を行っていたが、これを実装できそうなオペレーティングシステムがその時点では存在しなかったことから、会社の方針を転換。これを搭載できるオペレーティングシステムならびにコンピュータを総合的に開発することとなった。これを受けて、1986年に社名はNeXT Computer Inc.に変更された。
NeXTワークステーションは、非常に斬新なソフトウェア構成と、デザイン(ポール・ランドによるロゴデザインと合致したfrog designのデザインしたマグネシウム合金製のマットブラックのキューブ型)、光磁気ディスク、本体とデザインを統一したモニタ、400dpiレーザープリンタ、後のPowerMac G5とCinema HD Displayに似た、プリンター=本体=モニタ=キーボードへそれぞれへの配線が最小になる接続方式などを採用したハードウェア構成などで人気があった。米国では大学とともに金融機関が主な販売先であり、日本では大阪大学や神奈川大学に数百台規模で導入される。しかし、専用のハードウェアであったため、その後のPCの高性能化と低価格化に取り残されてしまい、IntelベースのPCにソフトのみ移植するなどソフトウェア専業化による生き残りを試みたが、商業的にはWebObjectsのみのわずかな成功にとどまる。1993年、ハード関連事業をキヤノンに売却(設立されたFirepower Systems社は最終的にはMotorolaに売却される)。ハード生産を終了したことに伴い社名をNeXT Software Inc.に変更した。
1996年、NeXT Software社はアップルコンピュータに買収され、ジョブズがアップルコンピュータに復帰した。これまでの間、ジョブズが一貫してCEOをつとめた。
[編集] 特徴
NeXTワークステーション向けに作られたオペレーティングシステム、「NeXT STEP」はDisplay Postscriptを採用し、Macintoshに似た洗練されたグラフィカルユーザインターフェースを備え、ソフトウェア開発環境にはC言語にオブジェクト指向的な拡張を施し、本格的なオブジェクト指向開発を可能にした独自の「Objective-C」を採用。後にカーネル依存部分を切り離したOPENSTEPを経てMac OS Xの礎となった。
後期には画面表示のためのDisplay PostScriptと共に、現在のOpenGLあるいはDirectXに相当する3D表示フレームワーク(3Dkitと呼ばれる)にQuickRenderManを搭載し、PIXARの「PhotoRealistic RenderMan」(1バージョン古いものがデモとして)がバンドルされ、RenderManを標準で使用することができた。 RenderMan のシーン記述ファイルRIBは、「3次元表示のためのPostScript」とも呼ばれる。
アップルコンピュータのQuickTimeが有名になってくると、NeXTimeと呼ばれる互換モジュールも発表し、QuickTimeムービーをNeXT上で見ることができるようになった。
先進的で洗練された仕様には熱狂的なヘビーユーザを生み出した。たとえば、ティム・バーナーズ=リーはNeXTワークステーション上で最初のWebサーバーとWebブラウザを試作した。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
カテゴリ: アップルコンピュータ | Mac OS X | ワークステーション