MVアグスタ
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MVアグスタ (MV Agusta) はイタリアのオートバイ会社。第二次世界大戦後に国際レース活動で高い成績を残したが、親会社の意向で約30年の活動後、解散する。
その約20年後の1999年、別会社の資本参加で再活動している。とはいえブランド名が復活しただけで、'70年代以前とは全く別の会社である。その後、2004年にマレーシアの自動車メーカー、プロトンの傘下に入るが依然として業績低迷が続き、2005年12月27日にプロトンは全保有株をイタリアの投資会社GEVIにわずか1ユーロで売却することを発表した。元の親会社でヘリコプターメーカーについてはアグスタを参照。
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[編集] 歴史
[編集] 創生期
- 1923年 - アグスタ伯爵家のジョバンニ・アグスタが「ジョバンニ・アグスタ航空会社」を設立、航空機の生産と整備を開始する。
- 1943年 - 排気量100ccの2サイクルエンジンを搭載したモペッドの製造を開始する。
[編集] 戦後、オートバイの生産開始
- 1945年 - 大戦終結。これにより敗戦国となったイタリアは航空機の生産を禁止され、アグスタはモペッドから発展したオートバイの生産を主力とした子会社MVアグスタ(メカニコ・ヴェルゲーラ・アグスタ:ヴェルゲーラは会社のあった地名)を設立。
- 1948年 - 性能のアピールのためレース部門を設置、ロードレースに参加し初勝利をあげる。レース活動を行うにあたっては、単気筒モデルの設計にベネリから、また4気筒500ccモデルの設計にはジレラやドゥカティなどライバル社から有能な人材を引き抜き、高性能化を推し進める。またジャコモ・アゴスチーニ(MVアグスタのマシンで世界タイトルを13獲得)、ジョン・サーティース、マイク・ヘイルウッド、フィル・リード、タルキニオ・プロヴィーニなどをライダーに迎え、数々の戦歴を挙げることとなる。
- 1952年 - ロードレース世界選手権(WGP)・125ccクラスでサンフォードがワールドチャンピオンのタイトルを獲得する。
- 1956年 - WGPの125cc・250cc・500cc各クラスにおいてワールドチャンピオンのタイトルを獲得する。
- 1958年 - WGPの125cc・250cc・350cc・500cc各クラスにおいてワールドチャンピオンのタイトルを獲得する。また、1958年から1960年までの3年間は125~500ccクラス全クラスのメーカータイトルを獲得する。
- 1956年から1973年 までの18年間のうち、- WGP・500ccクラスのワールドチャンピオンタイトルを17回獲得。失ったのは1957年(ジレラ)のみ。
- 1956年から1973年 までの18年間のうち、- WGP・500ccクラスのメーカータイトルを16回獲得。失ったのは1957年(ジレラ)と1966年(ホンダ)の2回のみ。
- 1974年 - WGP・500ccクラスワールドチャンピオンのタイトルを獲得する。これが世界GPにおける最後のタイトル。
1976年のレース撤退(後述)までの間、優勝は通算3,027回、うち世界GPで270回を数え、37個のタイトルを獲得した。この期間に生産された市販車は競技車なみの高性能を誇り('70年代以降は日本製バイクの方が上という見方もある)、高価で希少なことから、後の「レーサーレプリカ」のはしりとして世界中の垂涎の的となった。特に600/750ccの並列4気筒モデルは、WGPマシンのエンジンを拡大したレーシングマシン直系といえるもので、ホンダCB750が登場するまで世界唯一の一般市販された横置き並列4気筒バイクだった。
[編集] オートバイからの撤退
- 1971年 - オートバイに力を入れていた2代目社長ドメニコが死去。弟のコラード・アグスタが後を継ぐ。
- 1976年 - コラードが社業を航空機に一本化、オートバイ部門とレース部門を解体すると発表する。
- 1977年 - オートバイの生産ラインを停止、完全撤退する。
[編集] ブランド復活
- 1997年 - カジバが、かつてのMVアグスタを伝説のものとした「高性能の市販車」の再現を目的としてブランドを取得、「MVアグスタ」を再興する。
- 1999年 - マッシモ・タンブリーニをデザイナーに迎え、F4の生産・販売を開始する。
- 2004年 - プロトンが7000万ユーロで買収する。
- 2005年 - 伊GEVI社に1ユーロで売却される。
[編集] 現行の主な機種
- 125S - OHC空冷単気筒。
- 250S - OHC空冷単気筒。
- 350S - OHC空冷単気筒。
- 500S - DOHC空冷3気筒。
- 750S - DOHC空冷4気筒。ガソリンタンクの下部が丸く広がった独特の形状はディスコボランテ(空飛ぶ円盤の意)と呼ばれた。
- 1000S
- 750/1000S america - 角型のガソリンタンクやサイドカバーでデザインされたモデル。
- F4セリエオーロ - 赤/銀のフェアリングデザインや、フェラーリがエンジン開発に携わるなど「高性能の4気筒」としてのコンセプトを継承している。なお、当時の技術者であったアルテューロ・マーニが独立して起こしたマーニのスフィーダやジャポーネ、スポルトは往年のアグスタのデザイン(ディスコボランテ)を継承している。
- F4S - セリエオーロの廉価版。
- ブルターレ - カウリングのない、いわゆるネイキッドモデル。
- F4タンブリーニ