BLAME!
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『BLAME!』(ブラム!)は漫画家弐瓶勉により、講談社発行の漫画雑誌月刊アフタヌーンに1997年1月号から2003年9月号まで連載されたSFアクション漫画作品。いわゆるサイバーパンクに分類される世界観を持つ。単行本はアフタヌーンコミックスより全10巻が刊行されている。また、講談社より本作の設定資料等を含んだ画集『BLAME! and so on』が出版されている。同著者の『NOiSE』は本作と世界観を同一にする。 アニメ映画化する話があったが、中止となった。
タイトルのBLAMEとは英語圏における発砲・銃声の擬音を意図して付けられている。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] 世界観
[編集] 概要
時代も場所も明らかでない超未来。 世界は高度に発達したネットワーク(ソフトウェア)と、それを支え、現実世界に反映する
[編集] 都市構造体
舞台となる世界はひとつの巨大なビル、もしくは全ての建造物が連結された巨大な都市である。多くは超構造体で遮られており、階層構造を成している。建設者の暴走により、都市構造体は際限の無い拡張を続けており、本作の時点では少なくとも木星軌道面まで到達している。統治局によると、都市の「無作為な成長」が世界を覆う混乱の本質的な要因となっている。当然ながら人口密度はきわめて低い。建造物が惑星系を取り込むという発想は、ダイソン球を彷彿とさせる。
[編集] 環境
都市構造体の範疇にはナノマシンが散布されており、生物学的なウイルスを排除して、無菌状態を実現している。この機能はかつてネットスフィアが正常に機能していた頃に、統治局への指示によって実現された。同著者の『BIOMEGA』や『DEADHEADS』では強力なウイルスによる感染症が主題となっているが、本作においてはそのような事態は原理的に起こりえない。また、これらの設定から、ネット端末遺伝子の変容の原因となった「感染」は字義通りの感染ではなく、コンピュータウイルス等に用いる「感染」である可能性がある。
[編集] ストーリー
果てしなく巨大な階層都市の中を、探索者
[編集] 登場人物
[編集] 主人公
- 霧亥(en:Killy)
- 本作の主人公。ネット端末遺伝子を求めて都市構造体の探索を続ける。成人男性の容姿を持つが、データ入出力用のインターフェイスを身体に備えるなど高度なサイボーグ化がなされている。すでに1000年以上活動を続けているが、彼の所属や出自は本作では明確に述べられていない。物語の初期において霧亥の記憶や「機能」は何らかの要因によって失われている。
- 作中の統治局の言葉に拠れば霧亥はセーフガード以前の「システム」の密使である。彼の存在はセーフガードにも認識されており幾度と無く干渉を受けることとなる。特にサナカンとの接触において霧亥は本来の機能を回復することに成功する。
- シボ(en:Cibo)
- かつて生電社の主任科学者を務めていた女性。ネット端末遺伝子合成実験の失敗の責任を問われて生電社の地下に幽閉されていた。霧亥に助けられてからは彼と行動を共にし、本作品の狂言回しを勤めることとなる。
- 彼女の人格と身体はいわゆるソフトウェアとハードウェアのアナロジーをなしており完全に分離されている。初登場時において彼女は既に「バックアップデータ」から復旧された人格が宿った屍であった。彼女は幾度と無く身体を乗り換えながら探索を続けるが、セーフガードであるサナカンの身体を支配したことが物語の展開に大きな影響を及ぼす。
- 彼女の行動の礎にあるのは科学者としての強い知的好奇心である。特にネットスフィアに対しては強い執着を抱いており、その感情は「思慕」と呼ぶに相応しいものである。物語の終盤において、シボは珪素生物(ダフィネ・ル・リンベガ)のネットスフィアへの不正アクセスに便乗することを試みる。霧亥とドモチェフスキーらの奮戦によりその試みは失敗に終わり、結果としてシボの人格は失われる。また、ダフィネルの抵抗の結果、彼女の身体を依代とした最高位のセーフガード「レベル9」が既定現実にダウンロードされてしまう。
[編集] セーフガード
- サナカン(en:Sanakan)
- 女性型の上位セーフガード(初期はレベル4、最終ではレベル6)。右腕に重力子放射線射出装置を装備しており、強大な戦闘能力を誇る。初登場時は少女の姿に偽装(偽装セーフガード)して、集落の中に入り込んでいた。戦闘時には成人女性の姿へと変貌する。劇中においてはシボと複雑な関係を持つことになる。物語終盤において、彼女のデータを流用した統治局の代理構成体が基底現実へ派遣される。
- セーフガードとしての彼女と、統治局の使者ととしての彼女が、同一の自我や個性を持つのかは劇中では明らかにされなかった。
- ドモチェフスキー(en:Dhomochevsky)
- 珪素生物の侵略を受けた非公式階層を防衛するために階層の緊急システムが作出した臨時セーフガード。彼の作出直後にシステムはその機能を停止してしまい、孤立無援の状態で都市の防衛活動を行う。ネット端末遺伝子を持たない人間も保護対象としている。ネットスフィアから切り離された状態で250年以上の活動を続けた結果、通常のセーフガードとは異なる「個性」が芽生えているものと思われる。シボやプセルといった女性形に対するある種の執着心と、任務遂行の狭間で葛藤を見せることもあった。
- 集積蔵奪回作戦におけるプセルとの戦闘で大破するが、イコの身を挺した電力供給により機能を回復。ハッキング中のダフィネルを倒すことに成功する。その後、不正作出されたレベル9を破壊しようとするが、反撃を受けて死亡する。
- イコ(en:Iko)
- ドモチェフスキーの直前に作出された臨時セーフガード。基底現実では顔だけの幽霊のような姿で描かれている。当初は少年の姿(身体)を持っていたが、造換塔を制圧されたことにより、その維持が出来なくなった模様である。ドモチェフスキーと行動をともにして、主に情報処理の側面からサポートをこなす。まじめな性格をしており、セーフガードの規則を常に意識して行動している。集積蔵奪回の際に大破したドモチェフスキーに自らの「電力」を分け与えて消滅する。
- レベル9
- 最高位のセーフガードユニット。作中では、シボとダフィネ・ル・リンベガによるネットスフィアへのハッキングによって基底現実へ不正に作出された個体のことも指す。構成体の作出に関してはシボの身体をベースにしている。不正な作出過程に加えて、ダウンロード途中にドモチェフスキーの妨害をうけたことからその機能は不完全かつ安定していない。下腹部にネットスフィア/統治局に対するアクセス権を秘めた「球体」を形成しているが、その機能は不完全である。本件でダウンロードされたレベル9ユニットは極めて低レベルの自我しか保有しておらず、行動目的を持たない。また、ベースとなったシボの記憶をおぼろげに残しているようである。重力子放射線射出装置以上の破壊的な兵装を有する。統治局、セーフガード、珪素生物はそれぞれの利害に従って、彼女の争奪戦を展開する。
[編集] 珪素生物
- イヴィ(en:Ivy)
- 東亜重工に寄生する珪素生物のひとり。長髪の男性形をしている。東亜重工の植民者を排除する作戦に従事する。幾度と無く繰り返す襲撃の中で、応戦するセウをある種のライバルと看做すようになる。また、霧亥とは以前より面識があり、その間には何らかの遺恨が存在する模様である。
- 中折れ式に刃がたたみ込まれた異質な打撃武器を操る。打ち込み時にはたたみ込まれた刃の部分が前方へ展開され、相手に追い討ちをかける。
- 東亜重工の最後を悟り、セウに最後の決闘を挑み敗北した。
- メイヴ(en:Maeve)
- 東亜重工に寄生する女性形の珪素生物。赤い頭髪に焦点の定まらない眼球が特徴的である。言動はイヴィに比べてかなり短絡的であり、その外見とあいまって狂気的な印象をうける。
- メンサーヴを襲撃した際に、セウの反撃を受け胴体を両断される。その後しばらくは上半身のみで活動していたが、異なる世界線に存在した「新型の珪素生物」の体を乗っ取ることで再び戦闘能力を得た。
- 左腕には杭打ち器のような格闘武器、右腕には貫通力を持つ黒い力線の発射装置を有する。
- バルダンバ
- 東亜重工に寄生する珪素生物の下級戦闘員。本名はルートバルゴバルダンバ。イヴィとメイヴの間に出来た43人の子供のうちの三男である。研究員になる夢を持っていたが、母親の反対で断念した過去を持つ。第8空洞の近郊で食料液を摂取していたところを霧亥に襲われる。身動きをとれなくされたうえで、シボにかなり強引な方法でハッキングされ情報を奪われる。LOG.25で登場した。
- ダフィネ・ル・リンベガ(en:Davine lu linvega)
- 非公式階層の集積蔵を占拠した珪素生物の主格。ダフィネルと呼ばれることが多い。長身の異形の姿を持つ。機械言語の専門家で、高い情報処理能力を有する。
- 非公式階層の集積蔵を占拠して、仮接続によるネットスフィアへのアクセスを試行する。シボが所持していたセウの遺伝子情報カプセルを用いて合法的な仮接続申請を行うが、統治局の機転によりその目論見は潰える。ドモチェフスキーの銃撃を受けて死亡するが、死に際に最上級セーフガードであるレベル9のユニットデータを盗む。『ブラム学園!』ではセーラー服を着ていることから、実は女性ではないかという意見もある。
- プセル(en:Pcell)
- 集積蔵を占拠した珪素生物の主格のひとりで、女性形である。イコによると「いちばん厄介なやつ」。黒い刀剣状の武器を携え、一振りで広範囲の破壊をもたらす。また、広い感覚域を持ち情報収集能力にも優れている。珪素生物は機能重視のサイボーグ化の影響が、アンバランスな外見として現れていることが多いが、彼女はほぼ人間のフォルムを保っている。華奢な外見に似合わず高い戦闘能力を持ち、積極的に前線に出てくることが多い。ドモチェフスキーにある種の好意を向けられていたが、彼女は意に介していないようである。
- 体組織を粒子状に分解し、移動する能力を持つ。この能力が本来のものか、造換塔を用いているのかは不明。粒子状の状態を「複散分子動体」という。
- スチフ(en:Schiff)
- 集積蔵を占拠した珪素生物の主格のひとり。多くの珪素生物は白塗りのマスクのような顔面を持つが、スチフは全身を黒色で統一しており、その点が特徴的である。172歳のときに念願の全身機械化権を取得し、それを行使する。そのメンテナンスにかかる莫大な費用を捻出するために、ダフィネルに協力することになる。両腕に装備した刺斬武器を用いた接近戦を好む。「ビーキュウエスエフエイガ(B級SF映画)」が大好きだったとの設定がある。霧亥と戦い敗れる。
- ブロン(en:Blon)
- 集積蔵を占拠した珪素生物の主格のひとりで、霧亥の倍以上の体躯をもつ。人型の他に、多足型節足動物様の形態に変形することが可能。ただし、この能力は仲間うちでも不評だったらしい。霧亥の重力子放射線射出装置に体の大半を消失させられるが、復活する。その後命と引き換えにドモチェフスキー等からセウの遺伝子情報を奪う。
[編集] その他
- メンサーブ
- 東亜重工第8空洞の管理AI(艦載AIと呼ばれる)。女性のトルソ様の姿を持つ。一個人にすぎないセウに固執するなど、管理者としての機能、判断能力に不全を来している。この為、管理AIの集合体である中央AIには統合されていない。中央AIとは運営方針についても対立しており、霧亥と初めて出会った際には自らが東亜重工の意志決定者であると述べた。大規模転送の失敗による東亜重工の崩壊に即し、植民者を守ろうと奔走するが失敗。第8空洞の住民の人格データを携えて、時空隙へ逃れる。
- 彼女の権限でも東亜重工の「転送」機能を限定的に用いることができる。また「磁縛線」により対象の動きを封じるなど、ある程度の戦闘能力を備える。
- 中央AI
- 東亜重工の艦載AIの集合体である。ただし機能不全、もしくは破壊されたAIは排除されている。東亜重工の異変に即し、構成AIの協議により意思決定を行うことで、(矛盾した命令による)自らの論理的発狂を防ごうと試みている。重力炉の正常化を契機に、東亜重工を階層都市の外に「転送」する計画を実行する。その過程において、ネットスフィアとの非干渉協定を破棄した結果、東亜重工内にセーフガードの侵入を許してしまう。
- セウ
- メンサーブの護衛を担う成人男性。東亜重工の:
植民者 、もしくはその子孫であるかと推測される。甲冑に身を包み、長剣で戦うその姿はあたかも騎士のようである(電基騎士)。古い時代の人間であるため、遺伝子の変異が比較的少ない。 - メンサーブに忠実に従い、東亜重工内部に侵入した珪素生物の排除を試みる。メンサーブの治療機械は人格までは再生できないため、重傷を負うたびに自我が退行していく。東亜重工の崩壊に即して突如意識を回復する。珪素生物との決着をつけた後で、メンサーヴとともに時空隙に逃れる。
- 捨造
- 電基漁師の男性。サナカンに殺害される。椎名誠のSF小説「武装島田倉庫」に同名のキャラクターが登場する。
- づる
- 電基漁師の女性。主に治療作業に従事する。東亜重工内では、電基漁師の甲冑に身を包んで戦闘行動を行った。死んだ人間の頭部より、その技能や人格を再現するための保存物を作る技術を持つ。捨造と同じく、椎名誠のSF小説「武装島田倉庫」に同名のキャラクターが登場する。
- テツ
- 塊都の近郊の集落に居住する男性。ヨシオと共に輸送業を営む。業務中に乾人の攻撃を受けて死亡する。
- ヨシオ
- 生体と思しき頭部の下に生命維持装置が付いただけのコンパクトな存在。テツとともに輸送業を営み、主に輸送機械の制御を務める。積荷の正体(移植用生体)を知った霧亥に生命維持装置を引きちぎられ絶命する。
- (犬を連れた女性)
- 白い犬をつれた女性。自身も犬も何らかのサイボーグであると思われる。ネット端末遺伝子の保存、回収を行っている組織(もしくは集団)に所属しており、霧亥の探索に指示をすることもある。LOG.2で登場した。本作で名前は明らかにされていない。(『ブラム学園!』では「犬女」とクレジットされている。)
[編集] 登場する用語
[編集] 組織・集団
- 人類
- ネットスフィアから隔絶されたまま途方も無い年月を経るうちに遺伝子の変異を起こし、生活圏ごとに肉体も生活様式も様々に異なる種族へと系統分岐している。かつての技術の名残で網膜に文字が表示されることがあっても、その意味を理解することはない。
- 統治局
- ネットスフィアの支配レベルにあたる高度AI。ネットの現状を認識しており、セーフガードの人類排除の妨害を試みるが、有効な手段を見出せていない。統治局自身による基底現実への干渉は禁止されており、代理構成体を派遣することによりその活動を行う。ネット端末遺伝子を持つ存在が統治局にアクセスし、適切な命令を発行することにより、世界を覆うカオスが払拭されると信じられている。
- セーフガード
- ネットスフィアのセキュリティを担う組織。統治局からその機能は完全に独立しており、その活動に干渉を受けることは無い。基底現実においてはネット端末遺伝子を持たない人間等を不法居住者として排除する。現状では実質全ての人間が排除の対象になる。とくにネットスフィアへ不正な接続を試みた場合はセーフガードによる徹底的な破壊と駆除が行なわれる。統治局と同一視されることもある。
- 臨時セーフガード
- 非公式階層により作出されるセーフガード。通常のセーフガードと異なり、額にセーフガードを示すマークが付いていない。排除する対象は主に珪素生物であり、人間であればネット端末遺伝子を持たなくとも保護対象とする。
- 珪素生物
- 字義的に言えば珪素基で構成された身体組織を持つ生物である。多くは炭素基系生物に改造を施すことによって生まれるものと思われる。
- 『BLAME!』における珪素生物とは、セーフガードから流出した技術と、ネットのカオスを利用して、人間とは異なる生物へと「殉教」したカルト教団の末裔のことを指す。改造技術そのものはセーフガードが開発したものであり、そのため珪素生物の言語基体はセーフガードのそれと酷似している。男女の区別を持ち、胎児より育つ。本来の容姿は人間とさほど変わらないが、多くはより戦闘、生存に適した形態にサイボーグ化されている。『NOiSE』では、この世界に彼らの種族が生まれた経緯について触れられている。種族が存続するためにはネットがカオス状態であることが不可欠であり、ネット端末遺伝子の破壊を種の目的としている。彼らは「ネット上の独立勢力」を標榜しており、霧亥、セーフガードとは敵対関係にある。
- 生電社
- 廃棄階層である塊都に本拠を置き、生体と電脳に関する研究や取引を行う企業体。「塊都の科学者集団」などと呼ばれている。その業務には、乾人の臓器の生体移植など様々なものが含まれる。事実上の塊都の統治者であり、住民を支配している。また、自社の労働者に対しては処刑も辞さない厳然たる態度をもって望んでいる。シボは霧亥の助けをかりて、その権力掌握に成功する。
- 社主として頭取と呼ばれる巨大な生体AIを掲げている。主任科学者であったシボは頭取の設計について、何らかの関りを持っていたらしい。
- 東亜重工
- 「階層都市のど真ん中」に位置する円筒状の巨大な構造物。その内部は「空洞」と呼ばれる13の領域に区切られており、それぞれを艦載AIが管理している。内部には植民者と呼ばれる住人が居住していたが、諸事情によりその姿を見せていない。主動力として重力炉が用いられている。
- 本作で東亜重工とは、遙か昔に存在した大企業「東亜重工」が建造した移民・探索用の宇宙船のことを指す。一度は外宇宙に向けて旅立った東亜重工であったが、何らかの理由によって階層都市に舞いもどる(「転送」により行われた)ことになる。この後処理に関して東亜重工の総意を司る中央AIとネットスフィア統治局の間に幾つかの協定が結ばれる。この協定は東亜重工内部における治外法権を含み、その有効範囲の内においてセーフガードを含むネットスフィアのサービスは全て無効とされる。
- 『BIOMEGA』では企業としての東亜重工が描かれており、『BLAME!』世界との関連が伺われる。
- 電基漁師
植民者 の子孫。何世代か前に東亜重工より外に出るが、帰る術を失い周辺の重層居住区に住みつくことになる。東亜重工内部より持ち出してきたと思しき甲冑と銃を用いて、駆除系を退けるほどの戦闘能力を見せる。
乾人 - 廃棄階層に居住する人類の亜種。生物としての人間を遺伝的に優性に特化させており、中性種と呼ばれる。その特性から臓器移植用に利用されている。移植目的で捕らえられた同胞を取り戻すために、樹幹帯で生電社へ向かう輸送機械の襲撃を繰り返している。
[編集] 器具
- 重力子放射線射出装置(Gravitational Beam Emitter)
- セーフガードにおいて「第一種臨界不測兵器」に分類される兵器。エネルギー様の放射により大規模な破壊をもたらす。重力子そのものをビームにしても破壊力は期待できないために、何らかの別の機構を利用していると推測される。直撃すれば耐えられるものは無いが、ある程度までは射線を逸らす、もしくは反射させることが可能である。通常はリミッターがかけられているが、「禁圧解除」によりそれを外すことができる。製造元は不明であるが、東亜重工内でその使用が制限されたことからネットスフィアのものであることは間違いないと思われる。
- 霧亥の携える拳銃形のものが唯一と思われていたが、物語の後半ではこれを装備した上位セーフガードや統治局員も登場した。
- 塗布防電
- セーフガードの命令を伝える「電磁波」を遮蔽するためにシボが使用した器具。これを使うことで構成体の動作を止めることに成功した。作中に詳細な説明は無いが、地面にそれを散布することによって効果を発現させるものと思われる。塗布された表面が破壊されることでその効果が失われる描写がある。
防磁繭 - 東亜重工内における武器の使用制限を回避するためにシボが開発した器具。塗布防電とほぼ同様の原理に拠るものと推測される。
- 微小構成体
- 戦闘形態のサナカンの掌から針状にして射出されるもの。人間や珪素生物等の生体部分に打ち込み、これを駆除系に再構築する。また、霧亥の「機能」を修復する用途にも用いられた。これらのことから、微小構成体はセーフガードの基礎をフォーマットする機能を有するのではないかと推察される。
[編集] その他
- 基底現実
- 高度に構築された仮想空間と対比し、現実世界はこのように呼ばれている。
- ネット端末遺伝子
- ネットスフィアにアクセスして、それを利用する「資格」および「機能」を遺伝子として発現させたもの。これを持つ者は一切の機械を必要とせずにネットスフィアにアクセスすることが出来る。ネットスフィアの黎明期である『NOiSE』の時代においては、生体にネット端末をインプラントしていた。
- はるか昔に起こった「感染」により変異しており、その機能は損なわれている。感染以前の時代を「上代」、その時代の人類を「原人」と呼ぶこともある。統治局の見解によれば、正常なネット端末遺伝子が入手できれば、世界を覆うカオス状態を変えることができる。
- ネットスフィア
- 実世界と同じか、それ以上に拡大したネットワークを基盤とする社会。都市(超構造体)にそれをサポートするハードを持つことにより、仮想空間の事象を基底現実へと反映させることができる。ネット端末遺伝子を持つ者が接続するとその機能を利用することが出来る。この世界を襲った「厄災」以降、正規の接続は確認されていない。そのため、ネットスフィアの「設定」は変わることなく運用されている。
- 建設者
- ネットスフィアの指示が失われたため、無作為に都市を増築し続けるある種の機械。個性や意識は普通は無い。人間に直接危害を加えることは無いが、制御を失った建築者の暴走が世界の混乱状態の主要な原因となっている。その動きが活発な場所は「成長区域」と呼ばれる。言語基体をあわせることにより直接命令を下すことができる。
- 駆除系
- セーフガードが駆除作戦を行う際によく用いる構成体。多くの場合大量にダウンロードされ、その物量でもって作戦を遂行する。意志や自我といったものは持たない。上位駆除系と呼ばれる強力な個体も存在する。
- 超構造体(Mega-Structure)
- 階層都市を隔てている巨大な構造物。内部にフィラメント状の情報処理システムを内蔵しており、ネットスフィアを実現する基盤となっている。建設者により絶えず保守、及び増設されている。統治局やセーフガードは超構造体の機能を利用して、基底現実の任意の場所に構成体を「ダウンロード」させることができる。堅牢な構造を持ち、重力子放射線射出装置でのみ破壊できた実績がある。その建築資材には解体された軌道上の惑星が用いられている。
- 代理構成体
- 「ソフトウェア」である統治局やセーフガードが、基底現実に干渉する際に用いる生物様の構造物。駆除系もこれに含まれると思われる。超構造体に内蔵された機構により、任意の場所に形成して操ることができる。
- 造換塔
- 主にセーフガードが利用する設備で、付近の素材を利用して駆除系をダウンロードさせる。統治局が代理構成体を転送するときにも用いられると思われる。大量の構造体を一度に転送する事が可能で、セーフガードはこれを用いて物量を生かした掃討作戦を実行することが多い。ドモチェフスキーらが苦戦した原因として、ダフィネ・ル・リンベガが非公式階層へ侵入後すぐに造換塔の制御を奪い、それ以上のセーフガードの生成を止めたことが大きい。
- 廃棄階層
- セーフガードを含む統治局が管理を放棄した階層。塊都が所在する廃棄階層には珪素生物の干渉も見られない。
- 非公式階層
- 統治局にネットスフィアのハードウェアとして検出されなかった超構造体が為す階層のこと。その多くは暴走した建設者が適当に増築した超構造体に起因するものとされる。非公式階層の補完措置として、ネットスフィアへの「仮接続」が許可されている。
- 仮接続
- 非公式階層の復旧の為に設けられた補完措置。集積蔵内の接続機を用いて、暫定的にネットスフィアへのアクセスを行うことが出来る。ネットスフィアの利用については、人格の転写や保存データベースの使用領域、利用期間等に関して多くの制限が課せられる。
- 仮接続の登録申請にネット端末遺伝子は必要とされず、ある程度正常な遺伝子であれば許諾される。このことがネットスフィアのセキュリティホールとして、ダフィネルら珪素生物に利用されることとなった。
- ダウンロード
- ネットスフィアの情報を、超構造体の機能を使用して基底現実下に反映すること。多くは付近の物質を利用した構成体の構築のことを指す。作中においては「転送」と呼ばれることもあるが、メンサーブらが東亜重工で行ったそれとは原理的に区別される。
[編集] 単行本
講談社発行(全10巻)
- 1998年06月 ISBN 4-06-314182-9
- 1998年12月 ISBN 4-06-314194-2
- 1999年08月 ISBN 4-06-314218-3
- 2000年03月 ISBN 4-06-314235-3
- 2000年09月 ISBN 4-06-314251-5
- 2001年03月 ISBN 4-06-314263-9
- 2001年10月 ISBN 4-06-314277-9
- 2002年04月 ISBN 4-06-314289-2
- 2002年12月 ISBN 4-06-314310-4
- 2003年09月 ISBN 4-06-314328-7
[編集] 読み切り版『BLAME』
- 麻薬取引に関わる殺人事件が発生し、警視庁捜査1課の刑事・霧亥が捜査に当たる。
- 『BLAME!』と共通する設定としては、舞台が巨大建造物の中である点、主人公の霧亥が切り札的な強力な拳銃を所持している点が挙げられる。また登場人物の一人が人間の姿を捨てて電子義体にジャックインする描写は、『NOiSE』の教団、のちの珪素生物へとつながる。
- その一方で人間がまだネットワークから切り離されておらず、司法機関が偵察衛星を利用できる。『BLAME!』と同じ世界だとすれば『NOiSE』の時代、もしくはさらに過去の物語ということになる。
- 月刊アフタヌーン1995年夏の四季賞で審査員特別賞を受賞。
- 単行本『NOiSE』に収録されている。30ページ。
[編集] ブラム学園!
月刊アフタヌーン2004年度5月号に掲載された弐瓶勉自身による『BLAME!』のセルフパロディ作品(フルカラー、16ページ、小冊子)。本編連載終了よりしばらくして、何の脈絡も無く掲載された本作にファンは驚きを隠せなかった。コピーは「学校は戦場だ」。末尾に「ネットスフィアの話ではありません。」との但し書きがある。
[編集] 単行本
本作は単行本等には未だ収録されていない。ただし、作品の枠内の広告には下記のような予告が記載されている。
[編集] 世界観
果てしなく巨大な階層校舎の中を、転校生「霧亥」は、「試験前」のテスト用紙を求め、何千フロアも放浪していた。霧亥の同級生シボは校則を破って職員室に仮接続を試みたが、担任に気付かれ、10段階で最低に近い「レベル9」の内申書評価を喰らってしまう。さらに、その事件をネタにシボをものにしようとするグループ「怪異疽誠武痛(けいそせいぶつ)」にも追われる羽目に。霧亥は同級生を助けることは出来るか!?
[編集] キャスト
- キリイ(霧亥)
- 無口な謎の転校生。授業時間は寝て、休み時間になると何かを探してどこまでも廊下を歩いていく。
- シボ(シボ)
- キリイの同級生。クラスで勝手に孤立しているキリイをなぜか気に掛ける。ちょっとストーカー体質。
- サナカン先生(サナカン)
- 体罰を辞さないスパルタ女教師。キリイを目のカタキにしている。すぐ発砲するので授業が危険極まりない。太腿に重力子放射線射出装置を隠している。
- メンサーブ先生(メンサーブ)
- 進学校である東亜高校で選抜八組を担当していた有能な教師。本作では語られない事情により学校そのものが消滅してしまったために、ブラム学園にやってきた。
- セウ委員長(セウ)
- 今も昔も、メンサーブ先生が担当するクラスの委員長を務める。先生の命令には絶対服従、逆らう生徒を次々と切り倒すナイト。
- 不良♀(メイヴ)
- 「怪異疽誠武痛」のレディース。言葉が汚い。イヴィと出来ている。
- バルダンバ君(ルートバルゴバルダンバ)
- 授業中に早弁をしているところをメンサーブ先生に見つかり、惨殺される。
- ドモチェフスキー(ドモチェフスキー)
- チームSG(Soccer Group)のメンバー。技術はすごいが、すぐルールを破るため正規メンバーが遠い。本作表紙では、バケツを持って立たされている描写がある。
- プセル(プセル)
- ドモチェフの敵チームのマネージャー。ドモチェフの心を惑わせ、戦力ダウンを計る。バレーボール部も兼任。
- スチフ主将(スチフ)
- ドモチェフの敵チームの主将。マジで足が速い。
- サッカーチーム(ドモチェフスキー、イコ、スチフ、ブロン他多数)
- バレーボールチーム(ダフィネルリンベガ、プセル他多数)
- 協力(犬女、セーフガード、駆除系のみなさん)
[編集] 外部リンク
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