非正規雇用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
非正規雇用(ひせいきこよう)とは、期間を定めた短期契約で職員を雇う雇用形態。期間を定めない雇用契約を結ぶ正規雇用の対義語。
以下の、パート・アルバイト、契約職員、派遣職員が、非正規雇用の就労形態に含まれる(断り書きがない限り、全て日本について述べる)。
目次 |
[編集] 形態の種類
[編集] パート・アルバイト
期間契約労働者の一種。厳密な定義はなく、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)では「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者よりも労働時間が短い労働者」。労働力調査(総務省)では、「勤め先での呼称がパート・アルバイトである者」となっている。企業の現場では、パートとアルバイトを厳密に区別していない場合がある。
一般的に、正社員と比べ労働時間が短く、時間あたりの賃金が安い。また、労働基準法の適用範囲内だが、現状では多くの面において適用されてるとは言い難い。福利厚生などの対象にもならないことが多い。
構成は、学生、主婦が多いため、男性よりも女性が多い。また、年齢構成では15~24歳といった若い世代よりも、30、40歳といった中年世代の方が多い。
なお、欧州連合(EU)では、パートタイム労働指令により、パートタイムを理由とした差別の禁止と、時間比例の原則を適用することとなっている。
パートは略称で正式にはパートタイマー。語源は英語のPart Timer。
アルバイトについては、アルバイトも参照のこと。
[編集] 契約職員
以前は高度な技術を有した専門職の人が1年以内の契約を結んだり、一度退職した職員が再雇用で嘱託として雇われる形態を指したが、今は短期契約で雇われる形態を広く指す。
構成は、高齢層の割合が高い。
[編集] 派遣職員
企業が派遣会社と契約を交わし、派遣会社が雇っている職員が企業に派遣されて業務を処理する形態。指揮命令権は派遣先にある。
長い間、職業安定法の下、きわめて限定的な雇用形態として位置づけられてきており、労働者派遣法の制定により正式に法律で規定されたのは1986年。当初は業種が制限されていたが、2004年に同法が改正され業種が拡大、それに伴い派遣職員は増加している。
構成は、女性と男性では女性が多い。
派遣も参照のこと。
[編集] 特徴
非正規雇用の特徴は、正規雇用に対して
- 総じて、時間あたりの賃金が安い
- 雇用契約期間が短い
- 男性は、結婚率が低い(収入と結婚参照)
という点が上げられる。
1980年代から雇用者に占める非正規職員の比率は少しずつ増加していたが、1990年代半ばから増加傾向が著しくなり、2005年には約3割を占めるようになる。
これは主に女子学生、中年女性のパート・アルバイトが増加したことと、男女ともに派遣・契約職員が増加したためである。
[編集] 雇用者側からみるメリット・デメリット
- デメリット
- 知識・技術を社内に蓄積しづらい
- 正社員と比べ会社に対する忠誠度・責任感が低い
等が挙げられる。
[編集] 被雇用者(非正規雇用の職員)側からみるメリット・デメリット
- メリット
- 自分の都合に合わせて仕事の時間や期間を調整できる
- 多くの企業に触れて経験を積むことが出来る
- デメリット
- 賃金が安い
- 勤続年数が増えても、仕事の能力が上がっても昇給はほとんどない
- 仕事の能力がある人でも、そうでない人と同じ低賃金である
- 退職金が払われないケースが多い
- 常に自分自身でスキルアップをはからねばならない
- 雇用形態が短期契約のため、将来への展望が不安定
等が挙げられる。
[編集] その他
1年間の収入合計が103万円を超えた場合、所得税を納める義務が発生するため、パート・アルバイトは賃金を103万円以下に抑えようとすることが多い。
非正規雇用から正規雇用への転換については、制度自体がない企業も多く、制度がある企業でも適用例はさらに少なくなるのが実情である。