遣独潜水艦作戦

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遣独潜水艦作戦（けんどくせんすいかんさくせん）とは、第二次世界大戦中に遠く離れたドイツと日本とを結び、資材や図面それに人材の輸送を行った旧日本海軍の数次にわたる作戦を指す。

1941年 6月の独ソ開戦によりシベリア鉄道経由の日本からドイツへの陸上連絡路が途絶し、同年12月の日米開戦により海上船舶による連絡も困難となった。ドイツ側も必要とする生ゴム、錫、モリブデン、ボーキサイト等の工業原材料を入手するために海上封鎖突破船をアジア水域に送ったが、多くは帰らなかった。

このため、ドイツは潜水艦による物資輸送を提案した。日本側からも電波探信儀（レーダー技術）、ジェットエンジン等の軍事技術をドイツから入手するという思惑があり、両国の利害が一致し、ここに日本とドイツの間を潜水艦で連絡するという計画が実行に移された。そのルートは日本～マラッカ海峡～インド洋～マダガスカル沖～喜望峰沖（ローリング・フォーティーズ）～東部大西洋～ドイツ領フランス（のちにはドイツ本土）の往復であった。なお東部大西洋からヨーロッパにかけてはすでにイギリスの厳重な対潜哨戒網がしかれていたこともあり、ヨーロッパ近海のルートや上陸港についてはたびたび変更されている。とくに後半は大西洋～ヨーロッパの制海権をほとんど連合軍に奪われ、インド洋以東のアジア海域にも連合軍による商船破壊が活発になっていた。

こうしたことにより、全五回の遣独中、はじめ二回はなんとか往復に成功したものの後半三回はすべて途中で撃沈されている。ただし往復に成功した二回のうちでも第一回遣独艦は帰路に立ち寄ったシンガポール（当時は日本占領下にあり、制海権も日本が確保）で事故により機雷（日本側が敷設した物）に接触・沈没、積荷の引き上げが行われたものの、レーダーの現物などいくつもの貴重な物資を失うことになった。したがって、物資輸送を完全に成功させたのは第二回遣独艦のみである。

第一次遣独艦：伊号第三〇潜水艦（遠藤忍海軍中佐、復路シンガポールにて触雷沈没）
第二次遣独艦：伊号第八潜水艦（内野信二海軍大佐、成功）
第三次遣独艦：伊号第三四潜水艦（入江達海軍中佐、往路マラッカ海峡にて英潜水艦に撃沈さる）
- 1944年3月には「日独製造権および原材料供給協定」が調印されて、軍事技術と原材料の交換が活発となる。
第四次遣独艦：伊号第二九潜水艦（木梨鷹一海軍中佐、1943年12月17日シンガポール出航、1944年3月11日ロリアン入港、4月16日出航、7月14日シンガポール入港、7月26日バシー海峡にて米潜水艦に撃沈さる）
第五次遣独艦：伊号第五二潜水艦（宇野亀雄海軍中佐、1944年6月24日往路大西洋にて米海軍機攻撃により沈没）

ドイツからも潜水艦が日本に派遣された。日独伊三国同盟の軍事委員の野村直邦海軍中将はヒトラーが日本海軍に寄贈する独潜水艦U511号（日本名：呂号第五〇〇潜水艦）に便乗して帰国した。

インド人反英独立運動家チャンドラ・ボースは1943年（昭和18年）4月26日にインド洋上で会合した独潜水艦U180から伊号第二九潜水艦に移乗して来日した。

[編集] 文献

野村直邦　海軍中将（回顧録）：『潜艦U511の運命；秘録日独伊協同作戦』、読売新聞社、1956年
Joyce C. Lebra（Non-Fictions): 『チャンドラ・ボースと日本』、原書房、1968年
吉村昭（Non-Fictions）：『深海の使者』、文藝春秋、1974年
伊八潜史刊行会（回顧録）：『伊号第八号潜水艦史』、1979年
Heinz Schäffer（回顧録）：『U-ボート977』、横川文雄訳、朝日ソノラマ、1984年、ISBN 4-257-17038-7
Karl Dönitz（ドイツ潜水艦部隊司令官の回顧録）：『10年と20日』、山中静三訳、光和堂、1986年、ISBN 4-87538-073-9
井浦祥二郎　海軍大佐（回顧録）：『潜水艦隊』、学習研究社、2001年、ISBN 4-05-901061-8
David Miller（Pictorials）：『Uボート総覧；図で見る「深淵の刺客たち」発達史』、大日本絵画、2001年
Jochen Brenncke（Non-Fictions）： Haie im Paradies, Der deutsche U-Boot-Krieg in Asiens Gewässern 1943-45, Koehler, 2002,ISBN 3-7822-0855-2