角
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角(かく、つの、すみ)
- 角(かく)とは、平面上の1点から出る2つの半直線で分割された領域のこと。平面角ともいう。角度を参照。
- 将棋の角(かく)は、角行を参照。
- サントリーのウイスキー。サントリー角瓶のこと。
- 通貨単位の角(かく)は、中華人民共和国の0.1元を表す補助単位。人民元を参照。
- 角(つの)とは、動物の頭部に突き出た、堅い骨質のもののこと。本項で解説する。
- 角(すみ)は、日本人の姓のひとつ。角淳一(元アナウンサー)、角盈男(元プロ野球選手)など。
角(つの)は、さまざまな動物にある、頭部にあって堅く突き出た構造を指し、またそれに似た形状のものをいう。
本来、生物学的には角(英語horn 仏語corne 独語Horn 露語por)は奇蹄目の一部や偶蹄目などの哺乳動物に見られる角質または骨質突起のことを指すが、一般的にはそれに似た円錐形その他の形状の突起を角と呼ぶ。
動物における角は、天敵に対する武器として使われるとも考えられるが、むしろ同種内で、集団での地位の確認や、メスのや餌場の取り合いなどの場合に、雄同士の威嚇やけんかの武器として使われる。
はっきりした角がありながら、何の役に立つのか分からない場合も少なくない。
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[編集] 脊椎動物の角
現生の哺乳類の角は骨が変化した器官で、主に草食動物の同種間の争いに使われる。特に反芻動物などが持つことが多く、ぶつけ合ってメスや餌場を取り合う。恐竜では、肉食のものも角状構造を持つものが多かった。
シカやトナカイ、オオツノジカやシフゾウなどの反芻類(ウシ亜目)の角は毎年生え替わる。頭の上に毛皮をかぶったこぶとして発生し、伸び出して中に骨が作られると、毛皮が剥がれて角が姿を現わす。季節がすぎると、角は根本からはずれて落ちる。角を合わせて戦うことは少なく、むしろ角の立派さで地位を決めている者が多い。
また、飼育種としてのウシの角は、頭蓋骨に角の形があり、その骨の上に爪のように角の皮がかぶった状態で存在し、一生伸び続けるが、ない品種もある。これとに同様な角の構造の動物にキリンがいる。角は2本あるが、実際の用途は何もないため、進化前の名残りではないかといわれている。
レイヨウの仲間の角は鹿のように枝分かれすることがあまりなく、実際の争いで角を使う種が多い。特に、砂漠や高山などに住む種が争いに角を使う。
奇蹄目のサイ亜目の動物の角は鼻の頭にあり、1本のものと、縦に2本並ぶものがある。肉食動物に抵抗するときなどに使われ、骨質ではなく角質である。
歯が変形して角の構造になっている例もある。バビルサの角は犬歯が長く伸びて湾曲して角の構造をとったものである。イッカクの角は前方に長く突き出る。これはオスのみが持ち、右の前歯が変形したものである。繁殖期に使われ、立てて長さを競い、地位を決める。
鳥類ではサイチョウなどに、くちばしの上に角状の付属突起を持つものがあるが、角の役割を果たしていない。
また、は虫類では、トカゲ類、カメレオン類に鼻の頭や目の上に角を持つものがあるが、角の役割を果たしていない。
魚類では、ハコフグ類などに目の上に角を持つものがある。これらはほ乳類のようにその角をもって争うようには見えず、むしろ外敵に対する食われにくさに関わる可能性も考えられている。
[編集] カタツムリの角
童謡にも歌われているとおり、カタツムリには角がある。
[編集] 昆虫の角
コウチュウ目のカブトムシ亜目、特にコガネムシ科の昆虫のオスに角を持つものが多い。特に有名なのがカブトムシ亜科の昆虫であり、その角は雄同士の争いや、餌を巡って他の昆虫を追い払うのに使われる。ほかに、糞虫のダイコクコガネ類も立派な角を持つ。クワガタムシ科の昆虫の角は大顎が発達したものであるが、ない種もある。
カメムシ目のヨコバイ亜目の昆虫、特にハゴロモ科やテングスケバ科などの頭部に目的不明の角のような突起がある。また、ヨコバイなどの一種は、その背中に奇妙な形の角を持つことで有名である。いかにも角に見える堅いとがったものを持つものもあるが、柔らかいひらひらした突起や、曲がりくねった膨らみを持つものもある。擬態に関わるものと考えられているが、想像を絶するような形のものも存在する。
[編集] 民俗
- 俗に、腹を立てている女房を、亭主側からやや揶揄して、「角を生やしている」などという。
- 鬼の頭にも、角が生えている。
[編集] 人間社会での利用
角は楽器にもなり、角笛として使われている。金管楽器の源流が角笛であり、ホルンの場合、語源そのものが角から来ている。水牛の角は三味線の撥の手元部分や特に地唄三味線の駒としても使われる。
また水牛の角は印鑑の素材としても広く使われている。
角は強さの象徴と見なされ、特別な力があると信じられる場合も多かった。角のある動物の剥製を飾りにしたり、角そのものを飾りに用いる例、角を日本刀の置き台にする例などがある。また、サイの角は漢方薬として珍重された。角を人間にねらわれた動物は枚挙にいとまがない。
人の文化では角は威嚇に使われており、兜や仮面にデザインされる場合が多い。鬼など恐ろしい怪物には角があるとしている文化も多い。漫画的には、怒りを表すときに(ちょっと古い表現であるが)角を書き加えることがある。