臨床工学技士
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臨床工学技士(りんしょうこうがくぎし、英Clinical Engineering Technologist)は、医療に関する国家資格の一つで、「厚生労働大臣の免許を受けて、臨床工学技士の名称を用いて、医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作及び保守点検を行うことを業とする者」(臨床工学技士法第2条)と定められている。生命維持管理装置とは、人の呼吸、循環又は代謝の機能の一部を代替し、又は補助することが目的とされている装置をいう。(臨床工学技士法第2条)
略してCE (Clinical Engineer)またはME (Medical Engineer)と呼ばれる。
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[編集] 歴史
近年、医用工学の発展により、医療現場では様々な医療機器が使用されるようになり、医師を補助するため、これらを専門に扱う技術者が業務を行うようになった。医療機器を扱う業務に対する国家資格の必要性が高まり、1987年、臨床工学技士法が成立した。
[編集] 主な業務
- 呼吸療法業務
- 人工呼吸器、吸入療法機器
- 人工心肺業務
- 人工心肺装置、冠灌流装置
- 血液浄化業務
- 高気圧治療業務
- ICU業務、CCU業務
- 人工呼吸器、補助循環装置
- 手術室業務
- 心臓カテーテル検査室業務
- ポリグラフ操作、スティムレーター操作(EPS&ABL)、アブレーター操作、体外式ペースメーカー操作、ペースメーカー植込み交換(プログラマ他操作)、ローターブレーター、IVUS、IABP、PCPS、カテ出し、その他カテ室周り補助
- 保守点検業務
- 安全管理業務
- ペースメーカー外来
- プログラマ操作
[編集] 専門認定士
高度な専門性を持った臨床工学技士に対し、関連学会が次のような認定制度を設けている。
- 透析技術認定士(血液浄化業務)
- 日本腎臓学会、日本泌尿器科学会、日本人工臓器学会、日本移植学会、日本透析医学会
- 体外循環技術認定士(人工心肺業務)
- 日本人工臓器学会、日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会
- 3学会合同呼吸療法認定士(呼吸療法業務)
- 日本胸部外科学会、日本呼吸器学会、日本麻酔科学会
- 臨床高気圧治療技師(高気圧治療業務)
- 日本高気圧環境医学会
- 臨床ME専門認定士(保守点検業務・安全管理業務)
- 日本生体医工学会、日本医科器械学会
[編集] 関連資格
- 第1種ME技術実力検定試験(日本生体医工学会)
- 受験資格:次のいずれかを満たしていること
- 第2種ME技術実力検定試験合格者
- 臨床工学技士免許所有者
- 第2種ME技術実力検定試験(日本生体医工学会)
- 受験資格:不問
[編集] 問題点
- コ・メディカルの中では診療放射線技師、臨床検査技師と比較して歴史が浅く、一般への知名度の低い国家資格である。
- 臨床工学技士は、治療、手術の立会いなど、直接患者の生命に関わる業務を行うことも業務の一つである。しかし、歴史が浅く、病院内での待遇は必ずしも良いとは限らない。
- 臨床工学技士の養成所は一年制の専攻科から四年制大学まである。同じ臨床工学技士でも能力にばらつきが見られるため、専攻科廃止論が取りざたされる一方、卒後教育の重要性も議論されている。
[編集] 資格取得
下記の養成校で専門的知識・技術を修了することで、臨床工学技士国家試験への受験資格を得、試験に合格することで資格取得する。
[編集] 厚生労働省令で定める学校、文教研修施設若しくは養成所(ア)
- 文部科学大臣の指定する看護師学校又は厚生労働大臣の指定する看護師養成所
- 文部科学大臣の指定する診療放射線技師学校又は厚生労働大臣の指定する診療放射線技師養成所
- 文部科学大臣の指定する臨床検査技師学校又は厚生労働大臣の指定する臨床検査技師養成所
- 文部科学大臣の指定する理学療法士若しくは作業療法士学校又は厚生労働大臣の指定する理学療法士若しくは作業療法士養成施設
- 視能訓練士法第14条第1号により文部科学大臣の指定する視能訓練士学校又は厚生労働大臣の指定する視能訓練士養成所
- 義肢装具士法第14条第1号及び第2号により文部科学大臣の指定する義肢装具士学校又は厚生労働大臣の指定する義肢装具士養成所
- 防衛医科大学校
- 職業能力開発短期大学校、職業能力開発大学校及び職業能力開発総合大学校
[編集] 厚生労働省令で定める学校、文教研修施設若しくは養成所(イ)
- (ア)に掲げる学校、文教施設又は養成所
- 視能訓練士法第14条第2号により文部科学大臣の指定する視能訓練士学校又は厚生労働大臣の指定する視能訓練士養成所
- 義肢装具士法第14条第3号により文部科学大臣の指定する義肢装具士学校又は厚生労働大臣の指定する義肢装具士養成所
- 高等学校専攻科
- 防衛大学校
- 水産大学校
- 海上保安大学校
- 気象大学校
[編集] 厚生労働大臣の指定する科目(A)(B)
- 厚生労働大臣の指定する科目(A)(B)は養成所入学前に履修している必要がある。養成所入学資格参照。
[編集] 厚生労働大臣の指定する科目(C)
公衆衛生学、医学概論、解剖学、生理学、病理学、生化学、薬理学、免疫学、看護学概論、応用数学、医用工学、電気工学、電子工学、物性工学、機械工学、材料工学、計測工学、医用機器学概論、生体機能代行装置学、医用治療機器学、生体計測装置学、医用機器安全管理学、臨床医学総論、関係法規、臨床実習
[編集] 臨床工学技士養成所
[編集] 養成所(1)
修業年数3年以上の養成所。
- 札幌医療科学専門学校 [札幌医療科学専門学校]
- 北海道ハイテクノロジー専門学校 [北海道ハイテクノロジー専門学校]
- 東北文化学園専門学校 [東北文化学園専門学校]
- 国際メディカルテクノロジー専門学校
- 東洋パラメディカル学院 [東洋パラメディカル学院]
- 太田医療技術専門学校
- 東京電子専門学校 [東京電子専門学校]
- 日本工学院専門学校 [日本工学院専門学校]
- 読売理工医療福祉専門学校 [読売理工医療福祉専門学校]
- 池見東京医療専門学校 [池見東京医療専門学校]
- 北里大学(医療衛生学部医療工学科)(4年制)
- 専門学校横浜外語ビジネスアカデミー
- 国際メディカル専門学校
- 静岡医療科学専門学校(4年制)
- 東海医療工学専門学校[[1]]
- 中部大学技術医療専門学校[[2]]
- 国際医学技術専門学校
- 鈴鹿医療科学大学(医用工学部臨床工学科、医用電子工学科)(4年制)
- 日本メディカル福祉専門学校
- 大阪ハイテクノロジー専門学校(昼3年制、昼4年制、夜4年制) [大阪ハイテクノロジー専門学校]
- 大阪医専(昼・夜4年制) [大阪医専]
- 神戸総合医療専門学校(臨床工学科) [神戸総合医療専門学校]
- 川崎医療短期大学(臨床工学科)
- 専門学校国際医療福祉総合学院
- 広島国際大学(保健医療学部臨床工学科)
- 四国医療工学専門学校
- 福岡医科歯科技術専門学校
- 熊本総合医療福祉学院
- 大分臨床工学技士専門学校
[編集] 養成所(2)
修業年数1年以上の養成所。
- 日本工学院専門学校(昼1年制、夜2年制)
- 北里大学保健衛生専門学院
- 帝京医学技術専門学校
- 藤田保健衛生短期大学(専攻科臨床工学技術専攻)
- 京都保健衛生専門学校
- 日本メディカル福祉専門学校(夜2年制)
- 大阪ハイテクノロジー専門学校(昼1年制) [大阪ハイテクノロジー専門学校]
- 神戸総合医療専門学校(臨床工学専攻科) [神戸総合医療専門学校]
[編集] 養成所(3)
修業年数2年以上の養成所。
- 読売理工医療福祉専門学校 専攻科
[編集] 大学
厚生労働大臣の指定する科目(C)を履修可能な大学。
- 北海道工業大学(工学部福祉生体工学科)
- 桐蔭横浜大学(医用工学部臨床工学科)
- 千葉科学大学(危機管理学部防災システム学科)
- 帝京平成大学(情報学部情報工学科)
- 東京電機大学(理工学部生命工学科)
- 東海大学(開発工学部医用生体工学科)
- 杏林大学(保健学部臨床工学科)
- 大阪電気通信大学(医療福祉工学部医療福祉工学科)
- 倉敷芸術科学大学(生命科学部生命科学科)
- 東亜大学(医療工学部医療工学科)
- 東和大学(工学部医療電子工学科)[平成19年度の学生募集停止中]
- 岡山理科大学(理学部応用物理学科)
- 埼玉医科大学(保健医療学部医用生体工学科)
[編集] 養成所入学資格
[編集] 養成所(1)および大学
大学に入学する資格のある者。
[編集] 養成所(2)および養成所(3)
[編集] 養成所(2)
大学、高等専門学校又は厚生労働省令で定める学校、文教研修施設若しくは養成所(ア)において2年(高等専門学校にあっては5年)以上修業した者で、以下に記載する厚生労働大臣の指定する科目を修めたもの。
[編集] 養成所(3)
大学、高等専門学校又は厚生労働省令で定める学校、文教研修施設若しくは養成所(イ)において1年(高等専門学校にあっては4年)以上修業した者で、以下に記載する厚生労働大臣の指定する科目を修めたもの。
[編集] 厚生労働大臣の指定する科目
- 公衆衛生学、解剖学、生理学、病理学、生化学、免疫学、看護学概論、保健技術学、応用数学、医用工学概論、システム工学、情報処理工学、電気工学、電子工学、物性工学、機械工学、材料工学、計測工学、放射線工学概論、臨床医学概論、内科診断学
- 実際に大学等で履修した科目名と異なることも多いが、同等の内容であれば履修済と判定される。履修済かどうかの判定は各養成所に任されており、養成所によって履修済と判定される科目数が異なる場合がある。また、養成所によっては必修としている科目もある。したがって、受験希望者は、各養成所ごとに成績証明書を添付して問い合わせる必要がある。