ポリグラフ
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ポリグラフとは、血圧、心電、心拍、呼吸、皮膚抵抗など生体のさまざまな情報を電気信号として計測し、記録する装置であり、「多現象同時記憶装置」のことである。polyとは多元の意味。一般的には嘘発見器(うそはっけんき)と同一視されることが多いが、手術室で術中の患者監視装置として使われるほか、医療分野で広く用いられている。
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[編集] 嘘発見器としてのポリグラフ
犯罪捜査において利用されるもので、被験者に事件に関係する質問をして、その時の呼吸、脈拍、皮膚電気反応の変化を測定する。
これは嘘をつく事で緊張し、呼吸の増進・脈拍数の増加・発汗により皮膚電気抵抗の低下が見られるという理論に基いているが、常習的(病的)に嘘をつく者や、妄想によって当人がそれが真実だと信じ込んでいる場合には、緊張状態が発生しないために意味を成さない、また逆に、過度に緊張しやすい性向の持ち主には、「尋問されている」という状況それ自体により、同機器が反応してしまうとされる。特に緊張しやすい性向の持ち主が、非常に努力して記憶を呼び起こし、事実関係を正確に述べようとしているのか、それとも嘘をつくために緊張しているかが、判別し難いなどの問題が指摘されている。実際、過去には同機器を過信しすぎた結果、たびたび冤罪事件(松本サリン事件1994年など)も発生しているため、近年の犯罪捜査では、より物証を重視する傾向となっている。
一方、皮膚電気抵抗を計測する簡易的な器具を利用し、恋愛感情を測定する玩具も存在する。任天堂が製造・販売していた商品ラブテスターは、恋人同士が手を握り合い、空いた手でテスターに付いた2つの電極をそれぞれ握り締めるという物であった。この器具では、電極を握った手と、恋人同士で握り締めた手が密着しているほど、また緊張して手に発汗するほど電気抵抗が低くなって、大きくメーターの針が動くという物だった。
[編集] 最新鋭の嘘発見器の開発
ポリグラフには前述のような欠陥が度々確認されており、導入時ほど信頼性のある機器ではなくなってきている。発汗・脈拍・呼吸・心拍数などは嘘をついていなくとも、訓練しだいでどうにでも操作することが可能とされ、実際に元FBI検査官がポリグラフ検査の切り抜け方を書いた本を出版している。今現在、アメリカではポリグラフにて出された検査結果は犯罪の証拠の信憑性が極めて低いとされ、全米中の裁判所で証拠として不採用されることが多い。
そこで、FBIはポリグラフに代わる新たな嘘発見器を開発しようとしている。すでに実用化に入っており、名称を「特定脳波検出機器」という。これは、人間の脳で嘘をついたときに検出される特定脳波信号を検出し本人が嘘をついているかどうかを判別する方法。この特定脳波は従来の身体変化である発汗や呼吸数などのように自分でコントロールすることが出来ないので、検査時に偽証を行うことも嘘をついていないふりをすることも不可能。また、この脳波は自分に関係のない情報については検出されないという特性を持っており、その為、冤罪で苦しんでいる者を検証する最良の手段であるとも言われている。
開発し提唱したのはハーバード大学心理学教授で、教授はこの方法を用いて、刑務所に出向き、自らの冤罪を主張する受刑者に対してこの実験を試みたところ、99.9パーセントの確率で無罪であると断定し、機械の精度を立証し、その結果が功をそうして現在この受刑者の再審が行われている。
日本でも科学警察研究所がこの最新鋭嘘発見器の開発に協力しており、アメリカで運用化されれば日本でもすぐに導入する予定である。
[編集] 特定脳波検出機器を用いる意義
「特定脳波検出検証法」が犯罪の事情聴取に導入されれば、取調官の強引な自供を促すといった行為や、検事の事情聴取などで冤罪が発生するということもなくなる。ポリグラフでは全ての事情聴取にこの方法が導入されていたわけではないが、特定脳波検出検証法ならば、確実に極めて信憑性のある自供を促すことが可能とされ、冤罪発生率も低下すると期待されている。
実際の警察の取調べでは個室内で、執拗な自供の促しが行われることも多く、また多くの市民は警察の取調室に連れてこられただけで過度の緊迫状況に陥ってしまうことがあり、冷静な状況判断が鈍り、やっていないことでもやったと言ってしまう者も多い。その後、検察で徹底検証されるが、検察も同様に少しでも重い罪を与える為、少しでも多くの自供を促そうと強硬な手段で聴取が行われることもあり、しかるべき物証が無い場合は自供だけが唯一の証拠となるケースもある。検事が強硬に自供を促し、それによって冤罪が発生するケースも多い。
しかし、特定脳波検出検証法では被聴取者に対しての精神的負担も少なく、極めて科学的な方法での検証となるので冤罪発生率が著しく低下するであろうと言われており、また冤罪を主張する受刑者への検証にも効果大であると期待されている。
[編集] 睡眠ポリグラフ検査
睡眠時無呼吸症候群などの診断に使われる検査で、睡眠時の身体状況の把握には欠かせない。 被験者の体にセンサーを取付け、睡眠時おける脳波、眼球運動、筋電図、呼吸運動、心電図、酸素飽和度などを終夜記録するものである。