為替レート
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為替レート(かわせレート、Exchange Rate)とは、通常の外国為替の取引において、外貨との交換比率(交換レート)を指す。為替相場、通貨レート、単にレートとも呼ぶ。基本的に市場で決定される。市場で決定されたレートをMER(Market Exchange Rate)と呼ぶ。
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[編集] 概要
為替レートは、通貨を他の通貨に替える際に必ず決定される。貿易や資本移動など国境を越える取引において外国為替は必要であり、為替レートはその外国為替の交換率を意味する。
為替レートはその制度いかんに関わらず経済情勢の変化によって変動する。
ある通貨Aに対して、通貨Bの価値が増大した場合、BはAに対して増価したという。また、AはBに対して減価したという。
中央銀行などの介入や固定相場レートの変更などで、為替相場の水準が人為的に変更された場合は、自通貨が増価した場合を切り上げ、減価した場合を切り下げと呼ぶ。
[編集] 現状
各国の通貨間の為替レートのうち、国際的な金融取引や貿易の決済に利用されることが多いアメリカドルとの為替レートは最も重要視される。2004年には1アメリカドルは100~120円の比率で交換されている。日本の為替レートの変遷は円を参照のこと。
基準となる通貨とその相手通貨によって、変動相場制と固定相場制の2通りの方式が存在する。先進国の通貨の多くは主に変動相場制を利用しており、需要と供給の関係で日々異なる比率で取引される。途上国はドルとの間で固定相場制を維持する傾向が強かったが、通貨危機への脆弱性から相次いで変動相場制へ移行した。一方、欧州では諸通貨間のレート変動を次第に抑制し共通通貨ユーロを誕生させた。ユーロは国境を越える最も強力な固定相場制を実現したことになる。
現在の為替レートで各国の賃金水準などを比較した場合におおきな差が出る場合がある。例えば日本は一人当たりGDPが37000ドル程度であるが、ベトナムはおよそ500ドルである。この計算では日本のほうが70倍程度豊かであることになるが、ベトナムは日本よりも物価が安いため、所得が低くても購買できる量は70倍もの差がつかない。物価を考慮した購買力平価ベースの一人当たりGDPは日本が30000ドル、ベトナムが3000ドルと日本が10倍豊かであるという結果になっている。
為替レートがこのような物価差を反映しないのは経済構造と貿易に関係している。
A国とB国があったとする。A国は工業化が進展しており輸出工業の生産性が高い。仮にA国の輸出工業がB国の輸出工業の10倍の生産性を持っていたとする。どちらも国際市場に製品を輸出している場合、一物一価の法則により両国の輸出品価格は同一となる。これにより、A国の輸出工業労働者はB国の労働者の10倍の所得を得ることになる。一方でA国の国内サービス業がB国の国内サービス業の2倍の生産性を持っていたとする。A国で輸出工業労働者と国内サービス業労働者の賃金に一物一価の法則が働いた場合、A国のサービス業はB国のサービス業の5倍の料金を取らなくては経営が成り立たなくなる。このため、両国では輸出工業品の価格が同一である一方、サービス料はA国のほうが高い状態が生まれ、A国の物価はB国よりも高くなる。
以上のように、輸出競争力の差と非貿易財が存在する場合、実際の為替レートと購買力平価には差が生まれる。
輸出工業品と違い、サービスの価値が違うと見ることも出来る。例えば、懐中電灯はどこの国で買っても価値が等しいが、東京で散髪することと、ホーチミンシティで散髪することは投入財の価格が違うため価値が異なるという見方である。この価値差が物価に織り込まれている場合は、購買力平価が無意味化する。
国際的な購買力としては、実際の為替レートが有効であるため、購買力平価は必ずしも正しい見方ではない。
[編集] 報道される為替レートについて
ニュースや新聞などで報道される「1ドル = 110円10銭~110円20銭」というレートは、銀行間での外国為替取引を行うときのレートで、銀行間相場と呼ばれるものである。
各銀行は、小口の顧客取引についてはその日の相場動向を見越して仲値と呼ばれる基準相場を定め、銀行間相場が大きく動くことが無い限り、(銀行間相場が細かく動いたとしても)日中はその相場を基に取引を行うことが多い。(東京市場では、以前は大手行の当番制で共同して用いるドル円の仲値を定める慣行があったが、現在は異なる。)なお、銀行間での取引は、何れの通貨も対(アメリカ)ドルで取引が圧倒的に多く、例えば円とタイバーツなど各国通貨との直接取引きの金額は少ない。このため各国通貨と円の為替レートは、当該通貨の対ドル相場と、ドル円の相場との合成として計算されることが一般的である。
為替レートの表示の仕方は、1ドルが120円という表示の仕方と、1円が1/120ドル=0.00833ドルという表示の仕方がある。ほとんどの通貨では1ドル=120円、あるいは1ドル=700韓国ウォンというように、米ドル1ドルに相当する各国通貨額を使うことが慣例である。例外は、英国ポンドやユーロなどで、1ポンド=1.9ドル、1ユーロ=1.25ドルなどと表示することが慣例となっている。
日本で円と他国通貨の為替レートを考える場合に、1円=8.11韓国ウォンと表示するのを外貨建て、1韓国ウォン=0.123円と表示するのを、自国通貨建てと言う。韓国から見れば、1円=8.11韓国ウォンが自国通貨てであり、1韓国ウォン=0.123円が外貨建てである。円の為替レートについて、自国通貨建ては邦貨建てと呼ばれることが多い。
[編集] 外貨預金・両替
一般個人が、銀行に外貨預金を依頼する場合、おおよそ数%~10%程度に相当する手数料分(銀行などで多少異なる;外貨1単位に対して何円という料率が普通)がレートに織り込まれる。そのため、かつて一般的だった「ドル円片道1円」と呼ばれる手数料率(仲値と取引に用いられるレートの差が1ドル当たり1円であることをいう)において、取引相手の銀行の仲値が1ドル=110円だったとすると、外貨預金への預け入れ、払い戻しや、外国送金の取り組み、円貨での受け取りに使われるレートは
となる。
また、外貨の現金との両替を依頼する場合には、さらにキャッシュハンドリングチャージ(cash handling charge;現金取り扱い手数料)と言われる手数料分が加味される。(顧客からの買取の場合はその分安く、顧客への売却の場合はその分高くなる。)
これは、外貨預金の場合は帳簿上の付け替えでも済むのに対して、両替となると実際に外貨の現金を当該外貨の本国との間でやり取りする必要があり、運送費・保険料その他がかかってしまうことが理由とされている。
[編集] その他
仲値ないし銀行間相場と、対顧客相場の乖離が比較的少ないのは、アメリカドルやユーロである。マイナーな通貨は取引量が少ないので、相場の乖離幅(銀行の利幅)が極めて高くなる傾向がある。
その他、貿易取引に使われるレートや、為替予約と呼ばれる先日付取引に使われるレートは、決済期日までの金利を勘案して定められる。
外貨建てでクレジットカードを使った場合の決済相場は、請求票がカード会社の決済センターに届いた際の相場に、数%程度の手数料を加味した相場であるとされている。従って、国内で両替して海外で現金で支払うよりは、実質の為替レートが有利になる可能性がある。
[編集] 外部リンク
- 外国為替相場一覧表(三菱東京UFJ銀行)