決号作戦
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決号作戦(けつごうさくせん)とは、太平洋戦争において日本軍が立案した日本本土における防衛作戦の呼称。ポツダム宣言受諾のため、この作戦が発動されることはなかった。 (厳密には「帝國陸海軍作戦計画大綱」での陸軍案)
予想された戦闘の全体概要については本土決戦を、アメリカ軍の日本本土上陸作戦についてはダウンフォール作戦を参照のこと
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[編集] 背景
[編集] 準備
大本営は検討の結果、連合軍の本土侵攻を遅延させ、その間本土の作戦準備態勢を確立するために『帝國陸海軍作戦計画大網』を昭和20年1月20日に定め、本土決戦への準備が進められていくことになる。ちなみに、この計画大網で同時に立案された海軍案も裁可され、これは天号作戦(千島・小笠原・沖縄以南の南西諸島・台湾が対象地域の作戦)と呼称されている。
陸軍では、同年4月8日には、九州と関東の作戦準備を促進させるために、東日本と西日本を統括する第一総軍と第二総軍を創設し、決戦準備に関する『決戦作戦準備要網』を示達した。
防衛力を強化するために一般師団40個、独立混成旅団22個などが動員され、約150万人に上った。これらの兵員は第一次から第三次まで動員され、加えて満州や北方からの転用兵団とともに逐次本土に配備されていった。
海軍でも同じ時期に、海軍総隊司令部を創設し、南東方面、南西方面艦隊を除いた、海軍の全部隊を統一指揮することになった。初代の海軍総隊司令長官には豊田副武大将、ついで小沢治三郎中将が任命された。
さらに、軍事上の要望と国民の権利を調整するために、『軍事特別措置法』が施行され、船舶港湾などの一元的運営、地方行政組織の臨戦化も計られた。
人的にも、国家総武装と言うことで『義勇兵役法』が公布され、男子は15歳から60歳(当時の男子平均寿命46.9歳)、女子17歳から40歳までが召集された。これら一連の動員は根こそぎ動員と呼ばれた。
[編集] 基地と防衛施設
昭和20年6月に沖縄の日本軍が全滅(沖縄戦)して以来、南九州の鹿屋(海軍)、知覧(陸軍)、万世(陸軍)、また瀬戸内海徳山沖の大津島(海軍)などの特攻基地は出撃が少なくなっていたが、本土決戦の動きが活発化すると、これらの基地が再び重視され、連合軍上陸阻止の役割を担うようになっていった。
本土決戦に備える軍の施設も各地に建設された。防衛施設は連合軍上陸を予想して海岸地域に設営されていき、軍の沿岸防衛施設には新編成部隊約150万人が動員されていた。
この大規模な防衛施設の建設は、昭和19年の秋から始められ、地上作戦のための陣地、航空基地、舟艇基地、後方の兵站施設、交通通信施設など広範囲にわたった。
作戦のための陣地構築には、強力な防御戦闘を行うために、水際陣地を充実させ、空爆と艦砲射撃に耐える洞窟式地下陣地を設営することが考慮された。また主陣地は水際から適度に後退した場所に設置され、人員的には中隊、大隊、連隊で編成され、火砲や機関銃が置かれていた。例として、内之浦臨時要塞や松代大本営等がある。
[編集] 戦法、戦術
戦術、戦法は次のように考えられていた。
- 機動部隊に対しては航空機による特攻(昼間、夜間問わず)と通常攻撃(主に夜間雷爆撃)で対抗。
- 輸送船団に対しては300km以内に近づくと、航空攻撃(特攻、通常攻撃問わず)、また、潜水艦や特攻用潜航艇などによって漸減し、さらに沿岸部まで近づくと、特攻舟艇と、陣地からの砲撃で対抗。
- 上陸部隊に対しては、海岸に到着して進撃を開始すると上陸地点へ反撃を開始し、混戦状態にして艦砲射撃と爆撃を実施できない状況にする。
だが、米軍の上陸予想地点を守備する第12方面軍(関東)の戦闘指導は、攻撃陣地は準備するが防御陣地は考えない方針で、この本土防衛においても硫黄島の戦いや沖縄戦で持久戦での実績があるにもかかわらずサイパンのような「玉砕戦法」が採られていた。
[編集] 作戦の戦闘序列
[編集] 陸軍
北海道
- 第5方面軍(千島、樺太、北海道)
- 第15方面軍(近畿、中国、四国)
- 第16方面軍(九州)
朝鮮半島
東日本
- 第1航空軍
西日本
- 第6航空軍
その他
- 第51航空師団
- 第52航空師団
- 第53航空師団
[編集] 海軍
海軍総隊司令長官(連合艦隊司令長官、海上護衛総司令官も兼任)
初代 豊田副武大将
2代 小沢治三郎中将
- 第3航空艦隊(鈴鹿山以東の本州)
- 第5航空艦隊(鈴鹿山以西の本州)
- 第10航空艦隊(本州各地域)
そのほかにも非決戦正面の航空艦隊(第12航空艦隊など)が配置されていた。
[編集] 作戦区分
- 決一号作戦 北海道・千島方面
- 決二号作戦 東北方面
- 決三号作戦 関東方面
- 決四号作戦 東海方面
- 決五号作戦 中部方面
- 決六号作戦 九州方面
- 決七号作戦 朝鮮方面
- (決と号作戦) 本土決戦における最終挙軍特攻作戦
[編集] 総戦力
[編集] 地上兵力
- 53個師団
- 22個混成独立旅団
- 3個警備旅団
- 2個戦車師団(戦車第一、第四師団)
- 7個独立戦車旅団
- 4個高射師団(高射第一~第四師団)
[編集] 航空戦力
- 約一万機
[編集] 海上戦力
[編集] 陸軍軍人、軍属
- 約315万人
[編集] 海軍軍人、軍属
- 約150万人
[編集] 特殊警備隊の兵員
- 約25万人
[編集] 国民義勇戦闘隊
- 約2800万人