水入り
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水入り(みずいり)とは、大相撲(十両以上の取組)において、長時間の取組(いわゆる大相撲)になり、疲労などのために取組に進捗が見られない状態になった際、行司の判断によって取組を一時中断することである。水入りになることを「水が入る」ともいう。
大相撲では、重い体重を生かし、瞬間的な筋力で自重もろとも対戦相手に突進し体勢を有利に展開する戦法が非常に効果的だが、逆にその重い体重を急激に動かすには、瞬発力が必須である。取組が長時間にわたって筋が疲労し、瞬発力が十分に発揮できなくなると、双方が力を十分に出し切れない状況に陥ることがままある。4分を超えたあたりから、赤房下の計時係審判が経過時間を見て、膠着状態になったとき正面の審判長に合図を送り、審判長が手を挙げて、行司の判断により中断させる。水入りが頻繁にあった時代の取組では、2分30秒を越えると水入りとなる事が多かった。
取組を中断させる際には、行司は、双方の足の位置、組み方などをよく観察した上で、両力士に短時間の休憩を促す。再開時にはそれらを入念に水入り前と同じにしたあと、行司の合図により取組再開となる。両力士や審判委員は、水入り前の状態が再現されているかどうかについて、行司に異議を唱えることができる。ビデオ判定導入後はビデオ室の意見も参考にするようになった。水入りの間中、行司は土俵上で双方が組み合っていた場所を離れず、足の位置を注視し、記憶していることが多い。
水入り後再開した後は、すぐに勝負が決する場合もあるが、疲労のため再度長時間の相撲となることがある。決着が付かなかった場合、2度目の水入りが行われる。この場合審判委員の協議の上取り直しとなる。有名な例としては1978年(昭和53年)の旭國 - 魁傑、2001年(平成13年)の武双山 - 琴光喜がある。それでも水が入る場合には、引分とする。引分は幕内では1974年(昭和49年)9月場所の三重ノ海 - 二子岳以来出ていない。
なお、幕下以下の取組は水入りは無く、万が一取組が長引いたときには、その取組の2番後に取り直すことになっている。
[編集] 平成以降水入りが行われた幕内の取組
1980年(昭和55年)1月場所14日目の北の湖 - 若乃花以来、およそ14年間、水入りがなかった。
太字が勝った力士
年・場所 | 東 | 西 | 水入り | 合計 |
---|---|---|---|---|
1994年(平成6年)9月 | 武蔵丸 | 琴の若 | 4分28秒4 | 4分36秒 |
1995年(平成7年)1月 | 貴闘力 | 小錦 | 4分22秒2 | 5分11秒8 |
1995年(平成7年)7月 | 琴別府 | 浪乃花 | 5分34秒 | 8分3秒7 |
2001年(平成13年)3月 | 貴闘力 | 琴ノ若 | 4分20秒 | 8分28秒 |
2001年(平成13年)5月 | 琴光喜 | 武双山 | 5分14秒6 | 9分18秒3※ |
2002年(平成14年)3月 | 旭鷲山 | 琴ノ若 | 4分42秒 | 4分46秒 |
2003年(平成15年)1月 | 琴龍 | 旭鷲山 | ||
2004年(平成16年)1月 | 朝赤龍 | 追風海 | 4分21秒 | 7分18秒6 |
2004年(平成16年)3月 | 高見盛 | 琴ノ若 | 4分12秒 | 4分34秒 |
2004年(平成16年)11月 | 朝赤龍 | 時天空 | 4分15秒 | 6分8秒 |
2005年(平成17年)9月 | 安馬 | 時天空 | 4分6秒 | 6分42秒0 |
2005年(平成17年)11月 | 隆乃若 | 豊ノ島 | 4分27秒 | 4分32秒6 |
※2度目の水入り(再開4分3秒7)後、二番後取り直し。合計9分46秒2(琴光喜の勝ち)