最低賃金
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最低賃金(さいていちんぎん)とは、最低限支払わなければならない賃金の下限額のこと。最賃(さいちん)と略される。以下では特に断り書きがない限り、日本での事例について述べる。
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[編集] 概要
労働基本権に基づき世界中で導入されている制度である。日本では、日本国憲法第25条の主旨に基づいている。最低賃金を定めた法律は最低賃金法(昭和34年4月15日法律137号)。
雇用者は最低額以上の金額を賃金として労働者に支払わなければならない。これは全ての賃金に対して適用されるため、正社員やパート・アルバイトといった勤務形態の違いにかかわらず、最低賃金以上の賃金を支払わなければならない。ここで言う最低賃金は、基本的な賃金の額であり、例えば時間外割増賃金(いわゆる残業代)や通勤手当(いわゆる交通費)は含まれない。
また、最低賃金には地域別と産業別とが設定されている。優先順位は産業別>地域別で、産業別で設定されている産業(業種)については産業別の最低賃金が適用され、産業別で設定されていないその他の産業については、地域別の最低賃金が適用される。
上記の様に最低賃金は全ての賃金に対して適用されるが、以下の例外がある。
- 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
- 試の使用期間中の者
- 職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)第24条第1項の認定を受けて行われる職業訓練のうち職業に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識を習得させることを内容とするものを受ける者であつて厚生労働省令で定めるもの
- 所定労働時間の特に短い者、軽易な業務に従事する者その他の厚生労働省令で定める者
最低賃金法 第8条より
最低賃金は年によって変更される。まず中央最低賃金審議会(厚生労働省)が厚生労働大臣へ引き上げ(引き下げ)の答申を行い、その答申を元に各都道府県の審議会がそれぞれの最低賃金を定める。
[編集] 諸議論
最低賃金を巡る議論をいくつか挙げる。
- 生活保護との関係
- 「最低賃金は生活保護基準以下に抑えられており、これは労働者の生活よりも企業活動を優先しているからだ」という意見は国会でも何度か取り上げられており、例えば2004年の第159回国会では日本共産党参議院議員、畑野君枝が最低賃金と生活保護基準との関連について質問主意書を出したのに対し、小泉純一郎内閣総理大臣が答弁書で「両制度はその性格等を異にしており、また生活保護費は住宅費等勘案する要素が多く、最低賃金と生活保護の水準を単純に比較することは適切ではない。しかしながら、中央最低賃金審議会で生活保護も参考にしながら最低賃金の水準を検討している」と答えている(参考:最低賃金額の引上げと最低賃金審議会委員の公正な任命等に関する質問主意書)。
- 産業別賃金のあり方
- 産業別賃金を廃止も含めて検討すべきという意見が、「最低賃金制度のあり方に関する研究会」報告書で出されている。
- 水準に対する労使対立
- 傾向として、労働者側は「できるだけ高くしてほしい」。使用者(企業)側は「できるだけ低く抑えたい」というものがある。
[編集] 外部リンク
- 地域別最低賃金、産業別最低賃金 - 最低賃金額の一覧、基礎資料など。厚生労働省ホームページ
- 「最低賃金制度のあり方に関する研究会」報告書について - 最低賃金制度のあり方に関する研究会(厚生労働省)報告書。2005年3月31日発表