仮面ライダーZO
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『仮面ライダーZO』(かめんライダーゼットオー)は、1993年4月17日から東映スーパーヒーローフェアの一作として公開された劇場映画のタイトル。および、それに登場するヒーローの名称(ただし劇中での呼称としては登場しない)。
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[編集] 概要
「仮面ライダー誕生20周年記念作品」であり、東映とバンダイが提携して初の作品でもある。タイトルの「ZO」は「20」に形が似ているところからつけられた。 作品の尺の都合から、従来のライダーシリーズのような大規模な敵組織は登場せず、一人の科学者「望月博士」が作り出した生命体同士の対決が描かれている。
本作の監督を務めた雨宮慶太は、仮面ライダー1号をリアルタイムで視聴していたという大ファンで、企画当初は1号ライダー=本郷猛を主人公とした物語にしたいと考えていたという。諸般の事情からその考えは実現できなかったものの、本郷のように「頼りがいのあるお兄さん」のイメージとして土門廣をキャスティングしたという。
本作のポイントの一つは「原点回帰」であり、ドラスや怪人が雨宮監督得意の生物的なデザインになっているのに対して、ZOはシンプルなデザインになっており、必殺技もパンチとキックのみというシンプルさで、その他の武器や能力は一切持っていない。
また本作公開後に次の劇場用ライダー新作の企画が開始された際、雨宮監督は本作の続編を提案している。一緒に提出されたZOの新デザインは赤いマフラーやベルトを身に付けた、いわばZO強化案というべきものになっていた。しかしながら、結果的に新作は『仮面ライダーJ』となっている。
[編集] ストーリー
望月博士に作り出された不死身の怪人ドラスは、自らの形を自由にできるネオ生命体だった。ドラスは、より完成された生物になろうと、望月博士の息子・宏を誘拐し博士に手術を迫ることを目論む。 同じく望月博士によりバッタの遺伝子を組み込む改造手術を施された博士の助手・麻生勝は、謎の声に導かれ、望月宏の身を守るため行動を開始する。
[編集] 登場人物
- 麻生勝(あそう まさる)/ 仮面ライダーZO
- 元は望月博士の助手であったが、狂気に駆られた博士の手により、意に反してバッタの遺伝子を組み込む改造手術を施され、プロトタイプのネオ生命体にされてしまった。博士の研究所を逃亡後、山林の中で落雷に遭って4年間昏睡状態にあったが、謎の声を聞いて復活を遂げる。関連書籍上では、山中で眠る間に大自然のエネルギーを吸収し、望月博士の想定を上回る強さを身につけたという設定が明かされている。劇中で詳しい説明はないが、最新型のネオ生命体であるドラスに拮抗している姿がこれを裏付けているといって良いだろう。変身ポーズは非常にシンプルで、感情の高ぶりや精神の集中などによりキーワードのみで変身する事も可能。ミュータントバッタとの精神感応による交信もでき、変身前においても精神感応能力や念力などの超能力が使える。必殺技の発声は行わない(公式設定ではZOキック、ZOパンチと命名されている)。彼に「仮面ライダー」の名を与えたのは望月宏。変身後は、感情が高ぶると口にあたる部分の左右から、ブレイクトゥーサーと呼ばれる薄い牙状の器官がせり出し、後頭部のラインの穴から気を放出する。本編ではドラスに攻撃された宏を庇った後、変身した際に見られた。
- 身長:193cm 体重:83kg ジャンプ力:130m
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- Zブリンガー
- ZO専用のスーパーバイク。勝の変身前は市販バイクの姿だが、彼が変身すると共に、その変身時のエネルギーを受けて変形する。最高速度1300km/h、ジャンプ力80m。ボディは1000度の高熱や100Gの衝撃にも耐える。50tの90式戦車を跳ね飛ばすほどの威力の体当たり技「Zブリンガーアタック」という技もある。開発者は望月博士と思われるが、定かではない。
- 望月博士(もちづきはかせ)
- 遺伝子工学の権威。自ら遺伝子工学研究所を構えて完全生物・ネオ生命体の開発に乗り出すが、次第に狂気に取りつかれ、助手である麻生さえも実験台にしてしまう。しかしその後、完成したネオ生命体により廃工場の機械に融合されて自由を奪われ、ネオ生命体に更なる改造を迫られる。
- 望月宏(もちづき ひろし)
- 望月博士の息子。産まれてすぐ母を亡くし、父も研究三昧の日々のため、祖父の清吉と2人暮し同然に育った。狂気に走る前の父に贈られたオルゴール時計が宝物。ネオ生命体は彼を誘拐し、自分の再改造を博士に迫るが……。
- 望月清吉(もちづき せいきち)
- 宏の祖父で、育ての親ともいえる。珍発明家として町の名物となっているが、その陰では密かに宏の父・望月博士の行方を追い続けている。
- 玲子(れいこ)、黒田(くろだ)、西村(にしむら)、宮崎(みやざき)
- 宏の通う武道道場の仲間たちで、玲子は師範代。家族の少ない宏にとっては、良き兄・姉役と言える。
[編集] ネオ生命体
望月博士によって生み出された完全生物。大規模な組織を持たず、『仮面ライダーアマゾン』のゲドンを更にコンパクトにしたかのような布陣。
- ドラス
- ネオ生命体が金属などを取り込んで作り上げた行動用の姿。移動時には金属の球体、または液体金属の状態になって移動する。ZOを遥かに凌駕する戦闘力を兼ね備えている。武器は数km先の鉄塔も破壊する右肩のマリキュレーザー、右腕のロケットパンチ、厚さ30cmのコンクリートも貫く尾(戦闘時には伸縮する)などである。また、ZOに右腕を切り落とされるが、金属を集めて巨大な3本の爪へと強化再生する(なぜか復活時には元に戻っていた)。弱点として、定期的に生命維持プールに浸からなければ生命を維持できないため、これを克服するよう望月博士に脅迫をかけている。ZOを体内に取り込む事によって、赤い姿の強化形態になる。その姿からはZOに似た部分が散見される。これはドラスが企画初期に「邪悪ライダー」と呼ばれていた事に起因していると思われるが、設定上でZOがネオ生命体のプロトタイプであることを考慮すれば、両者の外見に共通点が見出されるのも納得できるとも言える。
- ジャンプ力:150m
- 赤ドラス
- ドラスがZOを体内に取り込んで変身した強化形態。体色が薄い緑から血のような真紅に変化している、小さいバイオレットの眼が巨大な黒い眼に変化している、ドラス時の巨大な触覚が伸縮しているなどの大きな違いがある。
- クモ女
- ドラスが生み出した分身(ドラス怪人)。長い無数の手足を使い、敵を攻撃する
- コウモリ男
- ドラスが生み出した分身(ドラス怪人)。移動時には巨大な翼を広げて移動する。また変身能力も有する。
[編集] キャスト
[編集] スタッフ
- 原作:石ノ森章太郎
- 企画:村上克司、吉川進
- プロデューサー:渡辺繁、久保聡、堀長文、角田朝雄
- 製作:渡邊亮徳、山科誠
- 監督:雨宮慶太
- 助監督:古庄淳一、柏渕亘、黒木浩介、松田康洋
- アクション監督:金田治(ジャパンアクションクラブ)
- 技闘補:村上潤
- 脚本:杉村升
- 撮影:松村文雄
- キャラクターデザイン:雨宮慶太
- キャラクター造型:レインボー造型企画
- 音楽:川村栄二
- 音楽プロデューサー:峰松毅
[編集] 主題歌・挿入歌
[編集] 漫画
[編集] その他
- 初期のキャスティング案として、望月博士に竹中直人、清吉にいかりや長介を配するというものがあったという。
- 公開当時、メガCD用ゲームソフトが東映ビデオからリリースされた。メディアはCD-ROM。ゲームの内容は映画本編の映像を利用したリアルタイムアクション+アドベンチャーで、戦闘シーン等において画面上に表示されるサインに従いキー入力を行い、指示通りの入力をタイミングよく行えば先に進めるというもの。(ゲームの進め方によっては劇場公開作品では削除されたシーンを見る事も可能)アーケードゲームの『アストロンベルト』や『ドラゴンズレア』といったLDゲームと同様のゲームシステムである。ゲーム制作はウルフチームが請け負っているが、これは同社がアーケード用LDゲームの移植をメガCDで行う為に映像素材を取り込んでメガCD用に最適な形に加工するシステムを自社で開発し、『タイムギャル』『サンダーストームFX』『ロードブラスターFX』をリリースしたという実績が買われたものと思われる。