今川氏真
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今川 氏真（いまがわ うじざね、天文7年（1538年） - 慶長19年12月28日（1615年1月27日））は戦国時代の武将で、戦国大名として没落した後も江戸時代初めまで生きた。駿河今川氏10代当主、最後の駿河国守護。幼名は五郎、通称は上総介、官位は従四位下刑部大輔。号は宗誾。仙巖斎。
目次 |
[編集] 生涯
[編集] 生い立ち
今川義元と正室（武田信虎の娘）との間に嫡子として生まれる。天文23年（1554年）に北条氏康の長女・蔵春院早川殿と結婚し、永禄元年（1558年）頃から父より駿河の統治を任されて政務を執る。
[編集] 今川氏の衰退
永禄元年（1558年）頃に父・義元から駿河守護職を継ぎ、主に駿河の行政に携わっていたが、永禄3年（1560年）5月19日、義元が桶狭間の戦いで敗死したことにより、にわかに三河・遠江・駿河三国を統制する立場となった。
領国経営上の大きな問題は、義元の尾張への遠征が各国人に大きな負担を強要するもので、これが失敗に終わったことで物的にも人的にも損害しか残らなかったことにあった。成功していれば領土拡張にともない国人に対して負担への見返りを与えることができるが、永禄3年（1560年）当時の状況において、満足なそれは望むべくもなかった。また、国人達の間にも義元が行ってきた度重なる遠征による諸負担に対する不満がこの敗戦を機に一気に高まってきた事も考えられる。
今川氏の傘下で三河西部を治めていた松平氏の当主・元康（のちの徳川家康）は義元の仇討ちのため再度挙兵することを薦めたが、氏真は、当時の5月は農繁期であり収入に大きく関わることを理由に却下したとされる。これは上記問題の解決策として、再度遠征を強行するよりも、領国内の体勢の立て直しを計ることを優先したと考えられる。
松平氏は永禄5年（1562年）に織田氏と清洲同盟を結び、翌・永禄6年（1563年）には松平元康（義元より元の字を与えられていた）が徳川家康へ改名、今川氏の傘下から独立の姿勢を明らかにした。これに三河の国人たちも同調して、なお今川氏に従う国人との武力衝突も起こり始めた。こうした動きは遠江にも広がった。
氏真は楽市、徳政、役の免除などの政策によって領国の建て直しを計ろうとしたが、国人の離反を止めることはできなかった。さらに、謀叛の疑いで一部の領主を粛清したことで遺恨を作り、他の家臣の離反を生む原因を作ることにもなった。
[編集] 武田・徳川の侵攻
今川義元の戦死をきっかけに今川氏の衰退を見た甲斐の武田信玄は、今川氏との同盟破棄と駿河への南進を画策する。これが嫡男の武田義信と対立する大きな原因にもなった。義信は永禄8年（1565年）に反逆の罪で幽閉され、妻（氏真の妹）との離縁、さらに信玄から廃嫡の扱いを受けた。これによって武田氏は今川氏との婚姻同盟を一方的に破棄することとなる。また、義信は永禄10年（1567年）に自害したとされる。
このような信玄の裏切り行為に対し、氏真は越後の上杉氏と盟約を交わし、相模の北条氏とともに、甲斐への塩留を行うことで報復したが、決定的なものにはならなかった。永禄11年（1568年）、信玄は家康と一時的に盟約を取り付けて駿河への侵攻を開始した。
葛山氏や瀬名氏など駿河の有力な国人たちの造反もあって駿府は短期間で占領され、氏真は遠江掛川城へ逃れた。しかし、遠江においても徳川氏の侵攻によって今川氏は窮地に立たされた。掛川城主の朝比奈泰朝をはじめとした家臣の奮闘で半年近くの籠城戦となったが、ついに永禄12年（1569年）、氏真は家臣達の助命と引き換えに和睦開城した。この時に今川氏真、徳川家康、北条氏康の間で、武田氏の勢力を駿河から追い払った後は、氏真を再び駿河の国主とするという盟約が成立する。
しかし、この盟約は結果的に履行されることはなく、氏真およびその子孫が領主の座に戻らなかったことから、一般的には、この掛川城の開城をもって戦国大名としての今川氏は滅びた（統治権の喪失）と解釈されている。
[編集] 相模から京へ
氏真は掛川城の開城後は妻の実家北条氏を頼って相模に逃れた。永禄12年（1569年）5月23日に北条氏との同盟強化のため、北条氏政の嫡男・国王丸（後の氏直）を猶子とする。また、上杉謙信のもとに使者を送り、今川・北条・上杉三国同盟を結ぶ。この盟約は武田氏への共闘を目的とするものであった。
しかし、元亀2年（1571年）に北条氏康が死ぬとその子氏政は方針を転換し武田氏と和睦した。これにより氏真は相模を離れ、武田信玄と対立し始めたため駿河侵攻の大義名分を得たい徳川家康の庇護下に入った。これは掛川城開城の際の講和条件を頼りにしたとも見られる。そして、家康の同盟者にして父の仇でもある織田信長とも京都の相国寺で会見し、天正3年（1575年）の長篠の戦いにも従軍している。
一時は徳川家康が武田勝頼と争う拠点の１つ、遠江牧野城（元は諏訪原城、静岡県島田市）を任せられたともいうが、結局駿河復帰を諦め（解任されたとも言われる）、京に上って定住した。のち、剃髪して宗誾（そうぎん）と号する。その後は家康の援助を受けながら旧知・姻戚の公家などの文化人と往来し、連歌の会などに参加していたことが、親交のあった山科言経の日記『言経卿記』から伺える。
[編集] 晩年
慶長5年（1600年）関ヶ原の戦いの後、嫡孫・範英と、二男・品川高久（家康より「今川の姓は宗家に限る」との沙汰上があり、今川宗家以外は「品川」を名乗った）ともに徳川秀忠に出仕して江戸幕府の旗本に列したため、江戸に移住（嫡男の範以は若くして病死していた）。
慶長19年（1615年）（和暦では1614年末）、江戸品川の二男高久宅で没した。葬儀は氏真の弟の一月長得が萬昌院で行い、萬昌院に葬られたが、後に妻・蔵春院早河殿の墓とともに、東京都杉並区今川町の宝珠山観泉寺に移された。法名：傳岩院殿量山泰栄大居士
[編集] 人物像
- 権大納言冷泉為和らより学んだと言われ、現在も1000首を超える歌が遺る。また後水尾天皇選の集外三十六歌仙にも名を連ねている。
- 飛鳥井流宗家の飛鳥井雅綱より手ほどきを受けたとされる。
- 塚原卜伝に新当流を学んだという。
- 江戸時代中期以降に書かれた文献の中では、和歌や蹴鞠といった娯楽に溺れ国を滅ぼしたように描かれていることが多いが、実際には公家との交流によって政治的影響力を強める目的や、神道と関わる行事を行うことによる権力誇示の要素もあり、これだけをもって「文弱」の根拠とするのは適切とはいえない。
- また人物像についても描かれた作品によって、意志薄弱で頼りないもの、剛胆でさっぱりしたもの、思慮深く情あふれるものなど様々で一致を見ない。
- 正室である北条氏康の長女・蔵春院早川殿とはとても仲がよく、彼が戦国大名の地位から没落した後も、二人は離縁することなく、生涯連れ添った。
- ちなみに早川殿は、氏真に先立つ二年前（1613年）に亡くなっている。
