二式複座戦闘機
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二式複座戦闘機（にしきふくざせんとうき）は大日本帝国陸軍の複座戦闘機。型式番号はキ45改で、愛称は屠龍（とりゅう）。連合国側からはNickのコードネームで呼ばれた。なお、名称に「複座」とつくのは、同年に採用された二式単座戦闘機（鍾馗）があったためである。
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[編集] 開発の背景と経緯
1930年代半ばから40年頃にかけ、航空先進国である欧米の航空技術者たちの間では「双発万能戦闘機」なる機体の開発が盛んに行われていた。双発機は単発機より航続距離が長く、爆撃機に目的地まで随伴して護衛することができる。運動性は単発機に劣るが、二基のエンジンによる大出力で単発機を上回る高速を狙い、これをカバーする。機関銃／機関砲は機首に集中装備するが、これをカメラに変えれば写真偵察機に早変わりする。大出力と大柄な機体により、搭載力が大きいから爆撃機／攻撃機として多くの爆弾を積むことができる。結果、一機種で戦闘／爆撃／偵察等何役もこなせる効率的な機種として、メッサーシュミット Bf110やポテ630といった機体が次々と現れた。
この流れに影響を受けた日本陸軍は1937（昭和12）年、主要航空機メーカーに対して双発複座戦闘機の研究開発を命令、川崎造船所（のちの川崎航空機）にはキ38の名で開発を命じた。モックアップ（実物大模型）で止まったキ38に引き続き同年12月、陸軍は実物の試作機を作る目的で川崎に対し、あらためてキ45の開発を命じた。川崎は井町勇技師を設計主任に据えて作業に着手、1939（昭和14）年1月に試作一号機が完成した。テスト飛行の結果は、しかし、軍の要求を到底満足させるものではなかった。装備されたハ20乙エンジンは馬力不足なうえに故障が続出し、キ45の性能は遠く要求に及ばなかった。また、機体にもナセルストールを引き起こすという問題がつきまとった。
- ＊ナセルストール…飛行姿勢の変化等の条件により、エンジンカウリング（カバー）からナセル(エンジン取り付け部)に至る空気の流れが乱れて主翼上面の空気を剥離させ、揚力を奪う現象。墜落につながる。
キ45は不採用になったが、双発複座戦闘機の実用化を強く要望する陸軍は 開発の継続を川崎に命じた。川崎はこれを受け、エンジンを実績のあるハ25に換装することを決定し、設計主任を土井武夫技師に代えて作業に着手した。ハ25装備の機体はキ45第一次性能向上機と呼ばれ、テスト飛行で好成績を示した。
陸軍はこの機体をベースにして改修を施せばさらなる高性能機を生み出せると判断し、1940（昭和15）年10月、第二次性能向上機の試作を命じた。エンジンにはより強力なハ102（離昇出力1,080 HP）を採用、主翼はキ48（九九式双発軽爆撃機）のものを流用した。この機体にはキ45改の名称が与えられた。キ45改の試作一号機は1941（昭和16）年9月に完成、各種飛行テストが続けられ、1942（昭和17）年2月、二式複座戦闘機として制式採用された。
[編集] 実戦における二式複座戦闘機
二式複座戦闘機（以下、二式複戦）は当初、爆撃機の護衛という遠距離戦闘機的な運用がなされた。独立飛行第84中隊に配備された二式複戦は、1942（昭和17）年6月、大陸の広東方面において爆撃隊の護衛として桂林攻撃に参加、米陸軍義勇飛行隊「フライングタイガーズ」のP-40B/C トマホークと対戦した。この戦いで二式複戦は惨敗を喫した。同隊は9月、ハノイにおいてもP-40E キティホークと戦って敗れた。これらの事実は、二式複戦が単発戦闘機とまともに戦えないということを厳然と示していた。
二式複戦はあらゆる戦域の部隊に配備され、迎撃・対地/対艦攻撃・船団護衛など多くの任務に用いられ、旧式化した九九式軽爆撃機の代わりに軽爆撃機部隊にも配備された。しかし、それらの中で二式複戦が最もその威力を発揮したといえるのが、大型機迎撃任務だった。
最初の量産型、甲型は機首に12.7 mm機関砲2門・胴体下面に20 mm機関砲1門・後部座席に旋回式7.92 mm機関銃1丁という武装だったが、撃墜が困難な米軍のB-17爆撃機に対抗するため、胴体下面の武装を37 mm戦車砲に替えた乙型が製作された。戦車砲は命中すれば絶大な破壊力を発揮したが、後部座席の同乗者が一発ごとに装填操作をしなくてはならないため、30秒に1発ほどしか撃つことができず、命中させることは難しかった。
乙型に続いて作られた丙型は胴体下面の武装を20 mm機関砲1門に戻したが、機首の武装を連発式の37 mm機関砲に替えていた。丙型の登場により、二式複戦は破壊力の大きな大型機迎撃機としての性格が定まった。丙型はのちに操縦席と後部座席の間に20mm機関砲2門(当初は12.7mm機関砲)を斜め上向きに装備し、胴体下面の20mm機関砲を取り外すようになったが、これは丁装備と呼ばれた。ラバウルでは海軍の二式陸上偵察機(のちの月光)が20mm機関砲を斜め上向きに装備し、夜間の重爆撃墜に大きな戦果を挙げていたが、二式複戦の上向き砲はこれに影響を受けたものである。生産中の丙型は上向き砲を装備する丁型として生産されることになったが、既存の丙型及び甲型に関しても丁装備に改修されることになった。
二式複戦を配備された戦闘機部隊では本機の評判は芳しくなかった。最大速度はカタログ上の数値で540km/h(実戦部隊の機体の速度はこれより低い)に過ぎず、運動性は一式戦闘機隼や二式単座戦闘機鍾馗に著しく劣った。大型機迎撃に威力を発揮したものの、護衛の戦闘機が随伴してくる場合にはこれに撃墜されることも多かった。二式複戦を配備された部隊の中には、機材の消耗に伴い隼や鍾馗に機種変更する部隊もあった。二式複戦は軽爆戦隊にも配備されたが、こちらでの評判は上々だった。
二式複戦は正式採用されてすぐに日本本土の防空部隊に配備され、1942(昭和17)年4月のドーリットル空襲の際には出撃したものの、会敵できずに終わった。B29による本土空襲が1944(昭和19)年6月に開始されると、二式複戦を装備する第4戦隊や第5戦隊、飛行第53戦隊といった部隊が戦果を挙げた。しかし、一万メートルの高高度で進入するB-29を撃墜するには二式複戦では性能不足であり、有効な攻撃をかけることが出来なかった。少しでも性能を良くするために燃料・弾薬の量を減らし、後部座席をなくして軽量化した機体も使用されたが、その効果はたかが知れていた。そのため、体当たり攻撃専門の空対空特攻隊が編成され、B29邀撃に散っていった。通常攻撃の機でも体当たり攻撃は頻繁に行われた。 1945(昭和20)年になり、米軍が戦術を変えて夜間無差別爆撃を行うようになると、二式複戦は機首の大口径砲と上向き砲をフルに活用して戦果を重ねるようになるが、レーダーをはじめとする電波兵器を持たなかったため、ドイツの夜間戦闘機のように次々と目標を補足して撃墜するということが出来なかった。レーダー装備の実験機は試作されたものの、レーダー(空対空レーダー)が実用化の域に達しておらず、実戦に寄与することがなかった。
二式複戦は昼夜を問わずB29迎撃に出撃したが、米海軍/海兵隊の艦載機が来襲する際には戦闘に参加できず、退避行動をとらなくてはならなかった。1945(昭和20)年4月に硫黄島が陥落すると、P51マスタング戦闘機がB-29に随伴するようになり、本機の昼間活動は封殺されてしまった。
[編集] 諸元(キ-45改)
- 乗員： 2 名
- 全長： 11.00m
- 全幅： 15.07 m
- 主翼面積： 32.20m2
- 自重： 4000 kg
- 全備重量： 5270 kg
- 動力： ハ-102 空冷複星型14エンジン
- 出力： 1080HP
- 最大速度： 547 km/h
- 航続距離： 1500 km
- 実用上昇限度： 1000 m
- 上昇率： 5000/7'00"
- 武装： 機関銃 7.7mm旋回機銃×1・・12.7mm×2・・20mm×2
- 生産機数：1704機
- 製作会社：川崎航空機
[編集] 関連項目
カテゴリ: 日本の戦闘機 | 大日本帝国陸軍航空機
