串田嘉男
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串田 嘉男(くしだ よしお、1957年9月19日 - )はアマチュア天文家。彗星や小惑星などの新天体を数多く発見している。東京都八王子市出身で神代高等学校卒業。八ヶ岳南麓天文台(地震前兆電離層観測研究センター)台長、日本天文学会会員、東亜天文学会会員、SEMS研究会コアメンバー、理化学研究所地震国際フロンティア研究プログラム非常勤研究員。最近ではFM電波観測による地震予知研究でも知られる。自宅を持たずトレーラーハウスに暮らしているので、八ヶ岳南麓天文台を連絡先としている。妻の串田麗樹も超新星の発見・観測で知られているアマチュア天文家である。
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[編集] 新天体の発見
[編集] 彗星
- 串田彗星 (144P/Kushida)
- 串田・村松彗星 (147P/Kushida-Muramatsu)
[編集] 小惑星
2005年までに55個の小惑星を発見している。その中には(5352)藤田、(5405)ネバーランド、(5473)山梨などがある。
また、彼の名前にちなんで命名された小惑星(5605)串田も存在する(発見者は串田本人ではない)。
[編集] FM波による地震予知研究
FM電波を用いた流星エコーの観測中に流星によるものとは別の電波の変動があることを発見し、地震活動との関連が考えられるとして観測・研究を独自に行っていることで知られている。
2003年9月19日付発行の『週刊朝日』(第108巻第43号〔通巻4582号〕)誌上で、「9月16日、17日を中心の前後2日間に東京都・神奈川県を中心とした南関東圏〔中略〕で、M(マグニチュード)7以上の地震が起こる可能性を示す徴候が観測された。10月31日前後3日の間にM6前後の大きな余震も起こる可能性がある」という発言が報じられ、話題となった。この「予測」は、これまでとは異なり、アカデミズムの研究者も大きな関心を持ち、9月12日には、有馬朗人と上田誠也が呼びかけ人となり、八ヶ岳ロイヤルホテルでSEMS(Seismic Electric Magnetic Signals, 地震電気磁気信号)研究会が主催する「FM電波観測で捉えた地震関連異常に関する検討会」が開催され、大学に所属する研究者たちが多数参加して活発な討論がおこなわれた。テレビや新聞といったメディアでは、それほど大きなニュースとしてとりあげることはなかったが、インターネット上では電子掲示板で大量の情報交換がおこなわれ、東京都・神奈川県の百貨店などでは、『週刊朝日』の記事の影響も手伝って、防災用品の売れ行きが伸びる店も多く見られた。串田が地震発生の可能性を指摘した9月14日~19日に南関東に大きな地震は起きなかったが、9月20日に千葉県東方沖を震央とするマグニチュード5.5の地震が観測された。しかしこの地震は、マグニチュード・震央の範囲ともに串田の予測からはずれていた。
2005年現在も研究は続けられている。串田の地震前兆検知実験と、他の多くの「地震予知実験」との違いは、予測と結果が異なった場合でも、その原因を検証し次回への資料として公開していることである。この点においては、毎日のように「大型地震の前兆か?」などと言った見出しの予測を垂れ流し、地震が発生すると的中したと騒ぎ立てる自称地震予知研究家とは大きく異なり、観測結果は学術的に評価対象となり得るものとなっている。
しかしながら、著書のなかで「地震は予知などではなく予報することができる」と述べる一方、「研究は予知の段階にも至っていない」と公開情報に記述しているなど、その公開情報の不正確さ、研究の未熟を認めている。
2005年5月にも、串田は自身のウェッブ・サイトで南関東圏での大規模地震を予測した。串田の八ヶ岳南麓天文台がインターネット上で公表した「『地震前兆検知』実験観測情報」No.1394(2005年5月22日付)では、関東圏(南関東圏の可能性有)でマグニチュード7.2前後(少なくとも6.3前後以上)、時期は5月27日の前後4日(5月23日から6月1日の可能性大)と、地震の領域・規模・時期を「推定」した。この「推定」が公表されて以来、インターネット上の掲示板やブログで串田の予測をめぐってさまざまな情報が流通し、なかにはあきらかにデマや虚偽と判る社会不安を煽りたてる情報もみられた。同時期に、日本各地でいわゆる地震雲を観測した、という情報もインターネット上で流されたことあって、5月下旬に南関東圏での大規模地震発生という「噂」が広まった。
串田が、大規模地震の発生がもっとも懸念される日とした5月27日を過ぎても、関東圏に該当する地震が起きなかったため、30日付でかれが公表した「『地震前兆検知』実験観測情報」No.1394では、地震の発生を27日前後4日と推定した件について、「推定時期の失敗があったことが確実」と述べ、あらたに6月1日(前後4日)から5日(前後4日)に地震が発生すると「推定」し直した。その2日後、6月1日夜から翌2日未明にかけて、東京湾北部(多摩川河口沖)を震源とする地震が5回にわたって発生し、いずれもマグニチュードは3.1から4.2、震源の深さは40kmから50kmで、東京都内や横浜市内では最大震度3を記録した。この連続地震は、串田の「推定」した震央と期間の範囲内の地震ではあったものの、規模は串田の「推定」とは大きく異なっていた。この地震について気象庁は、新聞報道等で、「東京湾は普段から地震が多く発生する場所で、地震発生のメカニズムをみても、とくに緊張を要する地震ではないが、短時間にこれだけ連続するのは珍しいケースなので、推移を見守りたい」といったコメントを発表した。
串田が地震発生の時期として当初「推定」した27日に発売された写真週刊誌の『FRIDAY』』(第22巻第24号〔通巻1146号〕)では、「串田氏は民間の地震予知研究のパイオニア的存在で、'03年9月に『週刊朝日』で、『9月16日~17日を中心とした前後2日間で、南関東圏でM7以上の地震が起きる』と警告を発し、的中させた」と紹介したうえ、串田が公表した上記の5月27日前後の「推定」の詳細な解説記事を、串田とは関係のない「観測」された地震雲の写真と併せて掲載した。
こうしたなか、串田自身は、「公開HPの閉鎖について検討中」という文書を公開し、「適当な内容だけを携帯メール等で配信している心無い方がおいでのようで、私たちが公開している内容とは異なる内容を伝えておられる方が多いようです。例えば、24日に発生するとか、25日の夜11時何分に発生するとか、八ヶ岳天文台が大地震警報をだしたとか、半分オフィシャルであるとか、今日発生すると聞いたが、発生しなかったら責任をとってくれとか、きりがありません。/ これらは直接研究室宛に電話で問い合わせしてこられた方ですが、2年前には某宗教団体が私たちの公開情報を悪用し、勧誘に使用していたとの報告も受けています」と訴え、公開HPの閉鎖を表明。6月30日をもってサイトの更新を停止した。公開実験そのものはFAX会員に対してのみ続けられており、問題となった地震に関する情報も観測結果の見直しなどで発生推定日の修正が行なわれている。
串田の理想である「地震予報の確立」は実験結果の最終形となるものだが、この騒動によって一部のインターネット掲示板への書き込みや証券業界における回覧文書(怪文書)として流出していることを除けば「公開」の範囲はかなり狭いものとなってしまい、その目標は果てしなく遠くなったと言わざるを得ない。
[編集] 著書
- 『みつけたぞ!ボクらの星-天文台にかけた夢』(『ポプラ・ノンフィクション』41)、ポプラ社、1989年8月。ISBN 4-591-02988-3
- 『地震予報に挑む』(『PHP新書』)、PHP研究所、2000年9月。ISBN 4-569-61258-X