三岐鉄道270系電車
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[編集] 概要
1977年(昭和52年)、当時北勢線を有していた近畿日本鉄道(近鉄)が、同線の近代化を果たすために近畿車輛で製造した。モ270形(電動車)が6両、ク270形(付随車)が2両の計8両が当初製造されている。
在来車両の車長が11m程度であったとのに対し、270系は762mm軌間(特殊狭軌)の鉄道としては珍しく、15m級車体を採用した。扉は両開きで、当時としては既に旧型車両の部類に入っていた吊り掛け駆動方式を採用し(現状においても762mmでは垂直カルダン駆動方式以外は吊り掛け駆動方式しか技術的に装架できないため)、更に冷房装置こそなかった(新製当時)ものの、従来車では不可能だった総括制御を実現するなど、北勢線の近代化に大きく貢献した。室内はロングシートを採用している。
1990年(平成2年)には、270系投入後も残存していた旧式電動車を一掃するため、内部線・八王子線用に製造された260系の流れを汲んだ、モ277形が1両増備されている。鋼体にフレームレス鋼体を採用して軽量化を図っており、室内は固定クロスシートを採用しているのが特徴である。なお、本車両は国内における普通鉄道最後の完全新造の吊り掛け電車である。{1067mm軌間の鉄道線では、1983年(昭和58年)製造の江ノ電1200形(バー・サスペンション方式)・1978年(昭和53年)遠州鉄道モハ30形25号が最後の完全新造の吊り掛け電車である。}
1954年(昭和29年)に製造された11m級付随車のク130形・サ130形、それに1960年(昭和35年)~1962年(昭和37年)に製造されたク140形・サ140形、それに湯の山線から転属した200系(3両連接車)とともに編成を組んでいる。北勢線では基本的に、阿下喜駅方面に電動車を連結し、西桑名駅方面に数両の付随車を連結した編成を組んでおり、3~4両編成で運用される。
2003年(平成15年)に北勢線が三岐鉄道へ移管されたため、同社に帰属することとなった。
2003年(平成15年)には増結用Tc車{制御車}(142、144号車)をT車{付随車}化の上、4連固定編成化することにより、4両編成でもワンマン運転が行われるようになった。なお、このT車{付随車}化された車両は形式がサ140-1と変更された。
2005年(平成17年)には同車の高速運転対応工事(70km/h)の一環で、モ270形の運転台側動力台車をク170形の連結側付随台車と交換し、編成の安定化と自重分散を行った編成が現れた(171+146+271号車)。具体的な改造内容としては、前述の台車更換によるモーターの分散配置、制御段に弱界磁段を追加、ATS制御段を追加したことなどである。ただし、地上側の軌道・信号設備が高速化未対応のため、現状での運転最高速度は従前通り45km/hにとどまっている。これを行った編成に関しては、モ270形がクモハ270形、ク170形がクモハ170形、サ140形がサハ140形と形式名が変更されている。
近鉄からの運営移管時は、使用されている車両の全てに空調設備がなかったが、2006年(平成18年)8月から空調設備を装備する車両(172+147+272号車の3両編成の1本のみ)の運行を開始した。今後の計画として、2006年(平成18年)12月には3両編成の1本(171+146+271号車)、2007年(平成19年)には2本、2008年(平成20年)には2本、2009年(平成21年)には1本の編成に空調装置を装備させ冷房化率100%を達成させる計画である。空調装置は一般の電車のように屋根上に装備するのではなく、客室内の床上に設置されている(15m車は1両当たり2台、10m車は1両当たり1台)。また、冷房化と同時並行で前述の車両の高速走行対応化工事(70km/h)も施工されている。
- 編成(近鉄時代)
- 171 - 146 - 271 (- 142)
- 145 - 138 - 275 (- 144)
- 202 - 101 - 201 - 276
- 172 - 147 - 272
- 141 - 136 - 273
- 143 - 137 - 274
- 134 - 135 - 277
- 編成(三岐)
- 171 - 146 - 271【高速化対応】
- 172 - 147 - 272【冷房化・高速化対応】
- 141 - 142 - 136 - 273
- 143 - 144 - 137 - 274
- 145 - 138 - 275
- 134 - 135 - 276
- 202 - 101 - 201 - 277