マネーサプライ
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マネーサプライ(money supply)は通貨供給量とも言われ、中央銀行と国が発行したハイパワードマネー(中央銀行と国が発行した現金+金融機関から日銀が預かっている預金)を民間金融機関経由で、金融機関と国を除いた市中(一般法人、個人、地方公共団体など)に供給もしくは出回らせているお金のことを指す。
マネーサプライは現金と預金の合計として定義されるが、預金など現金以外の資金のうちでお金としての機能を持つものがどの範囲かについては単純に決められず、幾つかの指標が作られている。日本では、現金通貨(紙幣を含む広義の貨幣)、普通預金、当座預金、定期預金、外貨預金、譲渡性預金(CD:Certificate of Deposit)の総合計の通貨量であるM2+CDが代表的な指標である。英国では、マネーサプライはM0(現金通貨+市中銀行の英蘭銀行預け金)とM4(現金通貨+預金+住宅貸付組合出資金)に分かれる。
マネーサプライは、物価や名目GDPあるいは実質GDPなどの経済活動に関係があるとする考え方が有力である。このため、日銀などの中央銀行はマネーサプライを間接的あるいは直接的に金融政策を実施する際の指標としている。
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[編集] 詳細
新聞などで「M2+CD」といった表現をされていることがある。現金に当座預金などを加えたものをM1といい、そのM1に定期預金を加えた通貨量をM2と呼んで通貨量を種類分けするが、マネーサプライという場合、通常ははそのM2にCDを加えたものを言う。
市中に出回っている通貨や預金量としてのマネーサプライが多いと、カネ余り現象が生じ、インフレ懸念が出てきて日銀などの政策当局はその動向に神経を尖らせる。景気動向を探る場合には、このマネーサプライの前年比ベースでの伸びがポイントになる。日銀は今、「マネーサプライ管理」を金融政策の重要な柱の1つに置いている。市中に出回るカネの量を管理しないと、インフレなどを引き起こすからだ。この通貨の「管理」政策はアメリカなどが早くから採用しており、四半期ごとの「M2+CD」の伸びを「増加目標値」として公表、そして、そのターゲットの範囲内に伸びを押さえ込むように通貨管理をしている。
ところが最近、定期預金やCDとは違って、しかも市場金利連動型といった多種多様で仕組みが複雑な金融商品が登場したため、マネーサプライ管理も難しくなってきた。いずれも、M1にもM2にも属さない新金融商品のため、新たな通貨種類別の分類が必要となってきた。それに伴い「M2+CD」だけでマネーサプライをとらえる意味がなくなってきた。特に、それら新金融商品にマネーシフトが起きたりすると、「管理」の目が行き届かなくなる。これに、現金通貨でも預金でもないクレジットカードが普及したため、一段とマネーサプライのとらえ方が難しくなっている。
[編集] 統計の種類
マネーサプライにおける通貨の範囲はいくつかの種類に分かれる。日本では、日銀がM1、M2+CD、M3+CD、広義流動性の四種類について、統計を発表している。 これらのうち日銀はM2+CDをもっとも代表的な統計とみなしている。
[編集] M1
現金通貨と預金通貨(普通預金・当座預金)を合計したもの。
[編集] M2
M1に準通貨(上記の預金通貨に準じた性格を持つ)を含めたもの。つまり、現金通貨と預金通貨と準通貨(定期預金や外貨預金)を合計したもの。
[編集] M2+CD
M2に譲渡性預金を含めたもの。通貨供給量の範囲としては最も一般的。
[編集] M3
M2に郵便貯金、農協・信用組合などの預貯金、金銭信託を含めたもの。
[編集] M3+CD
M3に譲渡性預金を含めたもの。