ポリプテルス
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ポリプテルス | ||||||||||||||
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![]() ポリプテルス・ウィークシー Polypterus weeksii |
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分類 | ||||||||||||||
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下位分類 | ||||||||||||||
2属・10種(本文参照) | ||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||
Bichir |
ポリプテルス(Polypterus)は、ポリプテルス目・ポリプテルス科に分類される魚の総称。多鰭魚(たきぎょ)という古称もある。条鰭類で最も古く分岐したグループとされるが、ハイギョやシーラカンスを含む四足類に近縁とする見解もある。
目次 |
[編集] 概要
現生のポリプテルス目は1科・2属・10種ほどが知られているのみで、すべてがザイール、スーダン、セネガルなどの熱帯アフリカに分布する淡水魚である。体長は30cmほどのものから1m近くになるものまで、種類によって異なる。
Polypterus は「多くの(Poly)ひれ(pterus)」という意味で、名のとおり背中に小離鰭(しょうりき)と呼ばれる菱形の背びれが10枚前後ある。鼻孔は細い突起となって前方に突き出し、ヘビのように細長い体は「ガノイン鱗」と呼ばれ菱形の鱗に覆われる。対鰭(胸びれと腹びれ)はつけ根に筋肉が発達し、四肢動物の腕のようになっている。うきぶくろは2つに分かれ、肺のように空気呼吸ができる。稚魚には両生類の幼生のように1対の外鰓があるが、成長すると消失する。
これらの特徴から、ポリプテルスは魚類と両生類に進化する分岐点にある動物と考えられている。古生代から中生代にかけて栄えた硬鱗魚と同じような特徴をもち、現生魚のアミアやガーなどとも共通する。ポリプテルス自体も約4億年前のデボン紀に現れたといわれ、多くの生物が絶滅する中、現代まで絶滅せずに生き残ってきた。このため「古代魚の生き残り」「生きている化石」などといわれる。
川や湖に生息する。昼は物陰に潜むが、夜になると泳ぎ出す。泳ぐ際は長い体をくねらせながら、胸びれをパタパタとはばたかせてゆっくりと泳ぐ。食性は肉食性で昆虫類、甲殻類、小魚、カエルなどを捕食する。
分布域では食用に漁獲されているが、恐竜を思わせる外見や、胸びれをはばたかせて泳ぐ愛嬌ある姿から熱帯魚としても人気が高い。口に入らないサイズの魚には無関心だが、口に入る大きさの動物は食べられてしまうので一緒に飼う動物の大きさには注意する必要がある。逆に稚魚期には他の魚に外鰓をかじられることがあるので混泳は避けたほうがよい。また、丈夫なガノイン鱗に体が覆われるため白点病などにはかからないが、ポリプテルスのみに寄生するマクロギロダクティルス・ポリプティという寄生虫が知られており、これもまた注意が必要である。
[編集] おもな種類
ポリプテルス属 Polypterus とアミメウナギ属 Erpetoichthys の2属がある。ポリプテルス属は下あごが突出し大型になるビッチャー(bichir)タイプと上あごが突出するパルマス(palmas)タイプとに分けられる。背びれの小離鰭の数も種類を判別するポイントとなる。アミメウナギ属はアミメウナギ1種のみが知られている。
[編集] ビッチャータイプ
- ビキール・ビキール Polypterus bichir bichir Lacépède, 1803
- 体長は70cm-90cmと大型で、不確定ながら120cmという記録もあり、ポリプテルスの最大種とされている。小離鰭は17-19本とこちらも最多である。非常に希少な種類とされ、2003年に初めて日本に商業輸入された。
- ラプラディー P. b. lapradei Steindachner, 1869
- ビキール・ビキールの亜種。全長は70cmほど。小離鰭は13-15本。
- エンドリケリ・エンドリケリ P. endlicheri endlicheri Heckel, 1847
- 全長70cm以上になる大型種で、下あごが突出する。小離鰭は11-14本。黄土色か褐色の地に不規則な黒いくらかけ模様がある。
- エンドリケリ・コンギクス P. e. congicus Boulenger, 1898
- エンドリケリ・エンドリケリの亜種。
[編集] パルマスタイプ
- オルナティピンニス P. ornatipinnis Boulenger, 1902
- 体長60cmほどで、上あごが突出する。背中はうすい緑褐色の地に細かいたくさんの斑点がある。オルナティピンニスは「綺麗な羽飾り」の意。
- レトロピンニス P. retropinnis Vaillant, 1899
- 体長30cmほどの小型種。小離鰭は4-5本と少ない。
- パルマス P. palmas palmas Ayres, 1850
- 体長30cmほどの小型種。小離鰭は7-9本。
- ポーリー P. p. polli Gosse, 1988
- 独立した種 P. polli とする見解もある。体長30cmほどの小型種。
- セネガルス P. senegalus senegalus Cuvier, 1829
- 体長50cmほど。小離鰭は8-11本。市場流通量は最も多い。