ボリス・カーロフ
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ボリス・カーロフ(Boris Karloff,1887年11月23日 - 1969年2月2日)はイギリス・ロンドン出身でアメリカで活躍した俳優。世界中の誰もがフランケンシュタインと聞いて思い浮かべる、面長で無表情なモンスター役を最初に演じた、怪奇映画史上最大の伝説的スターである。
[編集] 経歴 人物
- カナダ、アメリカでの演劇活動を経て、1919年に映画界入り。サイレント映画時代を脇役として過ごした。1931年、ユニバーサル映画『フランケンシュタイン』のモンスター役に起用される。この役は『魔人ドラキュラ』(1931年)で怪奇スターとなったベラ・ルゴシに配役される予定だったが、ルゴシが台詞のない怪物役を拒否したため、カーロフが代役に指名されたといわれている。この映画は世界的にヒットし、ホラー映画史上不朽の名作となった。そして、重厚なメイクの奥から、怪物の恐怖と人造人間の哀感を表現したカーロフもまた、世界に知られる怪奇スターとなった。
- 翌1932年にはミイラ映画の元祖『ミイラ再生』に主演した。フランケンシュタインモンスターは言葉をしゃべらない怪物役であったが、この映画ではグロテスクなミイラ姿は冒頭のみで、全般では人間の姿に復活した古代の高僧イムホテップ役を貫禄豊かに演じた。素顔で台詞をしゃべっても演技力と存在感が充分であることを示して怪奇のトップスターの地位を更に不動なものとした。1934年の『黒猫』で遂にベラ・ルゴシとの二大スター共演が実現。両主演ではあったが、序列はカーロフが上だった。以後も両者は『大鴉』『透明光線』等数本で共演するが、この序列が変わることはなかった。
- 1935年に『フランケンシュタインの花嫁』で再び、1939年には『フランケンシュタインの復活』でみたびモンスターを演じた。ユニバーサルはその後もシリーズを継続するが、カーロフはモンスター役を降板する。この役はロン・チェイニー・ジュニアを経て、第一作で拒否したルゴシも演じることになる。1940年代前半は一時映画を離れ、ブロードウェイの大ヒット舞台劇『毒薬と老嬢』で名声を博した。1944年の『フランケンシュタインの館』でシリーズ復帰するが、モンスターではなく、マッドドクター・ニーマン博士としての主演であった。
- 第二次大戦後も怪奇映画の大御所格として、アメリカのみならずヨーロッパやメキシコの映画にも出演、晩年まで安定した活動を続けた。1950年代末以降の怪奇プームでは既に老齢に達しており、さすがに大きな活躍はなかったが、戦後の怪奇スターであるヴィンセント・プライスやクリストファー・リー、更にはジャック・ニコルソンらとも共演し、大いに存在感を示した。また戦後の怪奇映画を復興させたイギリスのハマー・フィルム制作、ピーター・カッシング主演の『フランケンシュタインの逆襲』(1957)では、カーロフをモンスター役に起用する案があったといわれるが、これは実現しなかった。
[編集] 主な出演作品
- 熱砂果つるところ (1929)
- 今宵ひととき (1931)
- フランケンシュタイン (1931)
- 暗黒街の顔役 (1932)
- ミイラ再生 (1932)
- 黒猫 (1934)
- フランケンシュタインの花嫁 (1935)
- フランケンシュタインの復活 (1939)
- 恐怖のロンドン塔 (1939)
- フランケンシュタインの館 (1944)
- 死体を売る男 (1945)
- 虹を掴む男 (1947)
- 忍者と悪女(1963)
- 古城の亡霊 (1963)
- 殺人者はライフルを持っている!(1968)