チャック・ベリー
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チャールズ・エドワード・アンダーソン・ベリー、チャック・ベリー(Charles Edward Anderson Berry, Chuck Berry, 1926年10月18日 - )は、アメリカ合衆国のロックミュージシャン。リトル・リチャードやジェリー・リー・ルイス、バディ・ホリー等と並ぶロックンロールの偉大な創始者。「ロックンロールの神様」と呼ばれ、その後のアーティスト達に尊敬され、再評価が求められているアーティストの一人でもある。
彼の代表曲はザ・ビーチ・ボーイズやビートルズ、エルヴィス・プレスリー、ローリングストーンズ等にカヴァーされ、オリジナルを聴いたことがなくてもそれを知っている人は多い。実は、持ち曲を最も多くカヴァーされたロック・アーティストこそが彼なのである。また、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)では、1985年から1955年にタイムスリップした主人公が、「ジョニー・B.グッド」(1958年発表)を熱演し大受けし、まだハードロックを知らない当時の人々に対してライトハンド奏法までやって見せ驚かせるシーンが名場面の一つとして広く知られている。
「自分自身の歌詞というものを本当に書いた人。50年代、他のみんながどうでもいいようなことを歌っていた時にチャックは社会的なテーマを上手く歌詞の中にとりこんでいた。もしロックンロールに他の名前があるとすれば、それはチャック・ベリーだ」、「僕のヒーローだ(My hero!)」とジョン・レノンは語り、「俺の目標はベリーみたいにかっこよく弾けるようになることさ」とキース・リチャーズは語っている。
目次 |
[編集] 生い立ち
ベリーは1926年、ミズーリ州セントルイスで生まれる。本人もセントルイス生まれと公言しているが、いくつかの伝記にはカリフォルニア州サンノゼで生まれたと書かれている。六人兄弟の三番目であった彼はミズーリ州セントルイスで成長する。父親はバプテスト教会の執事であり、母親は教師であった。中流の家庭に育った彼は幼少時から音楽に興味を示し、六歳の頃から聖歌隊に加わり、高校時代に初めて人前で演奏する。
しかしながら不良仲間の影響を受け様々な悪事に手を染め、高校卒業直前の1944年に自動車窃盗の罪で感化院へ送られ、1947年に釈放される。
[編集] 経歴
出所後はミュージシャンとして活動を行う。その芽はなかなか出なかったが、ある日彼のステージを見たマディ・ウォーターズの口利きによって1955年、チェスレコードと契約し、シングル「メイベリーン」(全米5位)でデビューする。独特のギター奏法とギターを弾きながら腰を曲げて歩く「ダックウォーク」が話題となる。
1956年にはシングル「ロール・オーヴァー・ベートーベン」(全米29位)等がヒット、1957年、1stアルバム『アフター・スクール・セッション』を発表する。シングル「スクール・デイ」(全米3位)、「ロックンロール・ミュージック」(全米8位)等がヒット。翌1958年には2ndアルバム『ワン・ダズン・ベリーズ』を発表。シングル「スウィート・リトル・シックスティーン」(全米2位)、永遠の名曲「ジョニー・B.グッド」(全米8位)、「キャロル」(全米18位)等がヒットする。1959年には3rdアルバム『ベリー・イズ・オン・トップ』を発表する。
いくつかのヒット曲を発表し、公演旅行を行った後の12月、ベリーはメキシコで出会った14歳のウェートレスを連れ回し売春を強要しマン法(Mann Act, 不道徳な目的のために女性を州境を越えて移動させることを禁じる)に違反したとして逮捕された。ベリーは有罪判決が下され懲役五年と5,000ドルの罰金が命じられた。
やがて、ロックにとって最初の闇の時代が始まる。リトル・リチャードの引退(1958年)にバディ・ホリーの事故死(1959年)が重なり、翌1960年にはイギリスでも、エディ・コクランとジーン・ヴィンセントが交通事故に遭い、コクランが死亡している。ベリーに対する懲役五年の判決は後に三年に減刑されたが、マン法はベリーのようなアーティストたちをねらい打ちするための法律であり、その逮捕と判決には黒人差別意識も少なからず影響した物と思われる。ベリーは刑に服した後1963年に釈放される。
驚くべきことに、1960年から1963年にかけての刑務所生活があったにも関わらず、ベリーはデビューから10年で30枚ものシングルを発表している。逮捕の翌年1960年には4thアルバム『ロッキン・アット・ザ・ホップス』を発表している。このことから製作の方も活発であったことがよく分かる。しかし、時代が時代だけに、アイドル的な要素を含むエルヴィス・プレスリーの様にヒットを連発することは少なく、商業的失敗に苦悩したことさえあった。先に挙げた30枚のシングルも、そのほとんどが商業的失敗に終わっている。しかし、それらは決して駄作ではなく、1曲1曲が新たな発見の報告であり、ロックの秘宝でもある。つまり、革命的アーティストだったので、彼が黒人でなければ爆発的にヒットしてもおかしくはなかったのである。後にロックのルーツとなる特徴的なギターリフ、普段は陽気で時に反抗的になる歌詞、ギターを弾きながら腰を曲げ、ステージ上を跳ね回るパフォーマンス「ダック・ウォーク」、その全てが革命と言えるだろう。
とりわけ特徴的なギター・リフについては、これも数多のアーティストに影響を与え、幾度と無く模倣されているので、 「もしもギター・リフに印税が入るのならば、チャック・ベリーは世界一の金持ちだ」というコメントまであるくらいだ。
1964年、ビートルズやローリング・ストーンズ等の人気バンドがベリーの曲をカヴァーしたため、ベリー自身の人気も再浮上する。シングル「ネイディーン」(全米23位)、「ノー・パティキュラー・プレイス・トゥ・ゴー」(全米10位)、「ユー・ネヴァー・キャン・テル」(全米14位)等がヒットする。
- 1972年:アルバム『ロンドン・チャック・ベリー・セッションズ』(全米8位)、シングル「マイ・ディンガリング」(全米1位)、「リーリン・アンド・ロッキン」(全米27位)がヒットする。
- 1979年:脱税の罪で逮捕されるが、年内に釈放される。
- 1981年:初の来日コンサートを行う。
- 1986年:ロックンロールの殿堂入りを果たし、セントルイスで生誕60周年記念コンサートを行う。
- 2000年:ケネディ・センター賞を受賞する。
- 2005年:著作権を侵害されたとしてカラオケ業社3社を訴える。
[編集] ディスコグラフィ
[編集] シングル
発表年 | 曲名 | チャート | ||
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US Hot 100 | US R&B | UK | ||
1955 | Maybellene (A-Side) | #5 | #1 | |
→ Wee Wee Hours (B-Side) | #10 | |||
1955 | Thirty Days | #2 | ||
1955 | No Money Down | #8 | ||
1956 | Roll Over Beethoven | #29 | #2 | |
1956 | Too Much Monkey Business | #4 | ||
→ Brown Eyed Handsome Man (B-Side) | #5 | |||
1956 | You Can't Catch Me | |||
1957 | School Days | #3 | #1 | #24 |
1957 | Oh Baby Doll | #57 | #12 | |
1957 | Rock and Roll Music | #8 | #6 | |
1958 | Sweet Little Sixteen | #2 | #1 | #16 |
1958 | Johnny B. Goode | #8 | #2 | |
1958 | Beautiful Delilah | #81 | ||
1958 | Carol | #18 | #9 | |
1958 | Sweet Little Rock and Roller (A-Side) | #47 | #13 | |
→ Jo Jo Gunne (B-Side) | #83 | |||
1958 | Merry Christmas Baby (A-Side) | #71 | ||
→ Run Rudolph Run (B-Side) | #69 | #36 | ||
1959 | Anthony Boy | #60 | ||
1959 | Almost Grown (A-Side) | #32 | #3 | |
→ Little Queenie (B-Side) | #80 | |||
1959 | Back In The USA (A-Side) | #37 | #16 | |
→ Memphis, Tennessee (B-Side) | #6 | |||
1959 | Broken Arrow | #108 | ||
1960 | Too Pooped To Pop (Casey) (A-Side) | #42 | #18 | |
→ Let It Rock (B-Side) | #64 | #6 | ||
1960 | Bye Bye Johnny | |||
1960 | I Got To Find My Baby | |||
1960 | Jaguar and Thunderbird | #109 | ||
1961 | I'm Talking About You | |||
1961 | Come On (A-Side) | |||
→ Go Go Go (B-Side) | #38 | |||
1963 | Diploma For Two | |||
1964 | Nadine | #23 | #27 | |
1964 | No Particular Place To Go | #10 | #3 | |
1964 | You Never Can Tell | #14 | #23 | |
1964 | Little Marie | #54 | ||
1964 | Promised Land | #41 | #26 | |
1965 | Dear Dad | #95 | ||
1965 | It Wasn't Me | |||
1966 | Ramona Say Yes | |||
1967 | Laugh and Cry | |||
1967 | Back to Memphis | |||
1967 | Feelin' It | |||
1968 | Louie to Frisco | |||
1969 | Good Looking Woman | |||
1970 | Tulane | |||
1972 | My Ding-A-Ling (live) | #1 | #42 | #1 |
1972 | Reelin' and Rockin' (live) | #27 | #18 | |
1973 | Bio | |||
1975 | Shake, Rattle and Roll | |||
1979 | California |
*イギリスで発表されたシングルは全てがアメリカ盤と同時に発表されたわけではない。また、A面/B面の配置が異なった物も存在する。
*ビルボードは1964年にR&Bシングル・チャートを発表しなかったため、NadineからPromised Landまでがチャートから外れている。
[編集] スタジオアルバム
- Rock, Rock, Rock (with The Moonglows and Flamingos) (1956)
- After School Session (1958)
- One Dozen Berrys (1958)
- Chuck Berry Is on Top (1959)
- Rockin' at the Hops (1960)
- New Juke-Box Hits (1961)
- Chuck Berry Twist (1962)
- Chuck Berry's Greatest Hits (1964)
- Two Great Guitars - Bo Diddley & Chuck Berry (with Bo Diddley) (1964)
- St. Louis to Liverpool (1964)
- Chuck Berry in London (1965)
- Fresh Berry's (1966)
- From St. Louie to Frisco (1968)
- Back Home (1970)
- San Francisco Dues (1971)
- The London Chuck Berry Sessions (1972)
- Bio (1973)
- Sweet Little Rock and Roller (1973)
- Wild Berrys (1974)
- Flashback (1974)
- Chuck and His Friends (1974)
- Chuck Berry (1975 album)|Chuck Berry (1975)
- Rock It (1979)
- Alive and Rockin' (1981)
- "Retro Rock" - Chuck Berry - Broadcast Week (1982)
- Chuck Berry (1982)
[編集] ライヴアルバム
- Chuck Berry on Stage (1963)
- Chuck Berry in Memphis (1967)
- Live at the Fillmore Auditorium (1967) (bonus tracks included on 1994 re-release)
- Concerto in B. Goode (1969)
- Chuck Berry Live in Concert (1978)
- Chuck Berry Live (1981)
- Toronto Rock 'N' Roll Revival 1969 Vol. II (1982)
- Toronto Rock 'N' Roll Revival 1969 Vol. III (1982)
- Hail! Hail! Rock 'N' Roll (1987)
- Live! (2000)
- Live on Stage (2000)
- Chuck Berry - In Concert (2002)
[編集] アンソロジー
- Chuck Berry's Golden Decade (1967)
- Chuck Berry's Golden Hits (1967)
- Chuck Berry's Golden Decade Vol. 2 (1973)
- Chuck Berry's Golden Decade Vol. 3 (1974)
- Chuck Berry's Greatest Hits (1976)
- The Best of the Best of Chuck Berry (1978)
- Chuck Berry's 16 Greatest Hits (1978)
- Chuck Berry All-Time Hits (1979)
- The Great Twenty-Eight (1982)
- 20 Hits (1983)
- Reelin' Rockin' Rollin' (1983)
- Rock 'N' Roll Rarities (1986)
- The Chess Box (Box Set) (1988)
- On the Blues Side (1994)
- Roll Over Beethoven (1996)
- Let It Rock (1996)
- The Best of Chuck Berry (1996)
- Guitar Legends (1997)
- Chuck Berry - His Best, Vol. 1 (1997)
- Chuck Berry - His Best, Vol. 2 (1997)
- The Latest & The Greatest / You Can Never Tell (1998)
- Live: Roots of Rock 'N' Roll (1998)
- Rock & Roll Music (1998)
- 20th Century Masters - The Best of Chuck Berry (1999)
- Johnny B. Goode (Legacy) (2000)
- Anthology (2000)
- Blast from the Past: Chuck Berry (2001)
- Johnny B. Goode (Columbia River) (2001)
- Gold (2005) - Simply 2000's Anthology Repackaged
[編集] 外部リンク
- 公式サイト
- Official ChuckBerry.com Messageboard
- Chuck Berry Collector's Guide - Most complete discography.
- "Hail! Hail! Rock and Roll" - All-star concert, documentary, tribute film
- Website links for Chuck Berry
- Chuck Berry Fields for ever, ministry of Brazil on Gilberto Gil's website
- 100 Chuck Berry Pictures
- Chuck Berry at Rolling Stone
カテゴリ: アメリカ合衆国のミュージシャン | ロックの殿堂 | 1926年生