ダイオキシン
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ダイオキシン(dioxin)は、IUPAC命名法の定義に基づいた有機化合物の名称で、環内に酸素原子を二つ含む六員環不飽和含酸素複素化合物を指す。単環のダイオキシンは不安定な為に存在せず、ベンゾパラダイオキシンのように複合環化合物など構造の一部となっている。
また、環境問題においてダイオキシンは、ジベンゾパラダイオキシン(Dibenzo-1,4-dioxin)の誘導体であるポリ塩化ジベンゾパラジオキシンの別称として用いられ、あるいはポリ塩化ジベンゾフランなども含めてダイオキシン類と総称される。ダイオキシン類は塩素を含む物質の不完全燃焼や、薬品類の合成の際、意図しない副生成物として発生する物質であり、炭素・酸素・水素・塩素などより形成される。
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[編集] ダイオキシン類
[編集] ダイオキシン類として規制されている物質
- ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDD) : 75種類の異性体
- ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF) : 135種類の異性体
- コプラナーポリ塩化ビフェニール(コプラナPCB) : PCBのうち塩素原子が分子の外側を向き平面状分子となっているもので、一般のPCBより毒性が高い。29種類の異性体
ダイオキシン類は、非意図的に発生する物質であり、主に、一般ごみ、産業廃棄物の焼却過程で発生するほか、山火事や火山活動などの自然現象などによっても発生する。燃焼で生成したダイオキシン類は、大気中に放出され、あるいは灰の中に残留するものが問題視されている。
一方で横浜国立大学の益永らは、過去に環境中に排出されたダイオキシン類として塩素系農薬ペンタクロロフェノールおよびポリクロロフェニルニトロフェニルエーテルの副生成物が主要な発生源であり、この過去の農薬によるダイオキシンが海に運ばれ魚を通じヒトに影響しているという推定を明らかにした。この過去の排出の影響は現在の焼却過程によるものの4倍ほどとなっているという。
[編集] ダイオキシンの生物への影響
生物の体内への吸収経路
- 経口 : 脂に溶けやすいことから、それが食料として生物に摂取され、入り込むと代謝や排出がされにくいことから、食物連鎖の上位生物の体内でより濃縮される。
- 経気道 : 気体や微細な粉塵となったものを呼吸によって吸い込む。
- 経皮 : 皮膚に付着した粉塵や気体などを皮膚表面から吸収する。
ベトナム戦争時の枯葉剤に副産物として含まれることになり、強い催奇性で注目されることとなった。
高濃度暴露の動物実験では、急性毒の面を見ると動物の種類および系統により大差があり、もっとも敏感なモルモットに対する半数致死量とハムスターに対する半数致死量は8000倍も異なっている。そのため人間に対しどの程度の急性毒性があるのかの推定は文献によってさまざまで現在研究中である。
慢性毒の面としては催奇性の他、発がん性・肝毒性・免疫毒性・生殖機能の異常などが引き起こされた。これらの毒性の多くは細胞内に存在する特異的受容体(ダイオキシン受容体と呼ばれる)を介して引き起こされると考えられている。また、環境中に低濃度に存在する場合、自然には分解されにくく、生物濃縮により脂肪に蓄積され代謝などによる排出がされにくいことから監視が必要と考えられている。低濃度での慢性毒性については、2005年現在研究中である。しかし、ヒトに対する疫学調査からはクロルアクネ(ダイオキシン暴露により発生する特異なニキビ)以外はどのような健康被害があるか、下記の2,3,7,8-TCDDのわずかにある発ガン性についてを除いては何もわかっていない(詳細は外部リンクを参照のこと)。
なお、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾパラダイオキシン (Tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)) はWHOの付属機関国際がん研究機関 (IARC) よりヒトに対して発癌性がある (Group1) と認定されている。なお、その他のダイオキシン類は疫学調査Group3(発ガン性有無について分類できない)としている。
[編集] ダイオキシン類の生成の防止・分解と環境への放出防止
ダイオキシンの物性
- 水に溶けにくい。
- 油脂類に溶ける。
- 自然には分解しにくい。
- 800℃以上の高温での完全燃焼により分解可能であるが、300℃程度の温度で「デノボ合成」により再合成される。
<底質ダイオキシン類汚染の現状>
川や海の底にたまったヘドロ(以下、底質と言う)にダイオキシン類が蓄積していることが次第に明らかになっている。 工業都市及びかつて農薬を多用した農地並びに、廃棄物焼却場などの周辺水路の下流河川において環境基準を大きく上回る底質ダイオキシン類が検出されている。 自治体によっては底質の深度方向の調査を行わないで、底質の表層のみだけを調査を行いデーターを公表していることが散見されるが、強風時等に底質が巻き上がり、食物連鎖を通じてヒトへの健康影響が懸念される。
[編集] 焼却炉や電気炉などの対策
800℃以上の高温での保持時間を長くし完全燃焼させ、300℃程度の温度の滞留時間を短くするため急速冷却し、活性炭により生成された微量のダイオキシン類を吸着しバグフィルターでろ過してから再加熱し大気中に放出している。また、灰や活性炭などは固化処理などを行いダイオキシン類や重金属類などの溶出を防止している。処理した固化物などは管理型最終処分場に埋め立て処分することが定められている。
[編集] ダイオキシン騒動
過去に、どんなものを燃やしてもダイオキシンが発生すると騒がれたが、ダイオキシンは塩素を含む物質が不完全燃焼したときに発生する物質である。またその発生量は、燃やした物質に含まれる塩素濃度が0.1~50%程度の場合は濃度にはほとんど関係なく、燃焼条件で決定される。
[編集] 日本でのダイオキシン騒動の例
豊能郡美化センター(能勢町、豊能町) 詳細内容については「豊能町」の項を参考のこと。
[編集] 底質汚染
ダイオキシンは河川や港湾の底質に蓄積されている。たとえば大阪の神崎川や港湾地区に環境基準を大きく超えた底質ダイオキシン類汚染は検出されている。 また、魚介類に含まれるダイオキシン類濃度は東京湾やその河口部に生息する魚や貝に比較的高濃度で検出されている。 食物連鎖の頂点に生きるヒトの種を存続させる中心的存在である妊婦が、魚介類を食べ過ぎないように農林水産省や厚生労働省が注意を喚起している現実に留意する必要があろう。 全国で底質ダイオキシン類汚染の改善に取り組まれているところは富山県の富岸運河、埼玉県の古綾瀬川、東京都の横十軒川、大阪府の神崎川、島根県の馬潟団地水路などがあり、浚渫や固化などの浄化対策をはじめ、技術の開発や費用の適正な負担などが検討されている。