イングヴェイ・マルムスティーン
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イングヴェイ・マルムスティーン(Yngwie J. Malmsteen、本名Lars Johan Yngve Malmsten、1963年6月30日 - )は、スウェーデン・ストックホルム出身のミュージシャンであり、ロック・ギタリスト。ロック・ギターにクラシック音楽の要素を盛り込み、当時としては驚異的な速弾きでギター奏法に大革命をもたらした。マイケル・シェンカーの「神」に対して「王者」と呼ばれる。 先祖が貴族、正確には伯爵であるとされる。
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[編集] 略歴
父と早くに離別し、画家の母に育てられる(Malmsteenは母方の姓。ちなみに父方はLannerbäck)。スウェーデン時代のプレイに感銘を受けたシュラプネル・レーベルのマイク・ヴァーニーの招きで渡米。本人の話によるとこの時の旅費は母リグマーが工面してくれたらしい。当初は馬小屋のような宿舎をあてがわれて大変な思いをしたという。1983年、スティーラーに加入してデビューした後、グラハム・ボネット率いるアルカトラスで名声を得、脱退後自らのバンド、ライジング・フォースを立ち上げる。1987年に交通事故に遭い、昏睡状態に陥る重症を負ったが、奇跡的に復活を遂げる。1989年にライジング・フォースを解散させ、その後はソロ名義で活動していたが、1999年のアルバム「ALCHEMY」以降は再びライジング・フォース名義で活動中。
ジミ・ヘンドリックス、ウリ・ジョン・ロート、ジェネシス、ディープ・パープル等の影響が強く、リッチー・ブラックモアが初期レインボーで展開した様式美路線を極端化させた作風で欧州や日本における人気を確立した。
[編集] プレイ・スタイル
楽曲の特徴は、古典的なハードロックにハーモニックマイナースケール(和声的短音階)のアルペジオを主とした高速なギター・ソロが加わる所である。エドワード・ヴァン・ヘイレンのように、特殊な新技術を生み出したわけではなく、あくまでスタンダードなフォームに基づく奏法を究極のレベルで完成させたところに特徴がある。インストゥルメンタルに於いては、大部分がインプロヴィゼーションに基づいている。その超絶なスケーリングは、19世紀の名バイオリニストであるニコロ・パガニーニの技巧に多大なる影響を受けたとされる。
自らが7歳の時にテレビで観てギターを始めるきっかけになったとされるジミ・ヘンドリックスからの影響はステージ以外ではあまり感じられず、むしろ彼のスケーリングやジミの解釈に多大なヒントを与えたのはウルリッヒ・ロートであるとの認識が一般的。マルムスティーン自身は(スウェーデン時代に初期スコーピオンズをカバーしていた映像が残っているにもかかわらず)ウルリッヒからの影響を初期には否定していたが、現在は肯定に転じ、敬愛するギタリストの一人として挙げている。(一説には、1993年頃「ウリ・ロートがドイツのテレビに出演して演奏したビデオ」をYOUNG GUITAR誌がマイアミの自宅に持参した頃から、影響を認め始めた、と言われている。)
彼からの影響を認めたがらないフォロワーたちにより否定されることもあるが、ロック・ギターにメロディアスな速弾きを持ち込み、革命を起こした天才である事実は疑う余地もない。但し、現在に至るまで作品に大きな変化がないことから「マンネリ」と批評する向きもある。また、1987年の交通事故以来、ギタープレイにかつて無い「荒れ」が見られ始め、ギタープレイにおけるそれを指摘する者も少なくない。なお、速弾きばかりが強調されがちであるが、メロディのセンスも秀逸で、かつブルースの演奏も素晴らしく、テクニックのみに走らずロック・ギタリストであり続けようとする姿勢にもデビュー以来変化はない。
使用機材は一貫してフェンダー・ストラトキャスターとマーシャル・アンプで、リッチー・ブラックモアの影響が大きい。ストラトキャスターから発せられる、滑らかだが芯のあるサウンドでの速弾きは他のプレーヤーたちとは一線を画す。
ちなみに、嫌いな音楽は数あれど特に好きではないのはフュージョンだといわれている。理由は「ベースが調子に乗って前に出ているから」であるという。
[編集] 身分・家柄
先祖がスウェーデンの貴族である。彼の先祖は1622年に銀の鉱山を発見し、その功績を称えられてスウェーデン国王から伯爵の位を与えられた。マルムスティーンの姓はこれにちなみ、「マルム」=「銀の」、「スティーン」=「鉱石」に由来するといわれる。現在、彼の自宅には伯爵の紋章が飾られている。これをモチーフにした曲が Overture 1622 (『MAGNUM OPUS』収録)である。 これに関して、マルムスティーンがブルース・ディッキンソン(アイアン・メイデン)に「先祖が貴族なんだ」と言ったところ、「それがどうした?」と軽くあしらわれ激怒したという逸話がある。ブルースは労働者階級の出から努力して大学も卒業したイギリス人であり、自慢する相手が間違っている。
[編集] ディスコグラフィ
[編集] スティーラー
- Steeler(1983)
[編集] アルカトラス
- アルカトラス - Alcatrazz(1983)
- ライヴ・センテンス - Live Sentence [ライブ](1984)
[編集] ソロ名義
- ライジング・フォース - Rising Force(1984)
- トリロジ- - Trilogy(1986)
- トライアル・バイ・ファイアー:ライヴ・イン・レニングラード - Trial By Fire: Live In Leningrad [ライブ](1989)
- エクリプス - Eclipse(1990)
- ファイヤー・アンド・アイス - Fire And Ice(1992)
- セブンス・サイン - The Seventh Sign(1994)
- アイ・キャント・ウェイト - I Can't Wait [MCD](1994)
- マグナム・オーパス - Magnum Opus(1995)
- インスピレーション - Inspiration [トリビュート](1996)
- フェイシング・ジ・アニマル - Facing The Animal(1997)
- ライブ!! - Live!! [ライブ](1998)
- エレクトリックギターとオーケストラのための協奏組曲 変ホ短調『新世紀』 - Concerto Suite for Electric Guitar and Orchestra in E flat minor Op.1 -Millenium-(1998)
- アンソロジー 1994-1999 - Anthology 1994-1999 [コンピレーション](2000)
- エレクトリックギターとオーケストラのための協奏組曲 変ホ短調:コンチェルト・ライヴ・イン・ジャパン・ウィズ・新日本フィルハーモニー交響楽団 - Concerto Suite for Electric Guitar and Orchestra in E flat minor LIVE with the New Japan Philharmonic [ライブ](2002)
- ザ・ジェネシス - The Genesis [デモ集](2002)
- 王者烈奏~インストゥルメンタル・ベスト・アルバム - Instrumental Best Album [コンピレーション](2004)
[編集] ライジング・フォース名義
- マーチング・アウト - Marching Out(1985)
- オデッセイ - Odyssey(1988)
- アルケミー - Alchemy(1999)
- ウォー・トゥ・エンド・オール・ウォーズ - War To End All Wars(2000)
- アタック!! - Attack!!(2002)
- アンリーシュ・ザ・フューリー - Unleash The Fury(2005)
[編集] 趣 味
強いて言えば、自慢。 ギター自慢、貴族自慢、愛車自慢・・・。 ちなみに、車はフェラーリをこよなく愛す。ギターにステッカーを貼っているのをよく見かける。
[編集] 歴代の名言(迷言)
音楽雑誌等における彼の発言を以下に列挙する。
『俺はルックスは悪くないし、金持ちだし、有名だ。』
『スウェーデンでは俺は嫌われてるんだ。理由は俺が成功していて金持ちだからさ。』
『俺のスタイルに影響を受けたギタリストが大勢いることは光栄だけど、それを自分のスタイルだと主張する奴等があまりにも多すぎる。』
『ジョー(リン・ターナー)がソウルメイトだって?あんなヤツがソウルメイトだなんて聞いてあきれるよ』
『リッチーのいないディープ・パープルは成立しないよ。リッチーの代わりになれるのは俺だけだ。』
『カモン・ベイベー!イエイ!ロックンロール!なんて歌詞は大嫌いだ!』(2005年)
『バッハが死んでから誰も作曲はしてこなかった。みんなバッハの真似なんだ。それ以後、初めて作曲をしたのは俺なのさ。』
『俺の音楽が分からない奴等はクズ』
『イングヴェイが駄目なら他へ行っちまえ』("Yngwie or Highway" ※イング-WAYという発音を利用した掛詞)
『俺はいつも奴等(メンバー)に言っているんだ。 「ヘマをするんじゃない。やるべきことをやっていれば個人的評価も得られるようになる!」 ってね。確かに俺のバンドのメンバーでいるってのは、難しいシチュエーションだと思う。俺はリーダー以上の存在… いわば「絶対的存在」だからね!』
脱退した(解雇した)メンバーについては、ほぼ例外なく激しくこき下ろしている。しかし近年は、脱退後もマーク・ボールズやデレク・シェレニアンらの実力を誉めるなど、軟化した態度も見られる。
[編集] 時代別関係者
バンドメンバー構成はアルバムごとに大幅に替わり、安定して在籍するメンバーは基本的に存在しない。第四期ライジング・フォース期の編成(イェンス&アンダース・ヨハンソン兄弟、ジョー・リン・ターナー)が所謂「黄金期」と目されている。また、ツアー中にメンバーが替わることもある。
- ヴォーカル
- ジェフ・スコット・ソート→マーク・ボールズ→ジェフ・スコット・ソート→ジョー・リン・ターナー→ヨラン・エドマン→マイク・ヴェセーラ→マッツ・レヴィン→マーク・ボールズ→ヨルン・ランデ→マーク・ボールズ→ドゥギー・ホワイト
- ベース
- マルセル・ヤコブ→ウォーリー・ヴォス→バリー・ダナウェイ→スヴァンテ・ヘンリソン→バリー・スパークス→バリー・ダナウェイ→ランディ・コーヴェン→ミック・セルヴィーノ→ルディ・サーゾ→ミック・セルヴィーノ
- ドラム
- バリモア・バーロウ→アンダース・ヨハンソン→マイケル・フォン・ノリング→ピート・バーナクル→ボー・ワーナー→マイク・テラーナ→シェーン・ガラース→トミー・アルドリッジ→コージー・パウエル→ヨナス・オストマン→ジョン・マカルーソ→ティム・ドナヒュー→パトリック・ヨハンソン
- キーボード
- イェンス・ヨハンソン→マッツ・オラウソン→デレク・シェリニアン→ヨアキム・スヴァルベリ
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- Official Homepage
- Yngwie J.Malmsteen Mega Fan Site!(日本のファンサイト)
- イングヴェイ名言集(音楽雑誌のインタビューでの名言集)