イリオモテヤマネコ
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イリオモテヤマネコ | ||||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||
Felis iriomotensis Prionailurus bengalensis iriomotensis |
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和名 | ||||||||||||||||||||
イリオモテヤマネコ | ||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||
Iriomote Cat Iriomote Wild Cat |
イリオモテヤマネコ(西表山猫)は、八重山諸島の西表島(沖縄県)だけに生息するネコ科の動物である。
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[編集] 発見の経緯
現地では「ヤママヤー」(山にいるネコ)「ヤマピカリャー」(山で光るもの)として以前から存在が知られていたが、ノネコ(イエネコが野生化したもの)ではないかとも言われていた(現地でのもう1つの呼び名である「ピンギーマヤー」は、「逃げたネコ」という意味である)。
沖縄の本土復帰に先立つ1965年3月、動物作家の戸川幸夫が、苦心の末に標本(頭骨と毛皮)を入手、これを元に研究が進められた。1967年、オスメス各1体が生け捕られ、同年、国立科学博物館動物部長の今泉吉典によって、新属新種として命名、学会に発表された。
野生ネコの新種(当時)が発見されるのは70年ぶりのことであり、20世紀最大の生物学的発見とまで言われた。西表島は面積が290平方kmほどで、これはヤマネコの住む島としては(またヤマネコの生息域としても)世界最小である。
[編集] 分類と系統
学会発表時は、食肉目ネコ科イリオモテヤマネコ属の1属1種 Mayailurus iriomotensis とされた。発表当時、今泉はこれを中新世から鮮新世にかけて中国で栄えた化石群であるメタイルルス属と近縁の、いわゆる「生きた化石」であると主張した。しかし、国外の専門家には、当時よりこれを疑問視し、新しい種であることは認めるにせよ、より普通のヤマネコ類に近いものであるとの意見は出ていた。今泉は、その後も先の説を主張し、ここに若干の混乱が生じたこともあった。
その後、ネコ科ネコ属の1独立種 Felis iriomotensis と見なすのが一般的となり、後述の環境省レッドリストにも、この学名で登録されている。
さらに、最近の遺伝子研究により、南~東南アジア大陸に分布するベンガルヤマネコ(ネコ科ネコ属 Felis またはPrionailurus 属)にとても近縁であることが明らかになった。 ベンガルヤマネコは大陸に広く分布し、種内での遺伝子の変異が大きいことに鑑みて、イリオモテヤマネコもベンガルヤマネコの1亜種であるとする説が優勢であり、IUCN(国際自然保護連合)が編纂したレッドリストでも、亜種の扱いとなっている。
形態・生態の両面でユニークな特徴をもつイリオモテヤマネコは、西表島を含む島々が大陸から切り離された20万年ほど前にベンガルヤマネコから分岐して独自の進化を遂げ、遺伝的に固定化されたものと考えられる。
なお、日本には、ノネコを除けば、野生のネコ科動物は、対馬のツシマヤマネコと西表島のイリオモテヤマネコしか生息しない。
[編集] 形態と生態
大きさはイエネコとほとんど変わらないか、少し大きい。頭胴長 50-60 cm 、尾長 23-24 cm、体重 3-5 kg。オスの方がメスよりやや大きい。
体の形態には原始的な特徴を残し、イエネコよりもずんぐりしている。胴が長く、四肢は太く短い。体背面・側面は暗褐色で腹面は淡色、側面には、灰褐色の地に、不明瞭な暗色の小さな斑紋が散在する。肉球はイエネコより大きい。尾も太く、先端にいくほど被毛がふさふさとして、見かけの上ではより太くなっている。鼻鏡が大きく、後頭部から額、眼の周りに、白と黒の縞が走っている。耳介の先は丸く、先端に房毛はない。耳の背面には、多くのヤマネコ類と同様、「虎耳状斑」と呼ばれる、黒色で縁取られた白い斑紋がある。歯は28本で、イエネコなど多くのネコ類より、上顎前臼歯が1対少ない。
生態等については未だ不明の部分が多い。半夜行性で、長期間つがいで行動する繁殖期以外は、単独で暮らす。主に沿岸部周辺の比較的標高の低い地域に生息し、湿地や川辺を好む。地上で暮らすが、木登りや泳ぎは巧みである。食性は幅広く、鳥類、クマネズミ、トカゲ、ヘビ、カエル、エビ、サワガニ、昆虫類などを捕食し、ときにイノシシの子どもなども捕える。人に育てられた個体(後述の「ケイ太」)は、肉類のほかに、草(チガヤの若草)を毎日食べていた。水を嫌わず、潜水して獲物を捕える習性は、ヤマネコ類の中でもきわめて特異である。普通のヤマネコがするような鳥の羽根むしりや、多くのネコ類に見られる、獲物の脊髄に牙をさしこんで神経を切断する素早く確実な獲物の殺害法は知らないと見られる。島には天敵はなく、唯一の肉食哺乳類として、島の生態系(食物連鎖)の頂点に立つ。
寿命は飼育下で8-9年であり、野生状態ではもっと短いと思われる。1979年、親ネコとはぐれ、生後約5週齢で保護されたオスの個体「ケイ太」は、沖縄こどもの国動物園水族館で飼育され、老衰で死ぬまで、13年間生きている。
[編集] 保護と研究の経緯
[編集] 保護対象としての指定
イリオモテヤマネコの生息数は、1985年と1994年の調査で、ともに100頭前後と推定され、この間の急激な変化はないものと考えられている。一方で40-100頭との説もあり、絶滅の恐れのある希少動物であることは間違いない。
イリオモテヤマネコは、琉球政府(当時)指定の天然記念物を経て、1972年5月15日、沖縄の本土復帰とともに国指定の天然記念物に、さらに1977年3月15日には特別天然記念物に指定されている。
また、1994年には、「国内希少野生動植物種」に指定されている(1月28日政令公布、3月1日施行)。国内希少野生動植物種は、生物多様性条約の批准を機に、1992年に制定、1993年4月1日より施行された「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」による保護対象種である。イリオモテヤマネコは、長い間、同時に指定されたツシマヤマネコとともに、哺乳類としては唯一の「種の保存法」による保護対象種であった(後にダイトウオオコウモリとアマミノクロウサギがこれに加えられた)。「種の保存法」の下、イリオモテヤマネコの保護増殖事業、調査研究の実施、普及啓発等の業務を統合的に推進するための拠点施設として、西表島に「西表野生生物保護センター」が設置されている。
その後、イリオモテヤマネコは絶滅危惧IB類(環境省レッドリスト)にも指定されている。
イリオモテヤマネコは国際保護動物でもあり、IUCNのレッドリストでは、「絶滅危惧亜種」とされている。
[編集] 交通事故死
本土復帰、1975年の海洋博を経て、沖縄地方への観光客が増加するとともに、西表島にも開発の波が押し寄せた。1977年には島の東西を結ぶ道路が開通したが、自然保護の観点から、島の横断道路建設計画は実現に至らなかった。
イリオモテヤマネコの交通事故死は、例年数件が報告されており、1988年には県が「ヤマネコ注意」の看板設置を開始、2001年に「非常事態宣言」が出されている。
[編集] ノネコ等の問題
上記のような交通事故や、開発に伴う原生林の伐採、湿地の開発といった人間の手による自然環境の改変と並んで、イリオモテヤマネコ存続のために懸念される要因は、野生化/半野生化したイエネコの存在である。食物を奪い合う競合関係による圧迫のほか、イエネコとの接触によるFIV(ネコ免疫不全ウイルス、いわゆるネコエイズ)感染症をはじめとする悪性伝染病への感染や、交雑による純血個体の減少も考えられる。2000年、地元の市民団体などによる調査で、西表島の飼いネコ3匹からFIVが検出され、イリオモテヤマネコへの感染が懸念されたため、翌2001年、竹富町では、飼いネコの登録を義務づける「ネコ飼養条例」が制定された。
また、島内数百か所に仕掛けられたイノシシ罠にかかって命を落としている個体があることも、ほぼ確実と見られており、イヌによる捕食も無視できない。さらに、2001年には、耳腺などから強い毒液を分泌するオオヒキガエルが島に入り込んでいることが判明し、ヤマネコへの被害を防ぐために、駆除活動が行われている。
[編集] 行政の取り組み
1978年、イギリスのエジンバラ公より日本の皇室に宛てて、イリオモテヤマネコの保護を訴える手紙が寄せられたが、この手紙の付属報告書に、住民の島外退去の提案などがあったため、地元の反発を招くこととなった。同じ年に、環境庁(当時)はイリオモテヤマネコへの給餌作戦を開始し、幼獣生存率の上昇を図っている。 また、1983年、発信器のついた首輪で野生動物の位置を調べるテレメトリー調査が開始され、イリオモテヤマネコも対象とされた。
1995年7月12日には、環境庁(当時)の施設として「西表野生生物保護センター」が開設され、以来、野生生物へ理解を深めるための普及啓発活動、絶滅の恐れのある野生動物の保護繁殖事業や調査研究などを行っている。
1991年3月より、「西表島森林生態系保護地域」が設定され、地域内の自然環境保護が図られている。しかしその一方で、国と県は、保護地域外の国有林(イリオモテヤマネコの生息地を含む)について農地開発計画を進めることで、自然保護論者の非難を集めており、このことから「種の保存法」そのものの不備を指摘し、一部改善を求める論者もある。
[編集] 遺伝子研究
1994年以降、ミトコンドリアDNAの分析が進んだ結果、イリオモテヤマネコはベンガルヤマネコと近縁であることが判明した。また、イリオモテヤマネコは遺伝学的多様性が乏しいことも明らかになっている。
[編集] イリオモテヤマネコが登場する作品
イリオモテヤマネコを解説する本は非常に数多い。
それ以外のものとしては以下のようなものがある。
- 『あずまんが大王』(単行本では4巻に登場)(1999年-2002年、あずまきよひこ)
- 『とびだせ漂流家族』(2001年-2003年、小坂俊史)
- 『幕張サボテンキャンパス』(単行本では2巻に登場)(1994年-2003年、みずしな孝之)
- 『NEKO2』(岡崎二郎)
- 『ブラック・ジャック』(登場する話は『オペの順番』)(手塚治虫)