UH-60 ブラックホーク
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概要 | |
任務 | 多目的(輸送や強襲) |
乗員 | 最低2名 |
寸法 | |
全長 | 19.76 m |
全高 | 約3.7 m |
ローター直径 | 16.36 m |
重量 | |
非装備時 | 10.1 トン |
最大離陸重量 | 11,113 kg |
性能 | |
最高速度 | 約357 km/時 |
戦闘行動半径 | 約680 km |
最大航続距離 | 約2,220 km |
実用上昇限度 | 5,790 m |
上昇率 | 3.6 m/s |
武装 | 固定武装無し ドアに12.7mm重機関銃M2を装備可能 両側面の窓にMAG7.62mm機関銃を装備可能 |
初飛行 | 1974年10月 |
UH-60 ブラックホークは、シコルスキー社製の中程度積載能力を持つ多目的または強襲用ヘリコプターであり、20ヶ国以上で使用されている。民間型として武装を省略したS-70も販売されている。
目次 |
[編集] 概要
UH-60 ブラックホークは1972年にアメリカ陸軍が提示したUTTAS(汎用戦術輸送機システム)構想により、傑作であるUH-1 イロコイの後継機として開発された。3つのプロトタイプが試作され、初飛行は1974年10月に行われ、競争相手だったボーイング・バートル社の設計よりも評価された。ブラックホークの製造が決定し、1979年UH-60Bがアメリカ軍で使用され始めた。基本設計においては、戦略輸送機C-5ギャラクシーに搭載が可能であるよう、10tトラックと同じ容積、重量であることが求められている。またキャビン容積としては完全武装の歩兵1個分隊約10名が搭乗可能なスペースを要求されていた。
ブラックホークは航空騎兵隊(空挺部隊)、電子戦、MEDEVAC(医療救急)などの幅広い任務で活動することができる。エアフォースワンならぬマリーンワンとしてアメリカ大統領を運ぶことさえある。空からの強襲作戦では1分隊11名とその装備か、105-mm榴弾砲(M102)と砲弾30発と6人の操作要員を、同時に運搬することもできる。2,600ポンド(1,170キログラム)の積荷、ヘリで吊り下げる形であれば9,000ポンド(4,050キログラム)の積荷を運ぶこともできる。またESSSを裝着することにより追加される左右2箇所ずつのハードポイントにAGM-114ヘルファイア対戦車ミサイル4連装ランチャー、2.75インチ(約70mm)19連装ロケット弾ポッド、ガンポッド、増槽などを搭載することもできる。このためAH-64 アパッチの開発費が高騰した際にはこれを代わりに利用することも検討された。またブラックホークはGPSなどの最新の航空電子機器を装備している。
アメリカ合衆国海軍は、1983年に海軍仕様のSH-60B シーホーク、1988年にSH-60Fを受け取った。空軍は1982年にMH-60G ペイブホークを、沿岸警備隊は1992年にHH-60J ジェイホークを納入された。それぞれのバージョンによって製造費用も異なる。例えば、UH-60L ブラックホークは590万ドルだが、空軍のMH-60G ペイヴホークは1020万ドルの費用がかかる。民間向けにはS-70の名称で販売されている。
MH-60 ペイヴホークは倒れた航空隊員や戦争中に孤立した人間を救出し回復することを主な目的としてブラックホークを大幅に改造したものである。アメリカ合衆国空軍のMH-60G ペイブホークや沿岸警備隊のHH-60J ジェイホークには、600ポンド(270キログラム)の運搬能力がある250フィート(75メートル)のケーブルをもった救助用の巻き上げ機や脱着可能な空中給油装置が装備されている。ペイヴホークにはサイドワインダーもしくはスティンガーといった空対空ミサイルの搭載も可能となっている。
アメリカ合衆国軍での使用が最も有名だが、他にも日本の自衛隊、アルゼンチン、オーストラリア、バーレーン、ブルネイ、中国、コロンビア、エジプト、イスラエル、マレーシア、メキシコ、モロッコ、フィリピン、サウジアラビア、韓国、台湾、トルコの軍隊でも使われている。
実戦には湾岸戦争、モガディシュの戦闘、アフガニスタン戦争、イラク戦争など、近年のアメリカが関与した戦争・戦闘にはほとんど参加しているが、運用方法から極低空を低速で飛行することが多く、個人携行対空ミサイルや小火器からの対空砲火などの餌食になりやすい。そのため、これらの戦闘によって数多くの機体と兵士を失った。なお、モガディシュの戦闘において、アイディード将軍派の民兵の攻撃によって2機が撃墜された際の顛末は、映画『ブラックホーク・ダウン』において詳細に描かれている。
[編集] アメリカ合衆国国外での採用例
[編集] 日本
現在、アメリカ本国以外では最大のカスタマーである日本の自衛隊では、日本独自の改良を施した機体を三菱重工業がライセンス生産して運用している。日本の自衛隊向けの機種は末尾に"J"が付与されものが多いが、HH-60J ジェイホークは全く無関係である。
[編集] 航空自衛隊
UH-60J 救難ヘリコプター:1990年(平成2)配備開始、31機導入(平成18年現在も調達中)。
- V-107の後継として、アメリカ陸軍のUH-60Aをベースに改良し、赤外線暗視装置、航法気象レーダー、機体側面にバブルウインドウを装備している。、全備重量9,900kg。U-125Aと組んで運用。長らく救難用に白と黄色の塗装であったが、2005年(平成17)生産分からダークブルーの洋上迷彩塗装に更新中である。チャフ/フレア・ディスペンサーを装備してある機体もある。空中受油機能を追加すると共に自衛用の7.62mm機関銃の装備も検討されている。
- 配備基地
- 千歳基地:千歳救難隊
- 秋田分屯基地:秋田救難隊
- 松島基地:松島救難隊
- 百里基地:百里救難隊
- 小松基地:小松救難隊
- 小牧基地:小牧救難隊
- 芦屋基地:芦屋救難隊
- 新田原基地:新田原救難隊
- 那覇基地:那覇救難隊
[編集] 海上自衛隊
UH-60J 救難ヘリコプター:1990年(平成2)配備開始、19機導入(平成18年現在も調達中)。
- S-61の後継として導入。空自の機体とほぼ同じだが、海自独自の装備がある為に全備重量が10,000kgに増えた。こちらは白とレッドオレンジの塗装である。なお、海自では同型の哨戒ヘリSH-60Jも103機採用し、続いてSH-60Kを導入している。
- 配備基地
- 八戸航空基地:第2航空群 八戸救難飛行隊
- 下総航空基地:下総教育航空群 下総教育飛行隊
- 厚木航空基地:第4航空群 厚木救難飛行隊
- 硫黄島航空基地:第4航空群 硫黄島救難飛行隊
- 小月航空基地:小月教育航空群 小月救難飛行隊
- 徳島航空基地:徳島教育航空群 徳島救難飛行隊
- 鹿屋航空基地:第1航空群 鹿屋救難飛行隊
[編集] 陸上自衛隊
UH-60JA 多用途ヘリコプター:1997年(平成9)配備開始、25機導入(平成18年現在も調達中)。
- アメリカ陸軍のUH-60L多用途ヘリをベースに改良した。航空輸送等に使用されることから、J型の赤外線暗視装置、航法気象レーダーに加えて、赤外線排出抑制装置やワイヤー・カッター等、チャフ/フレア・ディスペンサーを追加装備、燃料容量の増加で航続距離を1,295kmに延長。第一混成団や西部方面普通科連隊を那覇駐屯地から先島諸島・尖閣諸島へ機動展開させることが可能になり、日本の防空識別圏のほぼ全てをヘリでカバーできるようになった。装備や燃料は増えたが、全備重量は9,000kgと削減されている。当初米陸軍同様、対戦車ミサイルやロケット・ランチャーの装備する計画だったが、予算の関係で見送られた。
- 配備駐屯地
- 北宇都宮駐屯地:第12旅団 第12ヘリコプター隊 第1飛行隊
- 霞ヶ浦駐屯地:航空学校 霞ヶ浦校
- 立川駐屯地:東部方面航空隊 東部方面ヘリコプター隊
- 明野駐屯地:航空学校
- 滝ヶ原駐屯地:航空学校 教育支援飛行隊
- 那覇駐屯地:第1混成団 第101飛行隊
[編集] 中国
中国ではチベット地域などでの高高度地域航空輸送用器材として、民間型UH-60(S-70)を14機輸入したとされている。
[編集] 登場作品
- 『ブラックホーク・ダウン』(2001.米)
- 『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』 - 自衛隊では無いが、日本国防衛軍の陸軍仕様のH60型が登場。
- 『ULTRAMAN』 - 航空自衛隊のUH-60Jが登場。
- アニメ『よみがえる空 -RESCUE WINGS-』を始めとする『レスキューウイングス』シリーズには、航空自衛隊のUH-60Jが登場。
[編集] 関連項目
- 航空機 - ヘリコプター
- 航空機メーカーの一覧 - シコルスキー社