近鉄12400系電車
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12400系電車(12400けいでんしゃ)とは近畿日本鉄道(近鉄)が所有する特急形車両の1形式。「サニーカー」の愛称がある。
また、本稿ではこの系列の派生系列である12410系電車及び12600系電車についても記す。
なお、12400系の狭軌仕様である16010系については、別項を参照されたい。
翌年1978年より製造の30000系ビスタカーのフラット車という位置づけである。
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[編集] 12400系
[編集] 概要
1977年に登場した4両編成の汎用特急車。12200系12257F~12259Fとして製作される予定だったが、前面行先表示器が特急表示板と一体化され塗り分け変更されるなど先頭形状のデザインを変更し、また車内の居住性の向上のため出入口と客室を仕切るデッキが設置されるなどモデルチェンジを行ったため、別形式となった(竣工翌日に改番届を提出)。なお、この正面のデザインは30000系ビスタカーに部分変更の上、引き継がれている。
デッキと客室の仕切りには「奈良大和路」・「伊勢志摩」のイラストがプリントされている。座席は12200系同様の回転式の簡易リクライニングシートを採用。色彩は全体的に明るいイメージのオレンジ色のものになった。そのため、「サニーカー」の愛称がついたという(のちに座席の色は在来車にも波及)。クーラーキセも連続した一体のものに変更されている。トイレは12200系の和式と洋式の組み合わせから、和式と男子小便所の組み合わせに変更した。洗面所はデッキに設けられている。
足回り性能面では12200系に引き続き、三菱電機製の出力180kWの主電動機が採用されている。台車はMc車、M車(電動車)は近畿車輛製KD-71を、Tc車、T車(付随車)は近畿車輛製KD-71Aを採用した。電動発電機と空気圧縮機は12200系と同様の機種が2両に1台ずつ(付随車)に搭載する。
鉄道友の会ブルーリボン賞を受賞したが、後述の12410系に製造が移行され、3編成12両の小世帯にとどまった。なお、本系列の登場により10100系の一部が廃車となっている。
また、1979年から数度、昭和天皇が利用された際には、当系列が選定され、サ12551号車の車内を改装して御座所を設置、お召し列車に仕立てていた。なお、平成になってからは特別席「デラックスカー」が連結されている21000系などが使用されている。
[編集] 改造
1988年から120km/h運転対応工事が施工された。1997年からは、室内壁紙のグレートーンに変更、客室蛍光灯グローブの取り替え、客室仕切にLEDによる号車案内・禁煙表示器の設置、車外・客室扉付近の号車表示のLED化といった車体更新工事が行われた。1999年に12401Fのパンタグラフを下枠交差形に交換している。
[編集] 12410系
[編集] 概要
1980年に登場。前述の12400系を3両編成仕様に変更した車両。名阪ノンストップ特急用として製作された。東海道新幹線に利用を奪われていた名阪ノンストップ系統もこの時期には利用者が増え、3両での運行が増えていたためである。
前面は標識・尾灯を30000系と同一の物に変更し、パンタグラフも下枠交差形に変更されている。パンタグラフはMc、M車にそれぞれ1基としたが、将来T車を加えた4両編成にする計画があったため、それぞれもう1基増設できるようにしていた。
トイレはMc、M車に、車販基地はM車に設置された。トイレは30000系同様に和式のみで男子小用がなく、洗面所を独立した空間に移した。主電動機は三菱電機製MB-3127-A、出力180kW×4個を採用。台車はMc車、M車は近畿車輛製KD-83を、Tc車は近畿車輛製KD-83Bを採用。電動発電機と空気圧縮機は4両分をまかなえるものをク12510形に搭載した。
なお、1981年に増備された第5編成(12415F)は当初から4両編成で登場し、Mc、M車にはパンタグラフがそれぞれ2基搭載された。補機類の搭載がないサ12560形は床下に冷房装置を取り付け、重心を下げている。
[編集] 改造
第5編成にあわせて、1983年にはT車サ12560形が4両製造され、第1~4編成に組み込まれ、全編成4両化された。
4両化時、12411F~12414Fはパンタグラフを増設する予定であったが、Mc-T-M間に母線を引き通した。そのため、パンタグラフ増設は行わず、1編成2基のままとした。また12415Fも製造時より母線は設置されていたが使用されていなかった。12411F~12414Fの4両化と同時に母線を有効とし、Mc、M車のパンタグラフを1基づつ取り外し、12411F~12414Fと外見上の差をなくしている。
12400系同様、1988年から120km/h運転対応工事が施工された。2000年から12400系と同内容の車体更新工事が始まり、2002年に完了している。登場時より名阪ノンストップ特急に使用されていたが、21000系にその座を譲り、現在では主に阪伊・名阪乙特急に使用されている。
[編集] 12600系
[編集] 概要
1982年に登場。12410系の改良型。京都・橿原線の吊り掛け特急車18000系の置き換え用として登場。京都・橿原線用の特急車として初めて12000番台を名乗ることとなる。
12410系と異なり、最初から4両編成として製作されている。そのため、系列が変更されている。12410系からの変更点は、トイレがMc車からT車へ変更され、定員が変わっており、T車の冷房装置は他系列と同じく屋根上に搭載されている点である。車内の「伊勢志摩」「奈良大和路」のイラストは省略された。トイレについては、サ12750形が和式と洋式の組み合わせで、洗面所はデッキに設置、モ12650形は和式のみで、その向かいに洗面所を設置した。
12400系、12410系同様、180kWの主電動機(三菱電機製MB-3127-A)出力を持ち、台車は12410系に引き続き、Mc車、M車は近畿車輛製KD-83を、Tc車、T車は近畿車輛製KD-83Bを採用している。補機類は、電動発電機がク12700形、空気圧縮機がサ12750形にそれぞれ4両分がまかなえる容量のものが1台ずつ搭載されている。
なお、増備車の12602FはMc車及びM車にパンタグラフ(PT-48系)を2基搭載していたが、Mc-T-M間に母線を引き通すことにより各1基とする改造を受けており、またトイレ・洗面所部分の窓を廃止している。製造は2編成にとどまり、その後の汎用特急車は22000系にモデルチェンジされている。
[編集] 改造・転属
12400系、12410系同様、1988年に最高速度120km/hに引き上げられている。現在は名古屋線を中心に運用されている。2002年に12400系・12410系と同内容の車体更新工事が行われた。
[編集] 関連商品
グリーンマックスよりNゲージ鉄道模型で12400系のキットが発売されている。加工で12410・12600系や切り継ぎで12200系(更なる加工で12000系)も製作可能である。
[編集] 「サニーカー」の名称について
本系列の愛称である「サニーカー」の名称は、鉄道アナリストの川島令三が命名したとされ、当初は近鉄では正式な名称として認めていなかったとされる。これは、当初10400・11400系「エースカー」の増備もしくは置き換えを考えていたため、この川島が名づけた「サニーカー」の名称が相応しくないと考えたのか、"保育社カラーブックス「近鉄II」"(ISBN 4-586-50622-9)の著者で、当時近畿車輛技術者であった鹿島雅美は12400系電車を「最新エースカー」と、12600系電車を「最新エースカーII」と同書に記している。
なお、「サニーカー」と称するのはこの12400系電車と派生系列である12410系電車及び12600系電車、16010系電車が称される。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
近鉄特急の車両 |
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