近鉄23000系電車
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23000系電車(23000けいでんしゃ)は、近畿日本鉄道の特急形車両。「伊勢志摩ライナー」(略称・ISLまたはIL)の愛称を持つ。1994年4月22日開業した、志摩スペイン村への大阪、名古屋方面からのアクセス輸送用として、同年3月のダイヤ変更時から登場した。
1994年に社団法人 日本鉄道建設業協会ブルネル賞を受賞している。
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[編集] 概要
1993年(平成5年)から1995年(平成7年)にかけて6両編成6本(36両)が近畿車輛で製造された。
車体デザイン・形状は、21000系アーバンライナーのイメージを受け継いだ流線型の前面形状とし、そのフロントガラスは、日本一大きな曲面ガラス2枚で構成されている。前照灯は4個あり、標識灯はLED式のものが車体下部のバンパー状になった部分に左右1対設置される。中央に非常用の連結器が格納されている。 また、断面・構造は22000系「ACE」と同様である。側面窓は連続ガラスの外はめ式であるが、特にモ23200形の側面は縦1m×横2mの大きな窓となっている。上半分が太陽のイメージで黄色、下半分が白。裾は砂浜をイメージしたベージュが塗られ、境目は海をイメージした青の細い帯が引かれている。なお、同時期に製造された22000系と同一の方向幕を装備しているので、固定編成にもかかわらず多層建て列車用の方向幕を装備している。方向幕は前面には装備されていない。
編成は6両固定(電動車4両・制御車2両)となっている。大阪側からク23100(Tc)-モ23200(M)-モ23300(M')-モ23400(M')-モ23500(M)-ク23600(Tc)と結成される。機器システム上は大阪側3両と名古屋側3両で分割可能な構成になっており、モ23300とモ23400が接する貫通路部分には入換用の簡易運転台が設けられている。
性能面では、22000系同様のVVVFインバータ制御となっているが、全電動車方式であった22000系に対し、固定編成であることや製造コストの面から、両先頭車はモーターなしとして、1台の制御装置(三菱電機製)で4台(1両分)の主電動機(同200kw)を採用し、これをM車に2両分をまとめて1台のケースに入れて搭載している。回生制動が失効した際に発電制動に切り替わるため使用する抵抗器は両先頭車に搭載されている。制動装置は電気指令式となっている。緊急時には空気制動を持った車両との連結が出来るよう、読み替え装置も設置している。補助電源装置はモ23300・23400形に、空気圧縮機は両先頭車に設置されている。パンタグラフはモ23200・23500形にそれぞれ下枠交差式が2台ずつ設置されている。台車はボルスタレス式で、いずれも車軸にディスクブレーキが搭載されている。
客席はレギュラーカーが4両(モ23300~ク23600形)、デラックスカーが1両(ク23100形)、他にこの系列独特のサロンカー(モ23200形)も1両連結されている。サロンカーはグループ向けのセミコンパートメントとなっており、向かい合わせ式の座席とテーブルが通路を挟んで2人用(ツイン)と4人用(サロン)がそれぞれ6区画設けられている。サロンカーの座席が背中あわせになった部分には荷物を置くスペースがあるほか、当初は喫煙車であったため、タバコの煙が隣の区画に移らないようにエアカーテンが設けられている。デラックスカーは、21000系で好評だったことから採用されたもので、通路を挟んで2人掛けと1人掛けリクライニングシートが並ぶ(計39席)。サロンカーが設けられた関係で21000系とは異なり1両だけとなった(21000系も現在は「アーバンライナーplus」への更新で1両になった)。デラックスカーは当初から禁煙車である。座席の仕様は21000系とは異なっており、エンジ色の表地を採用した重厚なものとなっている。足置き台は21000系と共通の形状で、靴を脱いで使用できる。レギュラーカーは22000系と同じ形状のリクライニングシートで、志摩スペイン村のテーマカラーと同じ4色をランダムに配置している。
また、モ23300形には「シーサイドカフェ」と名づけられた壁面にディスプレイを持つ対面式カウンターがありリゾート特急の特色を前面に出した構成とした。ちなみに当初はオーディオサービスや車内販売が実施されていたが、利用客の減少に伴い2002年3月を以って一旦廃止された(代わりに飲料の自動販売機を設置)。ただ2006年11月より、土・休日ダイヤの阪伊・名伊・京伊特急のうち、この伊勢志摩ライナーを使用する、計上下12本で車内販売の営業を再開した。
運転室後部は「パノラマデッキ」となっており、出入口だけでなく、簡易ベンチを設けて展望スペースとしての機能を持たせた。その他、駅名などを表示するLED式のディスプレイが客室内に、公衆電話が両先頭車の連結部に設けられている。
空調装置は22000系と同一で、準集中式クーラー2台と、荷棚下スポット空調用クーラーの1台。暖房はシーズワイヤー式である。なお、喫煙者対策として空気清浄機が後に追加装備されている。
本系列は、私鉄で初めて最高速度130km/h(ただし2010年には京成電鉄で160km/h運転を開始する)での運転を実施した車両でもある。130km/h運転可能な区間はさほど多くないこと、ダイヤ構成の問題や停車時間に余裕を持たせたため、全体としてはスピードアップとはならなかった。
[編集] 運用
1994年のダイヤ変更時当初は、大阪上本町と名古屋から賢島までの阪伊・名伊甲特急系統に起用された。従来の甲特急のダイヤとは別に増発する形で新設されている。また、阪伊甲特急は難波発から上本町発となった。1996年から京都始発も加わった。その後は伊勢志摩方面の利用者が減ったため、甲特急の本数も減少し、また車両運用効率の向上を目的として乙特急にも使用されるようになった。さらに阪伊特急は一部が難波発に戻ったため本系列も難波に乗り入れるようになった。また、2001年のダイヤ変更では、名古屋や三重県内からのユニバーサル・スタジオ・ジャパン利用者を見込んで、名阪特急にも使われるようになった。
現在も難波・京都と宇治山田、鳥羽・賢島方面を結ぶ一部の特急列車に使われ、他に名阪特急や阪奈特急、京奈特急、京橿特急の一部にも使われている。名阪・阪伊・名伊・京伊の各特急では、各駅到着前に違う車内チャイムが流れていたが、2005年7月にサロンカーが禁煙車になってその際に放送内容が更新されていないために現在は使用されていない。時刻表では、JR時刻表と近鉄が発行する近鉄時刻表では、太陽と海をイメージしたシンボルマークが使われ、JTB時刻表ではILの表記がなされている。