近鉄16000系電車
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16000系電車(16000けいでんしゃ)は、近畿日本鉄道の特急形車両。本項では増備車の16010系も含めて紹介する。
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[編集] 16000系
狭軌線である南大阪線に初めて登場した特急用車両。1965年(昭和40年)2月に竣功。同年3月18日から阿部野橋-吉野間で営業運転を開始した。観光シーズンに運用されていたモ5820形による「かもしか号」の代替としての位置づけである。
Mc(運転台付電動車)-Tc(制御車)の2両編成を基本とし、丸みをおびた車体断面で車体幅は2,740ミリ。主要機器は6000系と同一のものを使用しており、主電動機は135kw、南大阪線では初めての電気制動、抑速制動付車両。11400系のデザインをベースとしている。車販準備室はMcに、トイレはTcに設けられていた。
1977年(昭和52年)までに2両編成8本(16両)と、1974年(昭和49年)に中間車のMとT(付随車)を挟んだ4両編成1本(4両)の計20両が製造された。
性能は6000系に準じており、起動加速度2.3km/h/s、平坦線釣合速度は125km/h、33‰勾配時の釣合速度は71km/hである。
[編集] 改造・譲渡
1977年より特急標識が、増解結時に支障を来さないホームベース型のものに取り替えられた(16009Fのみ最初からその標識)。1995年から座席モケットの張替えや、デッキ増設、Mc車の連結面寄り側面扉と車販準備室を撤去等の更新工事を実施した編成もあるが、後継の16400系が製造された為、2連4本が運用から撤退した。また、方向板も1990年に英文入りに変わったが、2004年秋以降は、運転席内に行き先カードが差込み出来る方式に変更されている。同時に「回送」と「大阪阿部野橋」のカードが制作されている。南大阪線における特急の車内販売廃止後は自動販売機が設置されていたが、現在は廃止されている。
この内の3本は大井川鐵道に譲渡され、塗装もそのままにワンマン改造を受け、大井川鐵道16000系として大井川本線で運用されている。前面の「特急」の文字が変更され、ワンマン化改造を施された以外は、ほぼ近鉄時代そのものの状態で運用されている。大井川鐵道では最高級の設備を有している車両であり、現在でも同線で主力として活躍している。2005年1月には16004Fが廃車となったが、他社譲渡されず16000系のなかで初めて解体されている。後継の16400系の増備は2連2本で中断している。
[編集] 16010系
1981年に16000系の増備車として、2両編成1本のみ(モ16011-ク16111)が製造。時代背景を考慮して車体形状などマイナーチェンジを行ったため、新系列となった。
車体デザインは、当時製造されていた30000系「ビスタカーIII世」、12410系に準じて、前面貫通幌にカバーを付け、標識灯の形状や前面方向幕も同一のものとしたが(側面方向幕は未設置)、塗り分けや側面の窓配置などは16000系と同一とした。なお車体幅は標準軌系特急車の2800mmに対し、2740mmと狭くなっている。また、16000系よりも屋根を高くした。屋上は12400系同様の連続クーラーキセが採用されている。
車内設備は、内装色や網棚こそ30000系などに準じたものとしたが、16000系に合わせて客席はリクライニングしない回転クロスシート(10100系からの流用品)が配置され、シートピッチも935mmと狭く、乗降口のデッキも設けられないなど、格差が感じられた。
性能面も16000系と同じで、日立製作所製抵抗制御装置、三菱電機製135kw主電動機を搭載する。台車は新設計のKD-89(A)形が採用され、パンタグラフは下枠交差型のPT-4811形を1台設置している。
[編集] 改造・車体更新
その後、1997年に客席のリクライニングシート化、2001年12月にデッキの設置と車内販売基地の撤去などが行われ、それに伴う定員の変更が行われた。更に2004年には、方向幕も「大阪阿部野橋」の文字が含まれたタイプに変わった。現在も16000系・16400系と共通運用で使用され、2両編成の単独運行も見られる。