競馬の競走格付け
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競馬の競走格付け(けいばのきょうそうかくづけ)では、競馬の競走格付け制度について述べる。
一般に競馬の競走格付けにはグレード制が採用されており、レベルや重要度の高い順にグレードワン、グレードツー、グレードスリーと格付けする。ヨーロッパ・オセアニアの平地競馬・繋駕速歩競走では同様の格付けのことをグループ制と称するが、通常使用する上では両者に違いはない。
- 各グレード・グループの競走については競馬の競走一覧を参照。
[編集] 国際グレード
セリ市では、販売者が売りたい馬をよりよく見せようと様々な努力を重ねる。購入者が事前にせり市における購買予定馬のチェックの資料とするためのせり名簿があり、せり名簿に対しても売りたい馬をよりよく見せたいという販売者の意向が働くのは当然のことであろう。しかし、せり市では公正な市場を構築する必要があり、その中でもせり名簿の作成基準が必要となった。
そこで、国際セリ名簿基準委員会(International Cataloguing Standard Committee: ICSC)がせり名簿の作成基準を作ることとなった。せり名簿はその馬の父や母を含む血統構成やその競走成績を記載する。そこで勝利した競走がどのような競走であるかを格付けする必要が生じたために、このグレード制が用いられることとなった。1971年にはヨーロッパでグループ制が、1973年にはアメリカでグレード制が採用された。
国際セリ名簿基準委員会では世界中の平地競走と障害競走を国際セリ名簿作成基準書に記載している。しかし競馬のレベルは国によって様々であり、従ってその国の競馬のレベルを考慮する必要があった。そこで、国をパート1からパート3に分け、その中でパート1の国のグレード、グループのみがせり名簿に記載できるという作成基準を設けた。パート2以下の国のグレードも国際セリ名簿作成基準書には記載されているものの、ICSCが定める作成基準ではせり名簿に記載できない。
国際セリ名簿作成基準書は毎年発行されており、作成基準では競走が施行された年の国際セリ名簿作成基準書に従って記載しなければならないとされ、後の年でパートの変更およびグレードの変更が行われても、その前の年の競走には反映されない。たとえば、2001年にステイゴールドが勝利をしたドバイシーマクラシックは、2001年の国際セリ名簿作成基準書にはパート1の部にグレード2で記載されているが、翌年よりグレード1となったが、せり名簿上、ステイゴールドが勝利をしたドバイシーマクラシックはグレード2と記載される(ステイゴールドは他にグレード1の香港ヴァーズに勝利している)。また障害競走は国に関係なくグレード制と呼称し、パート4に記載している。
2006年現在、パート1の国はアルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、チリ、フランス、ドイツ、イギリス、アイルランド、イタリア、ニュージーランド、ペルー、南アフリカ、アラブ首長国連邦、アメリカ合衆国であり、これらの国の各グループ・グレードはICSCに従ったせり名簿に記載できる。またパート2の国の香港、日本、スカンジナビア諸国(ノルウェー、デンマーク、スウェーデン)、シンガポールの一部重賞がパート1に掲載されており、これらもパート1の国のグレード・グループと同様にせり名簿に記載できる。
日本は長年の間パート2国で、国際セリ名簿作成基準書には中央競馬のオープン競走とダートグレード競走のグレード競走が記載され、中央競馬のグレードとダートグレード競走のグレード(この二つは後述する)が記載されているが、パート1に記載された一部の競走を除き、大半の競走はICSCが定める作成基準では、せり名簿に記載できないグレードとなっている。中央競馬では国際競走を増やすなど、パート1入りを目指した努力を行ってきた。その結果、2007年度の番組にてICSCが定めるパート1国昇格条件を満たしたため、2006年に次年度からのパート1国への昇格が決まった。これに伴い、2007年度からは、60ほどの重賞競走(既に格付けを得られている競走を含む)に国際格付けが与えられることになった。
[編集] 日本国内でのグレード制
中央競馬では、サラブレッド系種の平地競走において1984年より導入された。日本におけるグレードは外国のそれとは異なり、主に競走の興行ランクにより格付けを表しているためジャパンカップや宝塚記念等一部パート1に記載されているレースを除き、国際的なグレード制(グループ制)と互換性がない。このため、通常日本で「グレード制」という場合は国内のグレード制を指し、日本ではパート1に記載されているグレード・グループのことを特に国際グレードと呼ぶが、両者を混同して用いることもある。
1995年から中央競馬と地方競馬の交流が盛んとなったため、1997年4月よりダートの重賞において統一グレード制を導入。このグレードは中央競馬とのグレードとは整合性がある。
1999年より、障害競走でもグレード制(J・GI、J・GII、J・GIII)が導入された。ジェージーワン(J・GI)もしくはジャンプグレードワン等と呼ぶ。
1996年の番組改革によりグレードワンの競走が増え、その後も各路線の充実を図る為に少しずつ増えている。2006年には新たにヴィクトリアマイルが創設され、平地競走のグレードワン競走は22レースになる。レースの乱立により、逆にグレードワンの威厳が薄れるのではないかという危惧の声も見られる。
南関東などの地方競馬では上述の統一グレードとは、全く別の独自グレードが定められている。その場合は混乱防止の観点からローマ数字(GI, GII, GIII)ではなく、アラビア数字(G1, G2, G3)を使用することが多い。 但し、南関東で行われるダートグレード競走では、南関東独自のグレードも付与されるため、例えば関東オークスは「統一GII・南関東G1」といったダブルグレードとなっている。 また、ホッカイドウ競馬や東海地区などでは、ダートグレード競走については独自グレードはつけず、ダートグレードのグレードをそのまま用いて、ダートグレードを独自グレードより上に扱うような対応を取っている。
なお、ばんえい競馬については、使用する馬の種類が平地競馬とは全く異なる「ばんえい馬」(重種)と呼ばれるものである為、完全に独自のものである。
- 参考
- ばんえい競馬(北海道市営):BG1(ばんえいグレード)、BG2、BG3
- ホッカイドウ競馬:H1、H2、H3
- 南関東地区(浦和、大井、船橋、川崎):G1、G2、G3
- 東海地区(名古屋、笠松):SPI(スーパープレステージ)、SPII、SPIII
- 佐賀競馬:KG1(九州グレード)、KG2、KG3
(岩手:水沢・盛岡、金沢、兵庫:園田・姫路、福山、高知の各競馬場はグレードによる格付けはない)
各グレードの競走については競馬の競走一覧を参照。