日産ディーゼル・スペースアロー
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日産ディーゼル工業が生産している大型観光バス。スーパーハイデッカーのスペースウィング(Space Wing)と、ハイデッカーのスペースアロー(Space Arrow)がある。
車体は富士重工業製と西日本車体工業製が存在したが、2003年以降は富士重工のバス車体架装事業撤退により、西日本車体工業製に1本化されている。
目次 |
[編集] 現行ラインナップ
- スペースウィング:12m,西工ネオロイヤルSD-II型
- スペースアローRA:12m,西工ネオロイヤルC-I型
- スペースアローRA:11m,西工ネオロイヤルC-I型
- スペースアローRP:9m,西工ネオロイヤルC-I型
RP系については日産ディーゼル・RPも参照のこと。
[編集] RA系
[編集] シリーズの変遷
日産ディーゼル・RA系は1973年、昭和48年排出ガス規制を機に、2サイクルUDエンジンの6R系からモデルチェンジにより発売した。
[編集] RA50系
ホイルベース5.8m、全長11.4mのRA50P型と、ホイルベース6.6m、全長12mのRA50T型、ショートバージョンのホイルベース5.4m、全長11mのRA50M型が設定されていた。いずれもエアサス、冷房付きを基本としており、RA50T型は日産ディーゼル初の12mフルサイズ観光バスである。なおエンジンは直噴式のV型8気筒のRD8型で出力は280PSである。
車体は標準の富士と西工の双方が存在し、富士ではモノコックボディの13型(通称3B)で架装されている。標準床、セミデッカーでの架装例がある。またフルデッカーのR1型、R2型での架装例がある。 西工では42MC(通称カマボコ)と、53MCのE型(標準床)にて架装されている。なお53MCのS型(フルデッカー)の架装例は未確認。
[編集] K-RA51系
1980年に排ガス規制に対応したK-RA51系にモデルチェンジした。ホイルベース6.65mのK-RA51T型、ホイルベース6mのK-RA51R型、ホイルベース5.4mのK-RA51M型で、エンジンは300PSに出力アップしたRD8型をそのまま搭載している。
車体は同じく富士、西工双方が存在する。富士ではモノコックボディの13型と、スケルトンボディの15型の双方の架装例がある。15型ではフルデッカーのR3と廉価版のR2、R1、標準床の5Bでの架装例がある。なお、15型R1の架装例はごくわずかと思われる。西工ではモノコックボディの53MC、スケルトンボディの58MCそれぞれのS型(フルデッカー)、E型(標準床)と、本格的なスケルトンボディの観光車体のC型の架装例がある。
[編集] K-RA60S(国鉄専用形式)
1979年、それまでのV8RA120を排ガス規制に対応。4サイクルV型10気筒350psエンジンに変更。車体は富士が架装したが、車体はV8RA120とまったく変わらず、傍目には違う型式には見えなかった。
[編集] P-RA52系
1984年に58年排ガス規制に対応したP-RA52系にモデルチェンジした。ホイルベース6.5mのP-RA52T型、ホイルベース6mのP-RA52R型、ホイルベース5.5mのP-RA52N型で、エンジンは新型のRE8型(315ps)を搭載している。
車体は同じく富士、西工双方が存在する。富士ではスケルトンボディの15型での架装例がある。フルデッカーのR3と廉価版のR2、R1、標準床の5Bでの架装例がある。西工ではスケルトンボディの58MのS型、E型と、本格的なスケルトンボディの観光車体のC型の架装例がある。
[編集] P-RA46系
1985年に廉価版観光高速バスとして、エンジンに路線車用の直列6気筒エンジンに過給器インタークーラーを取り付けた、P-RA46系が登場する。ホイルベース6.5mのP-RA46T型と、ホイルベース6mのP-RA46R型があり、エンジンはU/UA系と共通でターボチャージャー付、垂直配置のPE6系のPE6TB型(330PS)を搭載している。
車体は同じく富士、西工双方が存在するが、P-RA52・P-RA53系が併売されていた関係もあり、実際の導入例は極めて少なく、富士ではR3型、西工ではS型が存在するのみと思われる。また、1988年にフルモデルチェンジしたUAは、本来リアアンダーフロアに6気筒エンジンを横倒しに搭載するが、高出力車を求めるニーズに応えV8が積まれた。
今回からスーパーハイデッカーのスペースウイングに対してハイデッカーに対してはスペースアローの名称が付けられた。
[編集] P-RA53系
1985年に騒音規制に対応したP-RA53系にモデルチェンジした。ホイルベースはP-RA52系と同じで、ホイルベース6.5mのP-RA53T型、ホイルベース6mのP-RA53R型、ホイルベース5.5mのP-RA53N型である。エンジンは340psに出力アップした、新型のRF8型を搭載している。なおフルエアーブレーキの場合は型式にAが、前輪懸架が独立懸架式の場合は型式末尾にEが付く。
車体は同じく富士、西工双方が存在する。富士ではR3型・R2型と15型HD-Iでの架装例がある。西工ではS型、E型、C型、SD-I型での架装例がある。なおSD-I型は日産ディーゼル初の2軸スーパーハイデッカーである。
[編集] U-RA520/530系
1990年に強化された排出ガス規制に対応したU-RA520系にモデルチェンジした。ホイールベースはU-RA520TBN型が6.5m、U-RA520RBN型が6mである。エンジンは排ガス規制に適合したRF8型(340ps)を継続して搭載している。フルエアーブレーキの場合は型式末尾のNがMとなる。なお型式移行期に、エンジンのみ排ガス規制に適合させたU-RA53系がごくわずか製造されている。 今回から2軸スーパーハイデッカーが日産ディーゼルから正式発売された。3軸車と同じスペースウイングの名称があたえられ、型式はU-RA520SBN型でホイルベースが6.3mとなる。
車体は同じく富士、西工双方が存在する。富士で15型HD-I、スーパーハイデッカーボディのHD-II(U-RA520SBN型のみ)、7M(マキシオン)での架装例がある。西工ではS型、E型、C型、SD-I型での架装例がある。U-RA520SBN型の西工での架装例は未確認。
1992年にホイルベース短縮と高出力車RA530系の追加が行われた。ハイデッカースペースアローの型式はU-RA520RBL型でホイルベースが6.18mとなる。スーパーハイデッカースペースウイングはU-RA520RBL型とU-RA530RBN型で、RA530系は高出力エンジンRG8型(370ps)を搭載している。なおハイデッカーでRG8型(370ps)を搭載したU-RA530RBN型も存在する。フルエアーブレーキの場合は型式末尾のN(L)がM(K)となる。
車体は同じく富士、西工双方が存在する。富士でスーパーハイデッカーボディの7S、ハイデッカーボディの7M(マキシオン)での架装例がある。西工ではS型と92MC(ネオロイヤル)のC型、SD-II型での架装例がある。SD-II型ボディは従来エアロクイーンシャシー専用ボディであったが、92MCからスペースウイングシャシーにも対応した。
1993年にアンダーフロアーコクピット車(日産ディーゼルの正式名称はスーパービューデッカー)の追加も行われ、型式はU-RA530RBU型でホイルベース6mとなる。実際の導入は少なく、後継のKC-RA550RBU型と合わせても20台以下の製造と思われる。
車体は富士の専用設計の7Sボディが架装されている。なお西工での架装例は存在しない。
[編集] KC-RA531/550系
1995年に強化された排出ガス規制に対応したKC-RA531・550系にモデルチェンジした。標準出力のRA531系のホイールベースはKC-RA531RBN型が6.18m、KC-RA531MBN型が5.43mである。高出力エンジンを搭載したRA550系のホイルベースはKC-RA550RBN型6.18mの1種類のみと思われる。エンジンは標準出力のRA531系がRG8型(350ps)、高出力のRA550系がRH8型(400ps)を搭載している。スーパーハイデッカーのスペースウイング、ハイデッカーのスペースアローの双方で標準出力のRA531系、高出力のRA550系それぞれの架装例が存在する。アンダーフロアーコクピット車(スーパービューデッカー)は、型式がKC-RA550RBU型でホイールベース6.05mとなる。実際の導入は少なくわずかの製造と思われる。
車体は同じく富士、西工双方が存在する。富士でスーパーハイデッカーボディの7S、ハイデッカーボディの7M(マキシオン)での架装例がある。西工ではS型と92MC(ネオロイヤル)のC型、SD-II型での架装例があるが、アンダーフロアーコクピット車は架装していない。
[編集] KL-RA552系
2000年6月に強化された排出ガス規制に対応したKL-RA552RBN型にモデルチェンジした。ホイールベースの設定は6.18m(R尺)、5.43m(M尺)の2種類があるが同一形式となり、5.43m(M尺)は改造扱いとなる。 エンジンは全車種RH8系を搭載し、出力の違いにかかわらず同一形式となる。エンジンチューニングの違いにより、高出力がRH8F型で430ps、標準出力がRH8H型で360psとなる。西工SD-I型架装車はハイデッカー扱い(改造扱い)のため、標準出力のスーパーハイデッカーが設定されている。
車体は富士、西工双方が存在するが、富士が2003年3月でバス車体架装事業から撤退したため、以降は西工製のみとなる。富士ではKL-RA552RBN型に合わせて車体をモデルチェンジしたR21型で、ハイデッカーの1M(21型M)、スーパーハイデッカーの1S(21型S)での架装となる。スタイリングはNDPC製のユーロツアーに近く、骨太な前面スタイルが印象的で、もし現在も生産されていれば、大型トラック・クオンと共通イメージとなったことは間違いないが、生産台数は観光バス市場全体の落ち込みもあり、少数にとどまってしまったと見られる。
西工ではS型とC型、SD-I型、SD-II型での架装となる。2002年に西工の標準車体化に合わせて、C型、SD-I型、SD-II型のマイナーチェンジが行われ、ヘッドライト廻りが変更された02MC型での架装となる。
[編集] ADG-RA273系
2005年7月28日、新長期排出ガス規制に観光バスで初めて適合して発表した。車体デザインは基本的に02MCのままであるが、平成18年灯火器類保安基準改正に合わせてリアコンビネーションランプを低位置に配した。最も大きな変更を受けたパワープラントは、2004年10月の第38回東京モーターショーに出展されたスペックのままである。エンジンはフルフラットノンステップバス・UA272(富士重工製Fタイプ)に搭載した9,203ccのMD92TAをベースにパワーアップ、尿素SCR触媒と超高圧燃料噴射装置を組み合わせた「FLENDS」と呼ばれるテクノロジーを装備したMD92TKをドイツ・ZF社と共同開発した電子制御トルコン式6速AT"ECOMAT2plus"と組み合わせることで軽量化とドライバーの技量によらず乗用車感覚の楽な運転操作性、ドライバー間の燃費のバラツキの防止などをメリットとしている。ホイールベースの設定は6.15m(R尺)、5.4m(M尺、スペースアローのみ)の2種類があるが同一形式となり、5.4m(M尺)は改造扱いとなる。
市場での反響が注目されたが、東京空港交通はリムジンバスに直結クーラー仕様を大量に導入し、車庫には必需品であるAdBlue(尿素水)備蓄タンクを設けた。車両には世界一クリーンなディーゼルバスであることをPRするステッカーが貼られ、シフトショックの少ない走りは乗客からも好評なようである。
車体はハイデッカーのスペースアローが西工C-I型、スーパーハイデッカーのスペースウイングは西工SD-I型、SD-II型での架装となる。なお、西工SD-I型架装車は改造扱いとなり、ハイデッカーのスペースアローのシャーシに架装しているが、メーカーではスペースウイングと呼称する(昭和自動車などに納入例あり)。
なお、ADG-RA273系路線車については日産ディーゼル・U/UAを参照のこと。
[編集] PKG-RA274系
2006年6月1日、路線車と同時に搭載機関を改良したPKG-RA274系となった。 前モデルと同形式のMD92TK(350PS)をベースに平成27年重量車燃費基準とPMのみ10%低減を両立したものに改良した。その他、変速機や外観などに於いても差異は殆どなく、リアウインドウ左下にある燃費基準達成車という緑色のステッカーが貼り付けてあれば、このモデルであると識別可能である。
車体はハイデッカーのスペースアローが西工E-III型、C-I型、スーパーハイデッカーのスペースウイングは西工SD-I型、SD-II型での架装となる。
[編集] スペースアロー“ユーロツアー”(JA系)
日産ディーゼル・フィリピンを参照。
[編集] スペースウイング (DA/RD系)
[編集] K-DA50T
1982年に国産初の3軸観光バス、K-DA50T型が発売される。同車は後輪を2軸にすることにより、法令上の軸重制限である一軸10tまでの制限をクリアし、定員65人やサロン仕様など重装備に対応することが可能となった。エンジンはK-RA51系と共通のRD8型(300ps)を搭載している。
このバスはRA系の部品を流用したため、2軸目がシングルタイヤ、3軸目がダブルタイヤで、その後の3軸車やネオプラン、2階建てバスとは逆のレイアウトとなっている。
車体は全車富士重工のR3型が架装されている。なお通常のR3型に比べて全高が200mmほど高くなっている。
[編集] P-DA66U、DA67UE
1984年にK-DA50系を改良したP-DA66U型を発売する。エンジンは国産バスとしては当時最大出力のRE10型(370ps)を搭載した。国産初の本格的な3軸車で、2軸目がダブルタイヤ、3軸目がシングルタイヤとなりセルフステア機能が導入された。
車体は富士以外に西工が存在する。富士ではR3型が架装されたが、全高が3.5mとなり国産初のスーパーハイデッカーとなる。またごくわずかが西工で架装され、専用ボディのSD-III型が架装されている。
1985年にP-DA67UE型へモデルチェンジする。前輪独立懸架式となり、富士の車体は本格的なスケルトンボディのHD-II型に変更された。エンジンはP-DA66U型と同じRE10型(370ps)を搭載した。
富士については、今回からスペースウイングの名称が使用されるようになった。西工製は1台のみの製造で、これ以降西工は日産ディーゼルの3軸車の架装は行っていない。
[編集] U-RA620UBN、KC-RD630UBN
1990年に排ガス規制に適合し、U-RD620UBN型となった。エンジンはRF10型(420ps)が搭載され、国産のバスとしては初めて400psを超えるエンジンを搭載した。ボディは引き続き富士のHD-II型が架装されている。
1992年に車体のモデルチェンジが行われ、前面に曲面ガラスを採用したR17型S(通称7S)となる。
なお、1990年から2軸車であるRA系にスーパーハイデッカーのモデルが設定され、スーパーハイデッカーの需要は2軸車に移り、3軸車のRD系の需要は少なくなってくる。
1995年に排ガス規制に適合しKC-RD630UBN型となった。エンジンは引き続きRF10型(450ps)を搭載し、ボディは同じく富士重工の7Sを架装している。さらに3軸車の需要が減り、KC-RD630UBN型の導入例はわずか4台となり、2000年には発売が中止され国産3軸スーパーハイデッカーの設定は全て無くなった。
なお、このDA/RD系をベースとして、2階建てバススペースドリーム(後述)および、ヨンケーレ・モナコが製造されている。
[編集] スペースドリーム (P-GA66T)
1983年の東京モーターショーで試作車を発表、1984年には試作車の先行販売として横浜市交通局に3台納入された。これは、かねてから横浜市交通局では「2階建てバスの運行を予定、導入するのは国産車」という意向を示していたことが作用したとみられる。
車体は富士重工業が開発・架装し、他の2階建てバスは一般的に2階客室の非常口を後面に設けているのに対し、この車種では右側面に設けられていたのが特徴的である。車体デザインは追って登場したスペースウィングにも受け継がれている。
シャーシはDA50T・66Uで実績を得た3軸式で、前輪と後後輪を独立懸架とした。エンジンはRE10型V10無過給・370psを搭載する。
1985年より正式販売されたが、累計販売台数は試作車を含めても1988年までの4年間にわずか11台で、とても開発コストに見合うものではなかったため、1988年に生産中止となった。販売台数が少数に留まったのは、1980年代前半のブーム時に輸入車でほとんど一巡したことに加え、1985~6年には2階建てバスによる事故が発生したことなどでイメージが悪化。さらに全高3.8mに制限される日本国内では居住性も犠牲になるため、以後は「2階だけバス」とも呼ばれたスーパーハイデッカーに主力が移ったためである。
横浜市営・十王自動車(現:国際十王交通)以外は、各社とも1台だけの導入であった。導入事業者は他に熊本電気鉄道やニュー東京観光バスなどがある。横浜市では定期観光バスで運用、熊本電鉄は後年路線バスにも使用した。現在はほとんどが売却されている。
日産ディーゼルとしては、スペースドリーム登場前に、ネオプラン社製2階建てバスにエンジンを供給して、日本に輸入したことがある(大阪・中央交通や京福電気鉄道などに納入)。
[編集] 主なユーザー
- 道北バス
- 北海道中央バスグループ
- 道南バス
- JR北海道バス
- 岩手県北自動車
- 山交バス
- 宮城交通
- JRバス東北
- 新常磐交通
- 日立電鉄
- 茨城交通
- 関東鉄道
- 関東自動車
- JRバス関東
- 関東バス
- 西武グループ
- 京成グループ
- 京急グループ
- 東京空港交通
- 横浜市交通局(過去にスペースドリームを所有)
- 江ノ島電鉄
- 富士急行グループ
- 新潟交通
- 越後交通
- 蒲原鉄道(過去にスペースウィングを所有)
- 頚城自動車(過去にスペースウィングを所有)
- 長電バス
- 富山観光バス
- 富山地方鉄道
- 加越能鉄道
- 北陸鉄道
- 高志観光バス
- 京福電気鉄道
- 草軽交通
- 千曲バス
- 東濃鉄道
- JR東海バス(過去にスペースウィングを所有)
- 三重交通グループ
- 西日本JRバス
- 南海グループ
- 関西空港交通
- 大阪空港交通
- 大阪緑風観光
- 北港観光バス
- アクロス観光バス
- 中央交通(大阪)
- 本四海峡バス
- 水間鉄道
- 石川産業
- 日生運輸
- シモデングループ
- 鞆鉄道
- 広島交通グループ
- 広島バス
- 船木鉄道
- サンデン交通グループ
- 西鉄グループ
- JR九州バス
- 昭和自動車
- 祐徳自動車
- 西肥自動車
- 九州産業交通グループ
- 大分交通
- 宮崎交通
- 南九州バスネットワーク
- 林田バス
- 琉球バス
- 中部観光バス
[編集] 関連項目
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